離婚慰謝料の金額11~不貞による離婚3
[投稿日] 2015年12月22日 [最終更新日] 2016年10月28日
慰謝料を得意としている弁護士
前回、前々回と2回にわたって、不貞が原因で離婚した場合の慰謝料の金額を取り上げました。どちらも配偶者に対して慰謝料を請求していましたが、不貞行為は一人ではできません。もちろん、その相手に対しても慰謝料請求ができます。
今回は、不貞の相手方への慰謝料がどの程度の金額になるかを取り上げたいと思います。
不貞の相手方に対する慰謝料
東京高判平成10年12月21日
事件の概要
夫と妻は、婚姻期間は約40年、うち別居期間が約20年。夫と妻の間には子供が1人います。
結婚当初、夫は証券会社に勤務しており、結婚から10年後、勤務先で知り合ったA子と不倫関係が始まりました。その後夫は証券会社を退職し、父親の住職の仕事を引き継ぎました。その際、妻と別居しA子と同居を始めます。
A子は、妻がいることを知っていながら、夫の再婚した妻として振る舞っていました。夫は妻に対して離婚の申し入れをしたところ、妻はA子に対して2200万円の慰謝料を請求しました。
裁判所が認めた慰謝料の金額
200万円(請求金額:2200万円)
この事案では、
- A子が夫の実家に再婚した妻と称して入り込んだことについて、妻は強い憎しみを抱いている(A子は夫との妊娠を避けなかったなど、振る舞いが完全に「妻」のようだった)。
- 妻は、家庭を守るために夫との離婚は望んでいなかったにもかかわらず、A子と夫の肉体関係および同棲の継続によって離婚せざるを得なかった。
という点から、妻が深刻かつ多大な精神的損害を被っていると、裁判所は考えました。
さらに、両親の離婚訴訟により、夫婦間の子供のノイローゼが急激に悪化したことも考慮し、200万円の慰謝料請求を認めています。
他方、配偶者の不貞の相手方に対する慰謝料請求が認められなかったケースもあります。
最判平成8年3月26日の事案では、夫と妻は、結婚して17年後に夫婦関係が非常に悪化し、20年後に別居に至りました。別居後夫はホステスをしていたB子と知り合い、B子は夫が妻と離婚することになっていると聞いて、同棲を始めました。
裁判所は、配偶者と第三者(この場合はB子)が肉体関係を持った場合について、夫婦の婚姻関係がその当時すでに破綻していた時は、特段の事情がない限り、第三者は慰謝料の支払い義務を負わない、と判断しています。
また別のケースでは、300万円の慰謝料が相当な事案であると判断されたものの、夫との離婚訴訟において夫から500万円の慰謝料を受け取っており、精神的損害は夫からの慰謝料ですでに補われているとして、不貞の相手方に対する請求は認められませんでした。
不貞の相手方に対する慰謝料は100万円~300万円の範囲で認められることが多いようですが、夫婦関係がすでに悪化していた、十分な慰謝料を別にもらっているというような事情がある場合には、減額される傾向にあるといえるでしょう。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
問題は解決しましたか?
弁護士を検索して問い合わせる
弁護士Q&Aに質問を投稿する
慰謝料を得意としている弁護士
永田 充 弁護士 東京都
野中・瓦林法律事務所トップへ
慰謝料2018年09月28日
慰謝料は大体いくらとれますか?というご質問を非常に多く受けます。 判断のポ...
松村 智之 弁護士
松村法律事務所慰謝料2018年08月07日
不貞慰謝料の問題が発生するのは、夫婦の婚姻関係が「破綻していない」ときに、...
松村 智之 弁護士
松村法律事務所