離婚の際に支払うことがある『解決金』は慰謝料とは違うの?金額の決め方とは
[投稿日] 2017年08月28日 [最終更新日] 2018年06月01日
慰謝料を得意としている弁護士
田中 克幸 弁護士 福岡県
天神ベリタス法律事務所高島 健太郎 弁護士 奈良県
奈良万葉法律事務所離婚に際して、一方当事者は相手方に対して、金銭などの請求をすることができます。
民法で認められているものとして、まず同法768条が定める“財産分与”と同法709条に基づく“慰謝料”があります。その他、子どもがいれば養育費の支払などもあります。
“財産分与”とは、婚姻中の夫婦が共同で築き上げた財産は、その名義を問うことなく夫婦の共有財産であるから、離婚に際してこれを清算すべきだとして認められたものです。
また、財産分与には“離婚後扶養”の要素もあるとされています。これは、共有財産の清算をした後でも、一方が離婚後の生活に困窮し、相手方に扶養能力があるときに認められるものです。
“慰謝料”は、離婚が一方の有責行為を原因としている場合に、他方の被った精神的損害を賠償するものです。
しかしこれら以外にも、離婚を成立させる条件として「解決金△△円を支払う」という条項が入れられることがしばしばあります。この“解決金”とは一体何を意味し、その金額はどのようにして決められるのでしょうか。
解決金とは何か離婚問題で発生する金銭には、曖昧な部分が生じがちです。
気持ちや個々の事情など、客観的には図りにくい部分があるからです。
例えば、財産分与は比較的客観的に算出することができます。
しかし、離婚後扶養金としての財産分与については、毎月どの程度の金銭が必要なのか、その期間はどの程度なのか、そもそも扶養が必要なのかなどの争いがあり、決めにくいことがあります。
また、慰謝料についても、相手方が有責行為の存在を否定したり、これを認めたとしても、他方にも落ち度があるなどといって減額を求めたり、さらには精神的損害という極めて主観的なものですから、その算出自体が困難であるという特徴も有しています。
さらに、根本的な問題として、“慰謝料”とすると責任が生じるような行為があったという事実を認めることになり、“慰謝料”という条項を入れること自体を避けたいとの当事者の思惑もあります。受け取る側にとっても、お金に色はついていないのだから、名目などどうでもよいとする考えもあります。
そこで、“解決金”という曖昧な名目をもって離婚を成立させることがあります。
解決金は離婚で生じるお金をすべて含んだもの?では、解決金の内容はどういうものなのでしょうか。
一般的には、離婚に際して支払うべきすべての名目の金銭を含んだものが解決金であるという見方が多いようです。
ですから「解決金」名目で金銭を支払えば、離婚後にそれ以上の金銭支払請求権や義務がないのが通常であるといってよいでしょう。
解決金支払後の紛争を防ぐにはただ、先に説明をしたように、解決金というのは極めて曖昧とした費目ですから、通常は慰謝料などのすべての費目を含んだものと考えられていても、別途に慰謝料を請求されたり、財産分与を求められることも、まったくないことではありません。
解決金を受領した当事者が、それは離婚するための解決金にすぎず、他の慰謝料や財産分与は含まれていないと主張してくることもあるのです。
解決金を支払った方としては「すべてが円満に解決して離婚をしたのに…」という、寝耳に水の心境になるでしょう。
このような請求を回避するためには、離婚協議書や調停離婚の調書に「解決金として△△円を支払う」という条項以外に、「清算条項」を入れておくとよいでしょう。
清算条項とは、例えば「甲と乙との間には、本協議書に定める以外、何らの債権債務関係がないことを確認する」といった条項です。「何らの債権債務関係がない」ということは、金銭面でいえば、慰謝料請求権も財産分与請求権も存在しないことを意味します。
ですから、この条項によって、後日の慰謝料等の請求を封ずることができるのです。
ただ、財産分与については、一方当事者が、財産を隠匿していて、解決金の支払をもって離婚を成立させた当時、他方当事者がその隠匿財産に気付かず、離婚後にこれを知ったという場合もあります。
この場合には、他方当事者は、錯誤(民法95条)や詐欺(同法96条1項)を理由として、隠匿されていた財産についての分与まで清算条項が及ぶものではないとして、新たにその分与を求めることができます。
これは離婚する当事者の事情によって決せられますので、一概にいくらであるとすることはできません。双方の資産の状況、有責性の有無・程度などを総合的に考慮して決められます。ですから、100万円程度ですむこともあれば、1000万円を超えるということもあります。
様々な要素を検討する必要があるため、離婚問題に詳しい弁護士に相談し、過去の事例と照らし合わせるなどして、妥当な金額を検討するのがよいでしょう。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
問題は解決しましたか?
弁護士を検索して問い合わせる
弁護士Q&Aに質問を投稿する
慰謝料を得意としている弁護士
市村 和也 弁護士 大阪府
谷四いちむら法律事務所佐藤 智宏 弁護士 埼玉県
むさしの森法律事務所トップへ
慰謝料2018年09月28日
慰謝料は大体いくらとれますか?というご質問を非常に多く受けます。 判断のポ...
松村 智之 弁護士
松村法律事務所慰謝料2018年08月07日
不貞慰謝料の問題が発生するのは、夫婦の婚姻関係が「破綻していない」ときに、...
松村 智之 弁護士
松村法律事務所