弁護士コラム

改正民事執行法―不動産、給与債権に関する情報の取得

[投稿日] 2020年08月03日 [最終更新日] 2020年08月03日
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田中 友一郎 弁護士 天神南法律事務所

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前回は、権利の実現に実効性を持たすべく、改正民事執行法にて新設されました第三者からの情報取得手続のうち、預貯金債権に関する情報の取得についてお話ししました。

今回は、第三者からの情報取得制度のうち、不動産に関する情報と給与債権に関する情報についてお話しいたします。

 

不動産は一般に金額的価値が高いため、強制執行の対象とすることができれば、債権の回収の実効性はとても高いといえます。

もちろん、不動産には抵当権が設定されていることも少なくなく、この場合は強制執行の対象とすることが困難な場合もありますが、やはり強制執行の対象として不動産は重要となります。

 

また、給与債権は月額としてはさほど大きくないこともありますが、将来発生する分を含めて差し押さえを行うことが可能ですので、財産の乏しい債務者からの債権回収には重要となります。

特に、近年、養育費の支払率が非常に低いことが社会問題となっていますが、養育費を回収する方法として給与債権は非常に重要です。

ところが、転職により債務者の勤務先が変わった場合に、新たに債務者の勤務先を調査し、給与債権を特定することは困難を伴いました。

 

そこで、今回の改正では、不動産と給与債権に関する情報について第三者から取得する制度が新設されました。

 

不動産に関する情報を取得するためには、判決などの債務名義(今回の改正により債務名義の範囲が拡大されました)を有している債権者が、裁判所に申立を行います。

なお、不動産に関する情報を取得するには、債務名義は特に限定されていません。

 

申立を受けた裁判所は、登記所に対して、債務者が登記名義人となっている不動産を網羅した形で提供することを命じます。

 

これにより、債務者名義の不動産の存在が明らかになれば、不動産に対して強制執行をすることが可能となります。

 

給与債権に関する情報は、債務者の職業の内容を推知させるものであって、その私生活に密接に関連するものであることから、不当に知られることによる不利益の程度が小さくないこと、給与債権が差し押さえられると事実上解雇等の弊害が生じる危険性もないではないことなどから、給与債権に関する情報を取得することが可能な債務名義は、①養育費や婚姻費用等の扶養料の請求権、②人の生命もしくは身体の傷害による損害賠償請求権に限定されています。

 

申立を受けた裁判所は、市町村又は日本年金機構等の厚生年金の実施機関に対して、債務者の給与債権に関する情報(勤務先の情報等)を提供することを命じます。

 

これにより、債務者の勤務先が明らかになれば、給与の差し押さえをすることが可能となります(ただし、給与の差し押さえは、給与額の4分の1の金額まで(養育費や婚姻費用の場合は2分の1)、または、33万円を超える部分についての差し押さえとなります。)。

 

なお、前回ご紹介した預貯金債権については、財産開示手続を経ずに申立を行うことができますが、不動産に関する情報と給与債権に関する情報については、財産開示手続を経たうえで申立をする必要がありますので、ご注意ください。

田中 友一郎 弁護士

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相続 借金・債務整理 労働 企業法務
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