弁護士コラム

外れ馬券に関する判例の整理

[投稿日] 2018年02月11日 [最終更新日] 2018年02月11日
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西口 竜司 弁護士 神戸マリン綜合法律事務所

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2017年12月15日に、最高裁は、競馬の払戻金に対する、所得税額を算定する際、当たり馬券だけでなく、外れ馬券の購入費を必要経費として算入できる旨の判示をしました。これは、2015年の刑事裁判に続き2例目となりますが、必ず、外れ馬券の購入費が経費として控除できるかといわれればそうではありません。そこで、今回は2015年、2017年の外れ馬券事件の最高裁判決についてお話ししたいと思います。

 2015年、2017年の外れ馬券事件では、当たり馬券の払戻金が、「一時所得」(所得税法34条1項)になるか、雑所得(所得税法35条1項)になるかが争点になりました。

 なぜ、このように所得区分が争点になったかというと、一時所得の場合一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)の合計額を控除し、その残額から一時所得の特別控除額を控除した金額(所得税法34条2項)になるからです。

 

 これに対し、雑所得の場合、総収入金額から「必要経費」を控除して計算されることになります(所得税法35条2項)。

 そのため、当たり馬券の払戻金が、「一時所得」となった場合、当該払戻金は当たり馬券から得た利益であって、外れ馬券は、「その収入を得るために支出した金額」に当たらないことになり、外れ馬券は経費として控除できなくなるため課税所得金額が大きく異なることになります。

 一時所得とは、「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの」を言います(所得税法34条1項)。

 これに対し、「雑所得」とは、「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得」を言います(所得税法35条1項)。

 

 最高裁では、馬券の払戻金を得ることが偶発的なものであるから、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」の該当性が特に問題となりました。

 最高裁は「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」は、一時所得ではなく雑所得に区分されるところ,営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは,文理に照らし,行為の期間,回数,頻度その他の態様,利益発生の規模,期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当であるとしました。

 被告人が馬券を自動的に購入するソフトを使用して独自の条件設定と計算式に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ,一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するといえるなどの本件事実関係の下では、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」に該当するとして、雑所得に該当すると判断しました。

 そして、外れ馬券の必要経費該当性についは、外れ馬券を含む一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するのであるから,当たり馬券の購入代金の費用だけでなく,外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金の費用が当たり馬券の払戻金という収入に対応するということができるとして必要経費性を認めました。

 以上述べたように、馬券を自動的に購入するソフトを利用及び改良し、多額の利益を恒常的に得ていたことから、例外的に雑所得に該当すると述べたにすぎず、このような場合では無い限り、一時所得になるのが原則であると考えます。

 

 また、2017年の外れ馬券事件では、上記最高裁判例とは異なり、コンピューターの独自ソフトを利用した馬券の購入ではありませんでした。

 しかし、最高裁は、予想の確度の高低と予想が的中した際の配当率の大小の組合せにより定めた購入パターンに従って馬券を購入することとし偶然性の影響を減殺するために,年間を通じてほぼ全てのレースで馬券を購入することを目標として,年間を通じての収支で利益が得られるように工夫しながら,6年間にわたり,1節当たり数百万円から数千万円,1年当たり合計3億円から21億円程度となる多数の馬券を購入し続けたというのであるから、このような被上告人の馬券購入の期間,回数,頻度その他の態様に照らせば,被上告人の上記の一連の行為は,継続的行為といえるものと判断しました。

 また、6年間のいずれの年についても年間を通じての収支で利益を得ていた上,その金額も,少ない年で約1800万円,多い年では約2億円に及んでいたというのであるから,上記のような馬券購入の態様に加え,このような利益発生の規模,期間その他の状況等に鑑みると,被上告人は回収率が総体として100%を超えるように馬券を選別して購入し続けてきたといえるのであって,そのような被上告人の上記の一連の行為は,客観的にみて営利を目的とするものであったということができると判断し、一時所得ではなく、雑所得に該当すると判断しました。

 そして、外れ馬券の必要経費性については、一連の馬券の購入により利益を得るためには、外れ馬券の購入が不可避的であったとして、これを肯定しています。

 以上に述べたように、当たり馬券の払戻金は上記のような例外的な場合に認められるにすぎず、原則として一時所得に該当します。

 

 なお、雑所得に該当し、雑所得の金額に損失がでたとしても、給与所得等の他の所得類型の経費として控除することができない点には注意が必要ですね。

 

西口 竜司 弁護士

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