恋人が浮気しても慰謝料は取れるの? 根拠のまとめ
[投稿日] 2017年07月03日 [最終更新日] 2017年07月03日
慰謝料を得意としている弁護士
「恋人に浮気をされた!怒りが収まらないので、慰謝料を請求したい。でも、夫婦というわけでないのに慰謝料は取れるの?」
そんな疑問を抱いている人も少なくないことでしょう。
確かに、慰謝料は離婚する時に請求するというイメージが強いものです。
果たして、夫婦の離婚と同じくらいの重さが、恋人関係の破局にも認められるのでしょうか。法的根拠を見ていきましょう。
最初に、そもそも慰謝料とは何かということを確認しておきましょう。
そもそも慰謝料とは、精神的損害に対する賠償、つまり、嫌がらせを受けて心に傷を負ったり、経済的にそれほど価値はなくとも思い入れのある品を壊されたりするなど、金銭に換算出来ない損害を被った場合に、これを補填するため加害者が賠償金として支払うものです。
慰謝料請求は、710条の「財産以外の損害」に該当するものとして、離婚に限らず、名誉毀損やプライバシー侵害、各種ハラスメントなど様々な損害事由に基づき請求が認められています。
つまり、「精神的苦痛」全般に対する賠償金が慰謝料ということですね。本来は弁償できるようなものではないけれど、それをどうにか金銭で埋め合わせるための方法と考えることもできます。大抵のトラブルにおいては、少なくとも慰謝料を請求することはできるというわけです。
恋人が浮気をした程度では、慰謝料請求は認められにくいそれでは、現実的に考えて、恋人の浮気に対し慰謝料を請求することはできるのでしょうか。弁護士の意見を確認してみましょう。
結婚をしていない男女間において、慰謝料請求が認められるケースは限られているという点をまずはお伝えしたいです。
具体的なパターンとしては、
恋人関係にあったが、交際状況が変質し、ストーカー行為などをするようになり普段の生活が脅かされた場合
喧嘩して相手方から暴力を振るわれた結果、怪我をした場合
嫌がっているのに、性行為を強要された場合
性行為の結果、妊娠が発覚した後、相手方からないがしろにされた場合
などが挙げられます。これがすべてのパターンではありません。代表的な事例とお考えください。
上記のように、慰謝料請求が認められるのは、ストーカー行為や暴力によって明確な権利侵害(身体や生活の安寧を脅かされた場合)がある場合と言えるでしょう。
恋人関係の場合、相当悪質な問題がない限り、慰謝料の請求が認められる可能性は低いということがわかります。
浮気をされた程度では、慰謝料を勝ち取るのは難しいでしょう。
一応、恋人の浮気によって精神を病むなどの問題があったのなら、「身体や生活の安寧を脅かされた」と考えることもできます。しかし、どこまでが恋人の責任になるのかは、裁判で争って決めるしかありません。
恋人が既婚者だったとしても、浮気とほぼ同様に考えられるもう1つ、少し特殊なケースを見ておきましょう。浮気をされたのではなく、実は相手が既婚者だったというケースです。最初から誠実な交際をするつもりはなかったわけですから、より悪質であるといえます。
本件のような場合、貞操権を侵害されたとして、慰謝料請求をすることが考えられます(民法709条・710条)。
貞操権とは、性的自由に対する不当な干渉を受けない権利、つまり純潔を侵害されない権利のことをいいます。この貞操権は、個人の権利の側面と夫婦間においてそれぞれが相手方に対して有する義務の裏返しという2つの側面を持つ権利です。
今回は、個人の権利の側面での貞操権侵害を主張することになります。
(中略)
したがって、相談者としては、相手方男性に妻がいると知っていれば性交渉をしなかったとして、性的自由が侵害されたとして慰謝料請求を求めるということになります。
このケースでは、貞操権の侵害を理由に慰謝料を請求していますが、基本的な考え方は精神的苦痛の場合と同じです。問題は、請求が認められるかどうかです。
もっとも、判例において貞操権侵害が認められたケースでは、
- 男性が結婚をほのめかしていた
- 女性が若年(未成年)で思慮が十分でない
- 男性から積極的に交際を持ちかけた
- 男性にとっていわゆる「遊び」であった
などの男性側の違法性が判断要素となっています(最判昭和44年9月26日参照)。
本件では、確かに、3.男性から積極的に交際を持ちかけており、4.男性も「遊び」であったことを認めています。
しかしながら、1.男性は相談者に対し結婚をほのめかしてはいないこと(むしろ気楽に付き合いたいと言っていること)や2.相談者は思慮が十分な成人女性であることから、相談者の請求が裁判で認められる可能性は低いといえます。
やはり、結婚をほのめかすなどの悪質な事情がない限り、現実的には慰謝料の請求は認められにくいということですね。
明らかに遊ばれていたケースでさえこの結論なので、暴力や強姦、ストーカーといった問題がなければ、慰謝料を勝ち取るのは難しいということがわかります。
恋人の浮気に対し慰謝料を請求しても、認められる可能性は低いのが現実です。恋人は夫婦とは違い、法律で結びついた関係ではありません。夫婦は婚姻という法的な関係で結ばれているからこそ、離婚の条件が細かく定められており、不貞行為も重く見られるのです。
しかし、いくら恋人が夫婦よりも軽い関係だとはいっても、浮気された側の気持ちは簡単には収まりません。Legalusの離婚・男女問題に関する弁護士Q&Aにも多くの相談が寄せられています。
どの程度が「明確な権利侵害」になるのかも、個別に状況を見てみない限りは判断できません。
どうしても納得がいかない!というときは、男女関係のトラブルに強い弁護士に相談してみるのもよいでしょう。
納得がいかないことはきっちり清算して、早く次の恋愛に向かえるといいですね。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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