夫のスマホを盗み見たら、SNSでのやりとりから浮気していることが判明。裁判になったとき証拠として使える?
[投稿日] 2016年12月27日 [最終更新日] 2016年12月27日
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関根 翔 弁護士 東京都
池袋副都心法律事務所戎 卓一 弁護士 兵庫県
戎みなとまち法律事務所金川 晋也 弁護士 東京都
秋葉原KM法律事務所Aさんは、最近、夫が仕事でもないのに頻繁に外出している、常にスマホをいじって誰かとやり取りしていることに悩んでいました。夫の態度があまりにもおかしいので、夫が入浴中にスマホを開いてみたら、職場の女性と食事をしたり、どうやら旅行にも行っていたことが判明しました。
Aさんはびっくりして、でも一方で冷静になって、そのスマホのSNSのやり取りの画面を、自分のスマホのカメラ機能で撮影しました。夫のそんな行動にもうんざりですし、これまでの夫との生活を振り返ってみても、もはや関係の修復は困難であると思っています。
新しい生活を始めるためにも、離婚の手続きを進めたいのですが、スマホの盗み見をして得られたSNSの証拠って、裁判で使えるのでしょうか?
証拠能力と証明力
裁判で証拠を提出する場合に、問題となるのは「証拠能力」と「証明力」です。証拠能力のある証拠しか、訴訟において取り調べて事実認定のために用いることはできません。証拠を調べて得られた内容が証明したいと思う事実の認定に役に立つ程度を証明力といいます。
証拠能力がある証拠であったとしても、それによる証明力が低ければ裁判ではあまり役に立たない可能性があります。
他人のスマホを勝手に見て得た証拠については、「証拠能力」の問題となります。
本件スマホ画面の撮影写真の証拠能力
では、夫のスマホを盗み見て、やり取りしているSNSの画面を撮影した場合、この撮影したものに証拠能力はあるのでしょうか?
刑事訴訟の話になりますが、違法な手段によって得られた証拠については、証拠能力を否定するということが行われています(「違法収集証拠排除法則」といいます)。
これは、刑事事件についてはきちんとした手続きで行うべきである、違法な捜査を防ぐ、そして司法は国民の皆さんに信頼される廉潔なものでなくてはならないのでそのような証拠は使わない、という趣旨です。
夫のスマホを盗み見てやりとりを撮影するのは、夫のプライバシーを侵害する行為ですし、違法な方法によって得られた証拠…と見えなくもありません。やはり、離婚の裁判でも使えないのでしょうか?
離婚の裁判は民事訴訟の一つです。民事訴訟においては、原則として証拠能力は無制限である、と考えられています。刑事訴訟のように違法収集証拠排除法則が厳格に適用されることはありません。
もっとも、裁判例では、民事訴訟における証拠能力について、「その証拠が、著しく反社会的な手段を用い、 人の精神的、肉体的自由を拘束する等の人格権侵害を伴う方法によって収集されたものであるなど、それ自体違法の評価を受ける場合は、その証拠能力も否定されるものと解すべき」であるとして、例外的に証拠能力が否定される場合があることを述べています。
その証拠能力があるかないかの判定については、その手段や方法・態様が著しく反社会的かどうかによる、としています。
裁判例では、夫が妻の浮気の証拠として妻の携帯メールを提出したケースで、夫が妻の携帯電話をそっと抜き取り、奪い返そうとする妻ともみ合いになった事情がありました。
裁判所は、使用者の同意なくして携帯電話からメールを収集する行為は、使用者である妻の人格権の侵害になることは明らかであるとしながらも、携帯電話を入手するために暴行をした形跡は認められないので、著しく反社会的であるとまでは言えないとして、その携帯電話から得られたメールの証拠能力を肯定しています。
他方で、別居した夫の自宅から妻が証拠を盗み出したケースでは、証拠能力を否定しています。
行為態様が刑法に抵触する要な場合は、証拠能力が否定されるという傾向にあるようです。
これらの裁判例に照らすと、夫の入浴中にそっと夫のスマホをいじってSNSのやり取り画面を撮影して得られた証拠については、著しく反社会的である行為には該当しないといえ、証拠能力が肯定される可能性があると考えられます。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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