離婚慰謝料の金額7~勝手な転職が原因の場合
[投稿日] 2015年02月04日 [最終更新日] 2016年10月28日
今回は、勝手な転職に起因する離婚の場合、どの程度慰謝料が認められるかを取り上げます。
勝手な転職による離婚
東京地判平成23年4月26日
事件の概要
夫と妻は、平成7年に結婚。婚姻期間は16年、うち別居5年。夫は結婚当初、会社員として働いていましたが、平成9年7月に妻に事前に相談することなく、突然勤務先を退職しました。妻が理由を尋ねても説明はなく、妻は仕事を続けて家計を支えました。
その後、夫は働くならば自分の実家があるところがいいと言って、実家の近くにある会社に就職しました。夫と妻は夫の実家の事情によりしばらく別居をしていましたが、問題が解消されたため、平成10年11月に妻が会社を辞めて夫の実家に転居し一緒に生活をすることにしました。
同居を再開したところ、妻は夫から実は数ヶ月前に退職していたことを知らされました。同時に、同居している夫の母がアルツハイマー病であることも判明しました。妻は同居後まもなく妊娠しましたが、流産してしまっています。この頃から夫は夜間に壁や床を叩き、妻を怒鳴り散らすようになってきました。
妻の働きかけにより、平成11年11月、夫は派遣の工員として就労するようになりました。しかし、それからまもなく、会社の規模縮小に伴う派遣契約の打ち切りにより夫は失業。このあたりから夫の寝言や、深夜に床を叩いたり、壁やたんすを蹴飛ばすという行動が激化していき、さらに妻に対しても怒鳴ったり、壁に身体を押し付けて首を絞めるという行動もとるようになっていきました。平成17年2月に、夫はうつ病、妻は適応障害との診断を受けています。
平成18年2月に夫の母が亡くなったことをきっかけに、妻は自宅を出て本格的に別居を始めます。その約4年後に、妻が離婚及び慰謝料300万円の支払いを求める訴訟を提起しました。
裁判所が認めた慰謝料の金額
150万円(請求金額:300万円)
裁判所は、この夫婦の婚姻関係が破綻した原因を次のように判断しました。
「夫と妻の婚姻関係は、妻による経済的・心理的な面において献身的な貢献により支えられてきたものであったけれども、夫が一方的にそのような関係を害したばかりか、暴言または暴力に及んで破綻させた。」
破綻の原因が全面的に夫にあり、その経過も妻にとっては不合理としかいえないものであるとして、妻の夫に対する慰謝料の請求を認めています。
慰謝料の算定に当たっては、婚姻期間、破綻に至る経緯、破綻の原因となった夫の言動等を考慮に入れ、300万円の請求のうち150万円を慰謝料として支払うことを認めました。
考慮に入れられた要素の中において、度重なる事前相談のない夫の転職も重要な要素として判断されたことと思われます。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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