結婚後に共通の家計から相手の資格取得費用や奨学金の返済をした場合、離婚時の財産分与で考慮される?
[投稿日] 2017年02月10日 [最終更新日] 2017年02月10日
財産分与を得意としている弁護士
山口 寛 弁護士 東京都
日本橋神田法律事務所伊東 結子 弁護士 埼玉県
つきのみや法律事務所資格試験の受講料の分割払や、大学在学中に貸与を受けていた奨学金など、結婚した後も返済を続けている方が多いのではないでしょうか。
夫婦共働きであれば、通常はそれぞれの収入の中から支払いないし返済をするのではないかと思われますが、一方に収入がない場合は、共通の家計から奨学金の支払い等を行うこともあるでしょう。
では、離婚する場合、財産分与(民法768条)において、共通の家計から相手の資格取得費用や奨学金の返済をした事実はどのように考慮されるのでしょうか。
財産分与とは、婚姻生活中に夫婦の協力によって得られた財産(共有財産)を、離婚時に清算することです。
共有財産とは、共同名義の不動産など共同所有が明らかなものばかりでなく、結婚後に購入した家具なども共有財産にあてはまります。
また、夫婦の一方の名義であっても、実質的に夫婦共有の財産とみなされるものも共有財産に含まれます。例えば、夫の単独名義の不動産、車、株や国債などの有価証券・ゴルフ会員権、銀行預金なども、婚姻生活中に夫婦の協力によって得られた財産といえるのであれば、共有財産に含まれます。
一方、独身時代の預貯金・嫁入り道具、結婚後に相続や贈与で得たお金・不動産・動産などは、夫婦それぞれの個別財産(特有財産)とされ、財産分与の対象にはなりません。
ただし、特有財産であっても、財産の取得や維持に配偶者の貢献があったとみなされると、財産分与の対象となる場合があります。
借金などの負債の場合、家事に必要な生活費や家賃の支払いなど、夫婦が共同生活をしていく上で生じた借金は、財産分与の対象となります。
具体例を挙げると、住宅ローンや車のローンなどは、夫婦が共同生活をしていく上で生じた借金だといえるため、財産分与の対象となる財産とみなされます。
しかし、夫か妻のどちらかの個人的な借金は、連帯保証をしていない限り、財産分与の対象になりません。例えば、夫が妻に内緒で自分の趣味の道具を高額なローンを組んで購入していた場合などは、夫婦が共同生活をしていく上で生じた借金ではなく、夫の個人的な借金であるため、財産分与の対象とはなりません。
資格取得費用や奨学金はどう考える?以上を踏まえて、夫婦の一方の資格取得費用や奨学金について検討してみましょう。
まず、独身時代の資格取得費用や奨学金については、夫婦の共同生活とは関係がありませんから、財産分与の対象とはならないと考えられます。
したがって、結婚後に共通の家計からこれらの支払いや返済を行っていた場合、本来夫婦の一方が個人で返済すべきものを共通の家計から支出していたことになるので、財産分与ではこの事実が考慮され、夫婦の一方の取り分を少なくすることができると考えられます。
これに対して、結婚後の資格取得費用等については、家計の収入を増やす目的で行われる場合もあるため、夫婦の共同生活を維持するために必要な費用だと評価することもできます。
そのように評価できる場合には、夫婦が共同して負担すべき費用を共通の家計から支払っていたことになるので、この点は財産分与では考慮されず、夫婦の一方の取り分を少なくすることはできないと考えられます。
とはいっても、財産分与時の取り分が少なくなった結果、離婚後に生活ができなくなった…というのは困ります。
財産分与の基本的な目的は、結婚生活で夫婦が協力して得た財産を公平に分配することですが、離婚後に生活が困難になる側への生活費支援という目的もあります。
共通の家計から奨学金の返済をしていたことを考慮して財産分与時の取り分を少なくすれば、離婚後に生活が困窮してしまいかねないという場合、離婚後の生活費支援という財産分与の目的からすると、取り分を少し多くするという考慮も必要かもしれません。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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