離婚慰謝料の金額8~過度の宗教活動による離婚
[投稿日] 2015年02月04日 [最終更新日] 2016年10月28日
慰謝料を得意としている弁護士
渡邉 祐介 弁護士 東京都
ワールド法律会計事務所今回は、過度の宗教活動が原因で離婚した場合、どの程度慰謝料が認められるかを取り上げたいと思います。
過度の宗教活動による離婚
東京高判平成2年4月25日
事件の概要
夫と妻は、昭和45年に結婚。婚姻期間は20年、うち別居4年。夫と妻の間には成人していない3人の子供がいます。
妻は昭和51年あたりから宗教団体の勉強会に参加するようになり、数年後には熱心な信者として子供連れで定期集会に参加するようになりました。夫は妻に対して、信仰を止めるように説得をしましたが、妻はこれを聞き入れませんでした。
夫婦は昭和60年頃から家庭内別居状態となり、その後、夫は自宅を出て、妻や子供達と別居しました。
夫は妻に2度にわたって離婚調停を申し立てましたが、いずれも不調に終わったため、夫は妻に対して離婚及び慰謝料600万円の支払い及び子供達の親権者を妻と定めることを求める訴訟を提起しました。
裁判所が認めた慰謝料の金額
0円(請求金額:600万円)
本件訴訟は、一審においては、夫の請求は棄却されています。
控訴審において、裁判所は、夫には妻が宗教活動を止めても共同生活を営む気持ちがないこと、他方、妻は夫と離婚する気がなく夫の帰るのを待っているとはいうものの、宗教活動を自粛する気はなく、夫の考えとはまったく相容れない正反対の考え方をしており、今後双方が相手のために自分の考え方や立場を譲り、夫婦としての共同生活を回復する余地は全くないものといわざるをえないとして、婚姻関係の破綻を認定しています。
その上で、妻の信仰については、信仰の自由は夫婦とはいえども侵害することは許されないものであると述べた上で、夫婦の間では自分の行為の節度を守り、家族間の精神的融和を図って、夫婦関係を円満に保つ義務があり、自分の宗教の自由のみを強調し、相手の生活や気持ちを全く無視する態度をとったことには婚姻関係破綻の責任があるとしました。もっとも、本件については、妻と夫の双方がそれぞれ相手の考え方や立場を無視してかたくなな態度をとり、婚姻関係を円満に継続する努力を怠ったことが原因であるとして、双方に責任があると認定し、夫の慰謝料請求については認めませんでした。
過度の宗教活動を理由とする離婚については、信仰の自由という重大な権利が絡む問題ですので、本件の第一審のように離婚請求自体が認められないケースもあります。信仰する宗教が異なるという程度では離婚が認められることはできないようです。
裁判例では、配偶者の一方の宗教活動が節度を超え、家事や育児の放棄といった夫婦の協力義務違反があるような場合に、婚姻関係の破綻を認定して、離婚を認めています。
慰謝料が認められるケースもあり、夫が特定の宗教を信仰しており、その信仰を隠して熱心なキリスト教徒の妻と婚姻したところ、その後まもなく双方の信仰の相違に端を発する問題から対立に至り、離婚及び慰謝料請求を求める訴訟がなされたケースでは、夫は妻に対して結婚前に自分の信仰を打ち明けて理解を深めるように努力すべきであったこと、その結果として妻の経済状況が困窮したこと等を考慮し、離婚を認めた上で、妻に対して100万円の慰謝料支払いを認めています(東京高判昭和58年9月20日)。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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