【弁護士に聞く】不倫の慰謝料を請求されたらどうしたらいい?
[投稿日] 2019年04月05日 [最終更新日] 2019年04月05日
慰謝料を得意としている弁護士
既婚者と体の関係を持ってしまったという方、結婚しているのに配偶者以外の方と関係を持ってしまっている方は、いつ慰謝料を請求されるかわからないリスクを抱えています。
そこで、不倫の慰謝料を請求された場合の対策について、ワールド法律事務所の渡邉祐介弁護士にお話をお伺いしました。

(ワールド法律会計事務所)
弁護士になる前は、IT企業のサラリーマンという異色の経歴の持ち主。相談者の主張や立場を深く理解し、親身になって寄り添う姿勢が、法律の狭間で苦しむ方から高い評価を得ている。
――不倫の定義とは?どこからが不倫になりますか。

渡邉 弁護士
日常生活では「不倫」という言葉をよく使いますが、法律的には「不貞行為」といいます。
不貞行為は、「配偶者のある者が、自由な意思に基づいて配偶者以外の異性と性的関係をもつこと」と定義されます。
「性的関係」の範囲は、性交渉ないし性交類似行為と考えられていますので、手や口を使った行為でも不貞行為になる可能性があります。
――不貞行為の定義は民法に記載されているのですか。

渡邉 弁護士
何が不貞行為に当たるのかは、条文に記載されているわけではありません。
法律解釈や過去の判例の蓄積によるものです。
だから、時代によって変遷する可能性もあります。
たとえば、将来、AR技術やVR技術などが発達して、装置や機器を通じた擬似性交渉が可能となれば、それが不貞行為と認定される日が来るかもしれませんね。
――性交渉や性交類似行為をしていなくても、食事をしたり、手を繋いだりといった行為も人によっては「許せない」と感じることがあると思います。それでも性交渉等がなければ不貞行為と認定されないのですか。

渡邉 弁護士
自分のパートナーが異性とそういう行為をされると嫌だと感じる人は多いと思います。
ですが、法的にはご飯を食べたり手を繋いだりすることは、性交類似行為とは認められません。
だから、慰謝料を請求することはできません。
ただ、裁判で裁判所に認めてもらうのではなく交渉の中で相手から任意で支払ってもらうという形で、相手から慰謝料を払ってもらうことは可能性としてはありえます。
法的権利として、裁判で請求することは難しいということです。
テレフォンセックスやチャットでの擬似性交も不貞行為とはみなされないので、慰謝料は認められないでしょう。
――不貞行為が「1回だけ」でも慰謝料を請求されることはありますか。

渡邉 弁護士
1回でも不貞行為があれば慰謝料を請求される可能性があります。
ただ、不貞行為の慰謝料は「継続期間」や「回数」によって計算されるので、1回の不貞行為であれば、それほど高額の慰謝料にはならないことが多いですね。
- 不貞行為とは性交渉や性交類似行為
- 食事や手繋ぎだけでは不貞行為とみなされないので慰謝料を請求できない
- 1回でも不貞行為の慰謝料は請求されることがある
――不倫の慰謝料を請求された時に、やってはいけないことはありますか。

渡邉 弁護士
不貞行為の慰謝料を請求された場合、将来的に「証拠を取られる行為」はしないほうがいいです。
不貞行為の慰謝料を請求するためには、請求する側が「不貞行為があったこと」を証明しなければなりません。
請求側がしっかりした証拠を握っていなければ、裁判でも慰謝料が認められる可能性は低いのです。
ですから、相手が証拠を握っていない状況では、不貞行為を認める発言をすることは厳禁です。
請求側は、不貞行為の証拠を引き出すために、録音しながら不倫を認めるように詰め寄ってくる可能性もあります。
また、慰謝料を請求されているのに不貞行為を続けることも危険です。
証拠がなかったのに証拠を握られる可能性があります。
――不貞行為の証拠にはどんなものがありますか。

渡邉 弁護士
典型的には、ラブホテルに入っていく写真が証拠になるケースが多いです。
ラブホテルは、性行為を行う場所であるという認識が一般的ですので、ラブホテルに2人で入ったということは性交渉を行なっていると推定できるんです。
――不貞行為の証拠は他にもありますか。

渡邉 弁護士
よくあるのは、2人のやりとりしているメールやLINEの内容です。
場合によっては、2人で盛り上がって撮影していたような盛り上がり中の写真なども証拠としてあがってくることはありますね。
――「こういう行為があると慰謝料が増額される」具体例はありますか。

渡邉 弁護士
慰謝料の請求後も不貞行為を続けていると、不貞行為の回数や期間が増えてしまいますので、慰謝料が増えてしまう可能性があります。
また、不倫内容の悪質性も考慮されますので、いったんは不倫交際は止めると約束したにもかかわらず、再度不倫したような場合も、内容が悪質と判断されるケースがあります。
――不倫相手との交際を続けたいのですが、可能ですか。

渡邉 弁護士
物理的には可能でしょうが、リスクが大きいので避けたほうがよいです。
慰謝料請求後であれば、慰謝料が増える可能性がありますし、慰謝料を支払った後も交際を続けて、証拠を握られると再び慰謝料を請求されるでしょう。
最初に2年間不貞行為を続けていて、慰謝料を支払い、さらに2年間不貞行為を続けると、不貞行為は「4年間」続いていたとみなされて、1度目よりも多めの慰謝料を請求される可能性もあります。
- 不貞行為は請求した側が「不貞行為をしていたこと」を証明しなければならない
- 不倫の慰謝料を請求された時、相手に証拠が握られていなければ不倫をしていたことを認めてはいけない
- 慰謝料請求後に、不貞行為を継続すると証拠が握られる可能性がある
- 一般的にはラブホテルに出入りする写真などが証拠となる
――不倫の慰謝料に相場はありますか。

渡邉 弁護士
不貞行為の慰謝料は、不貞行為の期間や回数などが考慮されて慰謝料が計算され、大枠としての「相場」はあります。
そもそも慰謝料は、「不貞行為をされたことで傷ついた」ことに対して支払われます。
そうなると、不倫をされた側からすると「どれだけ不倫相手を愛していたのか」、「どれだけ深い繋がりがあったのか」によって、傷つき度合いというものは変わると思います。
でも、「どれだけ傷付いたか」って客観的に判断するのは難しいですよね。
だから、「期間」や「回数」などという目に見えるもので相場を判断せざるをえないんです。
――夫婦の結婚期間等も慰謝料の計算に影響しますか。

渡邉 弁護士
夫婦の結婚期間も、慰謝料には考慮されます。
短ければ少ないですし、長ければ慰謝料も高額になる傾向にあります。
さらには、「離婚したかどうか」も影響してきます。
不貞行為が原因で夫婦の関係が壊れてしまうと、慰謝料も大きくなるでしょう。
慰謝料の相場はケースバイケースなので、弁護士に状況を説明すれば大体の目安をお答えできると思います。
――例えば3年間不貞行為が続いていて、離婚してしまった場合の慰謝料はどれくらいになりますか。

渡邉 弁護士
3年も継続した上に、離婚となると10万円単位ではなく200万円以上の慰謝料を請求される可能性があります。
浮気をされた側からすると、「全然足りない」と感じるかもしれませんが、個別の悲しみや怒りを汲み取りすぎた判決を出すと「公平性」にかけてしまうので、裁判所では不貞行為の期間や回数、結婚期間に、離婚の有無などを考慮して慰謝料を計算するんです。
「1000万円もらわないと許せない!」と考える方の気持ちはよくわかるんですが、大声で悲しみを訴える人が高額の慰謝料が認められてしまうということだと、裁きとしては不公平になってしまいます。
――裁判ではなく、示談交渉した場合ではどうでしょうか。

渡邉 弁護士
それでも、よほど特殊な状況がない限りは「裁判をしたら認定されるであろう金額」の周辺に落ち着くことが多いです。
双方に弁護士が入っている場合は特にそうなるでしょう。
――慰謝料を請求される側の資産額は慰謝料に影響しますか。お金持ちは慰謝料を多く支払うのですか。

渡邉 弁護士
慰謝料は、「お金持ちだからたくさん支払わなければならない」という性質のものではありません。
お金持ちの人もそうでない人も「同じ悪いこと」をしたので、慰謝料の金額もおおよそ公平に判断されます。
資産家の方と離婚する場合にたくさん請求できる!というイメージの方もいるかもしれませんが、夫婦の婚姻財産の清算である財産分与のところではまとまった金額を受け取ることはできるかもしれませんが、それは慰謝料とはまた別です。
――お金がない人から慰謝料を受け取ることはできますか。

渡邉 弁護士
法的には不動産や車、給与を差し押さえることで慰謝料を受け取ることは可能です。
でも、無職でなにも財産もない人からは事実上は慰謝料を受け取ることは難しいでしょう。
- 不貞行為の慰謝料は不貞行為の継続期間、回数、夫婦の結婚期間や離婚の有無で算定される
- 怒りや悲しみの大きさで決定されるわけではない
- 慰謝料は支払う側の資産額には左右されない
――既婚男性が独身女性と不貞行為をしていた場合、妻に「女性にも慰謝料を請求するように」ということは可能ですか。

渡邉 弁護士
もちろん可能です。
そもそも不貞行為は「共同不法行為」といって複数の人間が1人に対して不法な行為をすることです。
そのため、自分に損害を与えた2人に対して慰謝料を請求できます。
また、妻に慰謝料を支払った夫は、不倫相手の女性に慰謝料の一部を負担するように求償(請求)できます。
――不倫された側は、不倫をした2人に対してそれぞれ慰謝料を請求することができるのですか。

渡邉 弁護士
共同不法行為なので、2人のどちらに請求しても構いません。
法的に慰謝料200万円が相当である事案の場合、どちらか片方から受け取っても良いですし半分ずつ受け取っても良いでしょう。
ただ、それぞれから200万円ずつ貰えるわけではありません。
合計で200万円となるまで2人それぞれに請求できるということです。
ですから、「自分は5割の100万円しか支払わない」という拒み方はできません。
夫が妻に200万円の慰謝料を支払った場合は、夫から不倫相手に100万円の慰謝料を求償することができます。
- 不貞行為の慰謝料は不貞行為をしていた2人に請求できる
- 2人がそれぞれ認定額を支払うのではなく、認定額をそれぞれの負担割合に応じて負担する
- ただし、全額請求に対して負担割合を超える部分の支払を拒むということはできない
- 夫が一括で支払った上で、不倫相手に慰謝料を負担割合分請求することはできる
――結婚していない、あるいは夫婦関係は破綻していると聞かされていた場合にも慰謝料を支払わなければなりませんか。

渡邉 弁護士
「僕は結婚していないよ」「結婚しているけど1年以上別居中だよ」などと、結婚していることを隠されていたり、夫婦関係が破綻していると聞かされていた場合は、慰謝料を支払う必要はありません。
不貞行為は法律的には「不法行為」ということなのですが、不法行為は「故意」や「過失」でなければ成立しません。結婚していることを知らない場合は、「悪いことをしている」ということを自分で認識することはできないので故意や過失とはみなされず、不法行為をしていたことにはならないですね。
――本当に知らなかった場合「知らなかった」というだけで、慰謝料の請求を免れることができますか。

渡邉 弁護士
原則として、慰謝料を請求された側が「知らなかったこと」を証明する義務はありません。
慰謝料を請求した方が、「本当は知っていたはずだ」と証明しなければならないのです。
夫が不貞行為をして、妻が相手の女性に慰謝料を請求したときは、妻の側で「相手の女性は夫が結婚していることを知っていた」ということを積極的に証明しなければなりません。
――「結婚していること」、「夫婦仲は破綻していなかったこと」を知っていたことを証明する証拠とはどのようなものですか。

渡邉 弁護士
証拠はなかなか難しいかもしれませんが、同じコミュニティに所属しているようなケースでは、「知らないわけないでしょ」という言い方ができます。
たとえば、不倫相手と夫が同じ職場で働いている場合、「あの人が結婚していることはその職場の人全員が知っていた」という状況が立証されれば、相手の女性だけが知らなかったというような事実は、裁判官も認定しないでしょう。
「毎日愛妻弁当を持ってきていることを、職場の人がみな知っていた」などの事実があれば「相手の女性も夫婦仲が破綻していなかったことは知っていたはずである」ということになってきます。
――他にも慰謝料を支払う必要がない場合はありますか。

渡邉 弁護士
不貞行為の証拠がない場合は支払う必要はありません。
また、誰かと不倫している、というような証拠は握られているものの、不倫相手の名前や住所が明らかになっていなければ、慰謝料を請求する手立てがありません。
その場合は、事実上、不倫相手は支払いを迫られる状況にはならないでしょう。
- 「結婚していること」を知らなかった場合や、「夫婦仲が破綻していた」と聞かされている場合は慰謝料を支払う必要はない
- 不貞行為の証拠がなければ支払わなくて済んでしまうケースが多い
- 氏名や住所を把握されていなければ、請求を迫られにくい
――不倫の慰謝料を請求された際に弁護士に相談するメリットはなんですか。

渡邉 弁護士
まずは、状況に応じて適切なアドバイスができる点です。
初期段階であれば「こういう行為はやってはダメですよ」と具体的なアドバイスを受けられます。
相談せずに自分で対応していると、やってはいけないことをしてしまう可能性があります。
証拠を握られていなかったのに、誘導尋問に乗ってしまい「不倫していた」と発言してしまうことなど、相手に証拠を与えるようなことは言ってはいけないとお話ししましたね。
また、相手の請求が裁判所の判断を上回る金額だった場合、妥当な金額に慰謝料を減額することも可能です。
――金銭的なメリット以外のメリットはなんですか。

渡邉 弁護士
私が最大のメリットと考えている点でもあるのですが、直接交渉せずに済むのでストレスから解放されるという点ですね。
例えば、不倫相手の妻から慰謝料を請求された独身女性の場合、弁護士に依頼しなければ自分で直接妻と対峙することになります。
不倫された側の怒り、悲しみのパワーは凄まじいものがあります。
突然の電話や来訪などに怯える日々が続くでしょう。
いつ電話がかかってくるのか、いつ家にやってくるのかと常に不安とストレスを抱えてしまいますね。
家族や同居人などがいたりすると、その方にも迷惑がかかったりもします。
場合によっては、不安で仕事が手につかず収入が下がってしまうことだってあります。
弁護士に依頼することで、交渉を丸投げできるので、そういったストレスから解放されます。
その結果、普段の生活や仕事に集中してパフォーマンスを上げていけるというのが一番のメリットではないかと思っています。
- 弁護士に相談することで状況に応じた適切なアドバイスをしてもらえる
- 慰謝料の請求金額を妥当な金額に減額できる
- 相手との直接交渉をせずに済むので、大きなストレスから解放される
不貞行為の慰謝料を請求された場合、そこには大きな怒りや悲しみの感情が渦巻いているので、自分で交渉するのは、かなりのエネルギーが必要でストレスも大きくなってしまいます。
また、相手から過剰に慰謝料を請求された場合、個人では適切に対応することは難しいので一人で抱え込まずに早めに弁護士に相談して、適切な対処法をアドバイスしてもらいましょう。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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