規則・校則

学校の規則・校則と生徒の人権。優先して守られるべきはどっち?
校則、生徒心得、学校生活のきまりなど、名称は様々ですが、どこの学校にも校則は存在します。学校生活一般や、服装・髪型、男女交際等について、学校ごとに様々なルールが設けられています。中には首をかしげたくなるようなものも存在します。校則を巡る問題を法律面から検討してみましょう。
校則、学校の規則は誰がどうやって決めている?学校が校則を制定することができるという明文上の根拠はあいまいです。教育についての原則を定めた教育基本法にも、学校が校則を定めることができるという明確な規定はありません。
ただし、同法第6条は、学校は「教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。」とし、教育は「教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。」と定めています。
すなわち、学校は、教育の目標を達成するために、児童生徒等に規律を守らせるよう指導することもできるのです。その指導の一環として、生徒等に守らせるべき規律すなわち校則を定めることもできると考えることができます。
具体的にどうやって校則を定めるかは、それぞれの学校ごとに異なります。一般的には、教職員の会議において決定されるようですが、PTAの意見や、児童生徒等の意見を取り入れたりするケースもあるようです。
また、最近では、校則の変更について全校生徒の意識を問う投票を行い、変更が多数意見であれば学校側に要望を出すという取り組みを行った学校もあるそうです。
服装や髪型についての細かすぎるルール
ズボン丈・スカート丈や靴下・ハンカチ・カバンの種類やデザイン、髪の長さまで、事細かに校則で定めることは許されるのでしょうか。
児童生徒等の服装や髪型の自由については、表現の自由(憲法21条)や幸福追求権(憲法13条)により憲法上保障されると考えられますが、校則が生徒等の人権を侵害するのではないか問題となります。
先に述べたように、学校は校則を定めることができますが、あくまで教育目標達成のためでなければなりません。服装や髪型を何から何まで事細かに規制することに合理性がなければ、校則の規定は生徒の人権侵害に当たり許されないと考えられます。後ほど紹介しますが、裁判所は校則による規制について、比較的寛容な姿勢を取っています。
所持品検査
校則をタテに、先生に漫画本やゲームを没収された経験のある人は少なくないでしょう。教師が生徒に対して所持品検査を行うことは許されるのでしょうか。
所持品検査について問題となる生徒の権利としては、プライバシー権(憲法13条)、財産権(憲法29条)、「何人も、所持品について侵入、捜索及び押収を受けることのない権利」(憲法35条)があります。一方で、学業に支障がでないように、学業に関係のないものを学校に持ち込ませないという学校側の教育的配慮も理解はできるところです。
したがって、所持品検査を行う場合に、その目的を説明して生徒や親権者の理解を得るなど、生徒の人権への配慮がなされている場合には、人権侵害とまではいえないと考えられます。
退学処分とは
学校教育法11条は、「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。」と定めており、退学処分は懲戒の一つです。退学処分は、校長が行う(学校教育法施行規則第26条2項)とされていますが、退学は生徒を学校に通えなくするという重大な処分であり、生徒の教育を受ける権利(憲法26条1項)を侵害する可能性があります。そのため、退学処分に関する校長の裁量権は制限されています。具体的には、「(1)性行不良で改善の見込がないと認められる者(2)学力劣等で成業の見込がないと認められる者(3)正当の理由がなくて出席常でない者(4)学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者」と四つの場合に限定されています(学校教育法施行規則第26条3項)。
退学処分を裁判で争う
校則違反を理由とした退学処分は、上記四つの場合のうち「(4)学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本文に反した者」にあたるといえます。退学処分に納得がいかない場合、裁判で退学処分の無効確認や、損害賠償を請求することが考えられますが、この場合、校長の退学処分が「違法」といえるかどうかがポイントとなります。
先に述べたように、退学処分は、校長の裁量により決定されます。処分が違法といえるのは、退学処分が校長の裁量の範囲を超えている場合です。
例えば、校則違反をした事実がありもしないのに生徒を退学とした場合は、学校教育法施行規則に定められた四つの場合のどれにも当たらないため、明らかに裁量の範囲を超えています。
また、退学処分を含め、懲戒を行うには、「児童等の心身の発達に応ずる等教育上必要な配慮をしなければならない」(同規則第26条2項)とされています。校則違反の事実があったとしても、まずは生徒や保護者と話し合い、生徒の反省を促すなどの配慮が必要であると考えられるため、いきなり退学処分にするようなことは、校長の裁量の範囲を超えるといえます。
校則そのものを裁判で争う
退学処分が校長の裁量の範囲にあるとしても、そもそも校則の規定自体が不合理で生徒の人権を侵害していると考えられる場合もあります。そのような場合は、当該校則が憲法違反であり無効であることの確認を求めるとともに、退学処分の無効確認を求めるという方法もとることができます。
校則をめぐる裁判の結末裁判で校則が問題になった事例を紹介します。
- 普通自動車運転免許の取得を制限しパーマをかけることを禁止する校則に違反するなどした私立高等学校の生徒に対する自主退学の勧告に違法があるとはいえないとされた事例(最判平成8年7月18日)
(判旨)
私立学校は建学の精神に基づく独自の伝統ないし校風と教育方針によって教育活動を行うことを目的とし、生徒もそのような教育を受けることを希望して入学するものである。免許の取得の制限は交通事故から生徒の生命身体を守り、非行化を防止し、勉学に専念する時間を確保するためであり、パーマの禁止は、高校生にふさわしい髪型を維持し、非行を防止するためであるというのであるから、本件校則は社会通念上不合理なもとのはいえない。 - 公立中学の男子中学生が、在学中、校則の「丸刈、長髪禁止」と定めた部分について、校長に対してその無効確認等の請求を行った事例(熊本地判昭和60年11月13日)
(判旨)
丸刈り校則の合理性や、その教育上の効果には疑問の余地があるが、指導に従わない場合にバリカン等で強制的に丸刈りにしたり、訓告以上の不利益措置を予定したりしていない等の事情から、著しく不合理であることが明らかであるとはいえず、当該校則は違法とはいえない。
学校には児童生徒やその保護者、教職員など多数の人が関わっており、校則についての意見も、学校に関わる人の数だけ、異なるものが存在します。校則について何らかの主張をしたい場合、特に裁判で争いたい場合、単なる感情論ではなく、自分の意見を理論的に説明できるだけの準備が必要です。
参考コンテンツ:
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