配偶者が犯罪を犯し有罪判決を受けたら離婚原因になる?
[投稿日] 2017年03月08日 [最終更新日] 2017年03月08日
原因・理由を得意としている弁護士
齋藤 健博 弁護士 東京都
銀座さいとう法律事務所どんなことがあれば離婚ができる?
配偶者が犯罪を犯し、有罪判決を受けたら、それを理由に離婚ができるでしょうか?
そもそも、民法において、離婚は「協議上の離婚」と「裁判上の離婚」の2種類があると規定されています。
前者は、夫婦がさまざまな理由からお互いが話し合って最終的に離婚を選択する場合を指します。離婚届に判をついて役所に提出して受理してもらう方法がこれにあたります(民法763条以下を参照)。
一方、「裁判上の離婚」とは、協議が整わない場合に、夫婦の一方から(調停などを経る必要はありますが)終局的に裁判という手続きを活用して離婚する方法を指します(民法770条以下を参照)。
有罪判決を受けたことをきっかけに、夫婦で協議をして離婚を選択する協議上の離婚をすることは当然可能です。しかし、夫婦の一方が離婚を望み、もう一方がこれを拒否した場合、先述の裁判上の離婚という手法を選択することになります。
もっとも、法は、基本的にはいったん婚姻した場合、なんとか婚姻を継続してほしいという立場のため、一定の理由がない限り裁判上の離婚を認めません。この裁判上の離婚を認める理由が「離婚原因」と呼ばれるものです。
この離婚原因に「有罪判決を受けたこと」が含まれるかどうかがポイントになります。
離婚原因にはどのようなものがあるのか?
離婚原因については、民法770条1項に規定があります。
不貞行為とは、配偶者以外と性交渉を持つこととされます。異性とデートに出かける程度では不貞行為とは言えません。
(2)配偶者から悪意で遺棄されたとき悪意の遺棄とは、簡単に言えば「ほうっておくこと」です。例えば、夫がまったく家に帰らず生活費も入れないというのであれば、悪意の遺棄となります。
(3)配偶者の生死が3年以上明らかでないとき例えば、冒険家が海外で遭難した場合、残された配偶者は生死不明の相手と協議離婚をすることはできないため、生死不明の相手に対して離婚を認める制度として機能しています。
(4)配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき意思の疎通が図れず、婚姻関係を継続するのが困難にもかかわらず、協議上の離婚を選択できないような場合に用いられる規定です。
(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき法は上記の(1)〜(4)では捕捉しきれないケースを想定して、「婚姻を継続し難い重大な事由」という概括的規定を設けています。
「犯罪において有罪判決を受けた場合」は、上記の(1)〜(4)には当てはまりませんので、「婚姻を継続し難い重大な事由」と言い得るかどうかで判断することになります。
具体的な基準はなく、さまざまな要素が考慮される
注意が必要なのは「有罪判決を受けた」という点だけをもって、ただちに婚姻を継続し難い重大な事由とはならないことです。
犯罪の内容、その犯罪を犯したことで家族に与えた影響、犯罪前後の家庭環境の変化などを総合的に考慮して「重大な事由」と言えるかどうかを判断することになります。
例えば、犯罪の内容が殺人罪などの重大なものであり、報道によって「あの家族のことだ」と周辺に知られるようになり、これまでと同様の生活が送れなくなったなどの事情があれば、離婚をして(姓を変えるなどのことによって)新たな土地で、新たな生活をおくる方が残された家族には良いとの判断になるため、ほぼ間違いなく婚姻を継続し難い重大な事由と判断されるでしょう。
こうした世間に知れ渡るような重大事件でなくとも、服役を伴うような場合は、その服役が長期間に及ぶようであれば、重大な事由があるという判断に傾くものと考えられます。
他方で、服役を伴わなかったり、比較的軽微な犯罪類型の場合は、それだけをもって婚姻を継続し難い重大な事由とは判断されにくくなるものと考えられます。
例えば、車を運転していて、不注意から人をはねて軽微なけがを負わせた場合、犯罪としては「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」の5条に規定される過失運転致死傷罪にあたります。
軽微なけがであれば、罰金刑で終わるケースも多く、こうした事例における有罪判決のみでは婚姻を継続し難い重大な事由とはなりにくいと言えます。
このように、あくまでケースバイケースとなりますが、指針として、先述のように犯罪の内容、それによる影響、服役の有無、生活の変化など、婚姻関係への悪影響を判断し、それが大きい場合、離婚原因となりえるという図式です。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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