離婚慰謝料の金額4~悪意の遺棄が原因の場合
[投稿日] 2016年01月16日 [最終更新日] 2016年10月28日
慰謝料を得意としている弁護士
具体的な場面の第4回目として、夫婦間での「悪意の遺棄(いき)」が原因で離婚した場合、どの程度慰謝料が認められるかを取り上げたいと思います。
...と、その前に、「悪意の遺棄」とは何でしょうか?
この場合の悪意とは、悪い人を指すものではありません。法律用語における「善意」「悪意」とは、ある事実を知らないこと(善意)、ある事実を知っていること(悪意)という意味をそれぞれ持っています。「遺棄」は放置するとの意味ですから、悪意の遺棄とは「そういう結果になることを知っていながら放置する」という意味となります。
悪意の遺棄の具体例としては、配偶者に生活費を渡さない、特別な理由もないのにいっしょに暮らさない、病気でもないのに働こうとしない、といったことがあげられます。最近では、夫婦共働きで拘束時間がほぼ同じであるにもかかわらず夫婦の一方が家事に協力しないということも、悪意の遺棄に該当するといわれているようです。
悪意の遺棄
東京地判平成9年6月24日
事件の概要
夫(会社員)と妻(家庭教師)は、婚姻期間35年、うち家庭内別居期間約5年。夫と妻の間には成人した2人の子供がいます。夫は7度の転職を繰り返し、気に入らないことがあると妻や子供に暴力を働き、暴言を吐いたりしました。また、長男を妻の両親の養子にするという問題を巡り、夫婦間ではトラブルが発生していました。このような中、夫は妻に対して生活費を10万円しか渡さなくなりました。妻は子供2人がまだ高校生であり10万円では生活費が不足するとして、生活費をもっと渡すように要求しましたが、夫は要求を受け入れなかったため、妻は夫の食事を作らなくなり、家庭内別居状態となりました。その後、婚姻関係が破綻したため、互いに離婚、慰謝料、財産分与を請求しました。
裁判所が認めた慰謝料の金額
夫から妻へ200万円(請求金額:500万円)
裁判所は、婚姻破綻するに至った経緯を検討して、婚姻の破綻については妻と夫の双方に責任があることを認めていますが、そもそも夫婦関係が悪くなった原因は夫にあること、婚姻破綻の決定打となった婚姻費用分担の打ち切りは、夫に全面的に責任があり、夫と妻を比較すると夫により責任があると判断しました。
もっとも、長男の養子縁組について十分な相談を夫に行わなかったことにより、夫が妻に不信感をもつようになり、生活費を10万円しか渡さなかったという、妻側の責任も認め、その点を考慮して200万円という結論を出しています。
また別の事例では、夫が不貞行為を働き、正当な理由なく妻と別居したことが悪意の遺棄にあたるとして、妻からの慰謝料600万円の請求に対して400万円の支払いを裁判所が認めています。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
問題は解決しましたか?
弁護士を検索して問い合わせる
弁護士Q&Aに質問を投稿する
トップへ
慰謝料2018年09月28日
慰謝料は大体いくらとれますか?というご質問を非常に多く受けます。 判断のポ...
松村 智之 弁護士
松村法律事務所慰謝料2018年08月07日
不貞慰謝料の問題が発生するのは、夫婦の婚姻関係が「破綻していない」ときに、...
松村 智之 弁護士
松村法律事務所