出生届

両親が結婚してるかどうかで変わる。出生届と子どもの戸籍
子どもが生まれたら、まず第一に出生届を出さなければなりません。出生届とは、子どもが生まれたことを国に届け出るための書類です。出生届を出してはじめて、子どもが戸籍に記録され、法律上の親子関係が発生します。ただ、両親が結婚していない場合、外国で生まれた場合など、出生届を出す場合に注意が必要な場合があります。
基本的な出生届の手続き出生届は、出生の日から14日以内に行う必要があります(戸籍法49条1項)。早朝に生まれた場合でも、深夜に生まれた場合でも、生まれた日を一日目として日数をカウントします。正当な理由がなく、この期間内に届出をしなかった場合、五万円以下の過料に処せられます(戸籍法135条)。
出生届は、出生証明書と一体になっています。届出用紙は市区町村役場や病院でもらうことができます。出生届の右半分が出生証明書で、出生した病院等の医師や助産師が記入し、署名・押印します。
左半分が出生届で、ここに必要事項を記入します。記入事項は、子の氏名、子の男女の別及び嫡出子又は嫡出でない子の別、出生の年月日時分及び場所、父母の氏名及び本籍、父又は母が外国人であるときはその氏名及び国籍などです。届出をする場所は、子の出生地・本籍地または届出人の所在地の市役所、区役所又は町村役場です。出生届は、夜間・土日祝、365日24時間いつでも受理してもらえます。手数料はかかりません。
出生届をすると、両親の戸籍に、子の「出生」が記録されます。具体的には、「戸籍に記載されている者」という欄に、子の名・生年月日・父母の氏名・続柄が記載され、その下の「身分事項欄」に、「出生」の旨及び出生日・出生地・届出日・届出人が記載されます。
以上は、結婚している夫婦の間に子どもが生まれた場合の基本的な出生届の手続きです。しかし、子どもは結婚している夫婦の間に生まれるものとは限りません。結婚前のカップルや事実婚のカップルの場合や、シングルマザーの場合は出生届を出す際に次の点に注意が必要です。
父親との親子関係
妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定されます(民法772条1項)。また、婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消もしくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定されます(民法772条2項)。この嫡出推定の規定により、法律上の婚姻関係にある男女の間に子どもが生まれた場合、夫の子であると推定されるので、特段の手続きなく、子どもと父親との間に法律上の親子関係が生じます。
これに対して、結婚前のカップルやシングルマザーの場合、この規定にあてはまらないので、生まれてくる子どもと父親との間には、父親が子どもを認知(民法779条)しない限り、法律上の親子関係が生じません。
認知は、父親が自分の子どもであることを認める認知届を提出することによって行います(民法781条、戸籍法60条)。認知は、子どもが胎児の間でも行えますが、母親の承諾を得ることが必要です(民法783条)。父親が認知しない場合、子どもから父親に対して認知の訴えを起こすこともできます(民法787条)。
戸籍の記載
結婚前のカップルやシングルマザーに子どもが生まれた場合、出生届を出すと、母親を筆頭者とする新しい戸籍が作られ、子どもは母の戸籍に入り、母の氏を名乗ります。父親が認知をしていない場合は、「戸籍に記載されている者」欄の父親の欄は空欄のままです。父親が認知した場合は、父の氏名が記載されます。
なお、かつては嫡出でない子の出生届が出された場合、続柄欄には「長男(長女)」「二男(二女)」等ではなく、「男」「女」と記載されていました。しかし、この点については平成16年に変更があり、現在は母親が出生した嫡出でない子の順に「長男(長女)」「二男(二女)」と記載されるようになりました。また、既に戸籍に記載されている嫡出でない子についても、本人や母親等の申し出により、記載の訂正ができるようになりました。
子どもが無戸籍になってしまう原因無戸籍者の問題
最近ニュース等にも取り上げられていますが、出生届が出されず無戸籍であるため、就学の機会が奪われたり、運転免許が取得できず日常生活に支障をきたしたりすることが問題になっています。
出生届が出されなかった理由は様々ですが、民法の嫡出推定の規定と関わりがある場合があります。
夫と事実上離婚状態になった女性が、夫以外の男性の子を妊娠し、夫との婚姻中または離婚から300日以内に子どもが出生した場合、その子は夫の子と推定され、子の出生届を出せば夫の戸籍に記載されることになります。しかし、女性が夫に子の存在を知られたくないために、出生届を出さずにいた結果、子が無戸籍となってしまうのです。
戸籍に記載されるためには
無戸籍の方が、戸籍に記載を求める場合、まずは市区町村役場の戸籍担当部署、法務局に相談しましょう。弁護士会にも、無戸籍に関する相談窓口が設けられています。戸籍に記載されるための手続きは複雑ですが、大まかにいって「父親を誰と記載したいか」により異なります。
母親の元夫を父として記載したい場合母親の協力が得られるのであれば、母親が子の出生届を出せば、子は父の戸籍に記載されます。母親の協力が得られない場合、法務局に母子関係の存在を証明できる書面(出生証明書や母子手帳など)を提出し、母子関係の認定を受けます。
認定を受けたら、無戸籍者から法務局に対して「出生事項申出書」を提出します。申出書の提出を受けた法務局は、元夫の本籍地の市区町村にこれを送付し、母親に対して出生届の提出を催告します。催告しても母が出生届を出さない場合は、元夫の本籍地の市区町村長が、法務局の許可を得て、職権で元夫の戸籍に記載します。
嫡出推定を受ける場合、元夫からの嫡出否認の訴えによらなければ、父子関係を否定することができないのが原則です(民法775条)。しかし、嫡出否認の訴えを起こすことができる期間は、元夫が子の出生を知ってから1年に限られているので、期間を過ぎた場合はこの方法によることはできません。そもそも、元夫が手続きに協力するため嫡出否認の訴えを提起してくれるとは限りません。
嫡出否認の訴えによることができない場合は、家庭裁判所に親子関係不存在調停の申し立てをすることができます。この調停において、当事者双方の間で、子どもが夫婦の子どもではないという合意ができ、家庭裁判所が必要な事実の調査等を行った上で、その合意が正当であると認めれば、合意に従った審判がなされます。
その後、出生事項記載申出書と審判書謄本及び確定証明書を市区町村の窓口に提出し、母親から出生届がなされれば、子どもは母の戸籍に記載されます。
出生届は必要
日本人夫婦に海外で子どもが生まれた場合も、日本の戸籍に記載する必要があるため、出生届を出さなければなりません。ただし、届出期間については3箇月以内と、国内で出産した場合に比べて長くなっています(戸籍法49条)。
届出先は、その国の日本の大使館・公使館・領事館です。または、日本に帰国した際に、市区町村役場に届出をすることもできます。出生証明書を添付する必要がありますが、証明書が外国語で作成されている場合は、原文及び日本語訳文を提出しなければなりません。
国籍について
国籍の決め方は国によって異なります。大きく分けて、父母の双方または一方がその国の国籍を有している場合に子に国籍が付与される「血統主義」と、その国で生まれた子すべてに国籍が付与される「出生地主義」があります。
日本人夫婦の子どもでも、国籍について「出生地主義」をとっている国(アメリカ、ブラジルなど)で生まれた場合、子の出生の届出と一緒に国籍留保の届出をしないと、その子は生まれた時にさかのぼって日本の国籍を失ってしまいます。これは、日本の国籍法が二重国籍を認めていないためです(国籍法11条)。
国籍留保の届出は、出生届書の「その他」欄に「日本の国籍を留保する。」と記入して、署名押印をすることによって行うことができます。
出生届以外にも、健康保険の加入や児童手当支給申請、出産育児一時金の支給申請など、子どもが生まれた場合の手続きはたくさんあります。出産後は何かと慌ただしくなりますから、出産前にどのような手続きが必要かチェックし、必要な書類や提出先を確認しておきましょう。
参考コンテンツ:
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