長年連れ添った男女はなぜ別れる?熟年離婚の原因まとめ
[投稿日] 2017年09月06日 [最終更新日] 2017年09月06日
原因・理由を得意としている弁護士
市村 和也 弁護士 大阪府
谷四いちむら法律事務所小原 望 弁護士 大阪府
小原・古川法律特許事務所長年連れ添ったパートナーとの「熟年離婚」。
もしかして自分の配偶者も…と心配な人や、実際に熟年離婚を考えている人も多いのではないでしょうか。
熟年離婚を考える上では、まずどんな原因で発生しているのか、そして回避するためには何をすればよいのか、をつかんでおくことが重要です。
実は、離婚の原因になりうる要素は民法で定められています。今回はその点を踏まえつつ、熟年離婚を回避する方法について見ていきましょう。
熟年離婚とは?「熟年離婚」という言葉はすでに世の中に定着した感がありますが、法律的にはどのような意味を持っているのでしょうか?
熟年離婚については明確な定義はありません。長い婚姻期間の末に離婚することを指すと言われおり、この場合の「長い」については一般的には20年と考えられています。
熟年者の離婚、と混同している方もいますが、65歳で離婚したとしても婚姻期間が20年経過していないような場合は熟年離婚には当たりません。
また、籍が入っているだけで、別居していた夫婦の離婚については、婚姻期間が20年を超えていたとしても熟年離婚にはあたらないと考えられているようです。
法律や制度によって、明確な定義はないということですね。あくまで慣例的に「20年の婚姻期間」とされているだけで、あまり厳密な定義にこだわる必要は内容です。
なお「熟年離婚」の言葉が広まった背景には、団塊の世代の退職ラッシュと「年金分割」制度があるとされています。
熟年離婚は年々増加傾向にあり、最近では「熟年離婚」はもはや珍しいものではなく、ごく身近なものになりつつあります。増加の理由として、団塊の世代が退職ラッシュを迎え、その妻が夫の退職と同時に主婦業を卒業しようとしたこと、さらに2007年から始まった離婚時の年金分割制度があげられるそうです。
人口ボリュームの大きな団塊世代が退職時期を迎えたことと、法律上の後押しがあって「熟年離婚」が広まったと考えられそうです。
民法で定める離婚の原因5点熟年離婚につながりそうな原因はどのようなものがあるでしょうか。実は、民法770条1項で離婚の原因(離婚の訴えを提起できる要因)を5つ定めていますのでご紹介します。
配偶者の不貞な行為まずは、相手による「不貞な行為」です。「不貞な行為」とはどのようなものでしょうか。
法律上の婚姻関係にある夫婦は、互いに配偶者以外の相手と性的関係をもたない義務を負うとされています。これを貞操義務といいます。この貞操義務に違反する行為が「不貞な行為」です。具体的には、配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係をもつことをいいます。
配偶者以外と性的関係を持つのが「不貞行為」に当たるというわけですね。上記の説明によると、意思に反する性的関係は含まれないということになります。
配偶者から「悪意で遺棄」次は「悪意で遺棄されたとき」というものです。これは、以下のように説明されています。
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければなりません(民法752条、同居協力扶助義務)。収入を全て自分の遊興費に使ってしまい、家にも帰らないというように、同居協力扶助義務を履行しなかった配偶者は、正当な事由がない限り、相手方を悪意で遺棄したことになります。
一緒に暮らし、互いに助け合わない配偶者がいる場合は、離婚原因になりえるということですね。
配偶者の生死が3年以上不明配偶者がいなくなり、しかも生きているか死んでいるかも分からない状態が長く続くと、やはり離婚の原因になりえるということです。
配偶者の精神病が回復不能ここでいう生死不明とは、単なる行方不明ではなく、生存の証明も死亡の証明もできない場合をいいます。配偶者の生存が最後に確認できたときから3年以上経過し、現在も生死不明の状態が続いている場合には、離婚を請求できます。
精神病が離婚原因になるということですが、具体的に何が「精神病」として認められるのでしょうか。
精神病が原因で、夫婦が互いに協力して婚姻生活を維持することが極めて困難になった場合、離婚を請求することができます。ここでいう「精神病」とは、統合失調症、躁うつ病などの高度の精神病をいい、アルコール依存症、麻薬中毒、ヒステリーなどは該当しません。
また、精神病にかかった者をさらに過酷な状況に追い込んでしまうのは妥当でないため、強度の精神病にあたるだけでは離婚が認められない傾向にあります。具体的には、
1.治療が長期間に渡っていること
2.離婚を請求する者がそれまで誠実に療養・生活の面倒を見てきたこと
3.離婚後の生活費や診療費、引き受け先等について具体的な方策があること
という条件を満たさない限り、離婚は認められません。
単なるアルコール依存症やヒステリーなどは「精神病」として認められないということですね。
また、相手が重度の精神病だからと言って一方的に「見捨てる」ということはできないようです。
以上の5つの理由以外にも、ケースバイケースで離婚が認められることもあります。
1号から4号までの事由にあたらない場合でも、婚姻関係が破綻して回復の見込みがないときには、5号にあたるとして離婚が認められる場合があります。具体的には、別居期間が長期間にわたる場合、一方の配偶者の離婚意思が強固である場合、強度の精神病(4号)にはあたらない程度の精神病により婚姻生活の継続が困難になっている場合などがあります。
(中略)
1.夫が妻に対し、「前の女には殴ったり蹴ったりしていたけど、お前には手を出さないでおこうと思う」などと威嚇・脅迫めいたことを言ったり、妻の体調や感情を無視して性行為を強要したりしたため、妻がうつ病を発症し、ついには別居にいたったという事例で、「婚姻を継続し難い重大な事由があるものというほかない」として、離婚が認められた事例(神戸地判平13・11・5)
2.結婚後約4か月で夫が性交を拒否し、他の男性と同性愛の関係をもつようになったことが5号に該当するとして妻からの離婚請求が認められた事例(名古屋地判昭47・2・29)
3.妻が夫の先妻の位牌やアルバムを一方的に処分したことが、夫の人生に対する配慮を欠いた行為であるとし、5号に該当するとして80歳の夫からの離婚請求が認められた事例(大阪高平21・5・26)
4.妻と夫の両親が不仲であり、夫が間に入って積極的に関係を修復しようとする態度が見られない限り、婚姻関係を維持することは困難であるとして、5号に該当するとした事例(名古屋地岡崎支判昭43・1・29)
夫婦ごとのケースによって、さまざまな理由で離婚が認められてきたことが分かりますね。
「性格の不一致」だけでは離婚できない!よく有名人の離婚原因として「性格の不一致」が挙げられます。しかし、正しくは「性格の不一致」だけでは離婚できるものではないようです。
性格の不一致は、民法770条1項1号から4号のどれにもあてはまりませんが、これが原因で夫婦関係が修復不可能になっている場合、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条1項5号)にあたる可能性があります。
ただし、性格の不一致があっても、そのことだけで直ちに離婚が認められるわけではありません。そもそも、生まれも育ちも違う二人の男女の間で、性格が完全に一致することなどありえないでしょう。
性格の不一致が原因となって、どんなに努力しても夫婦関係が修復不可能なまでに破綻してはじめて、「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」にあたると判断されます。具体的には、別居の期間、夫婦間の会話や性的関係の有無、夫婦双方の離婚の意思または修復の意思、夫婦生活の破綻についての双方の有責性の有無とその程度、子どもとの関係、裁判における態度などの総合判断により、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるかどうかが判断されます。
特に、有責性の有無は重要な要素となります。自分が原因で結婚生活がだめになったのに、それを棚に上げて離婚を切り出すのは筋が通りませんから、裁判所は、婚姻関係の破綻に責任がある者(有責配偶者)からの離婚請求を容易に認めない傾向があります。また、いわゆる熟年離婚の場合、婚姻中に築かれた共有財産が多いことや離婚後の再就職が若年層に比べて難しいといった特殊な事情があります。そのため、離婚後に夫婦双方が経済的に困窮しないですむようにするために、裁判所は性格の不一致が「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるかをより慎重に判断する傾向にあるといわれています。
性格の不一致だけで離婚が成立すると言うよりも、性格の不一致によって具体的に「結婚生活が破綻している」と裁判所から認められた場合に、離婚が成立するということになります。
離婚相談は専門家へ離婚できるのかどうか、どういった原因が離婚のために認められるのかは個別のケースごとに異なります。Legalusでも、さまざまな相談が弁護士Q&Aに記載されていますので、参照するとよいでしょう。
自分たちのケースについて本格的に相談したい場合は、Legalusから熟年離婚の問題に強い弁護士を検索するのがおすすめです。熟年離婚したい場合もしたくない場合も、自分の生活を見直すきっかけにもなりますので、一度相談してみてはいかがでしょうか。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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