弁護士コラム

所得の帰属の問題

[投稿日] 2018年03月02日 [最終更新日] 2018年03月02日
 所得税法では、累進課税制度と個人単位課税が採用されているので、事業で得た所得を家族で分散できれば家族全体の税負担額を減らすことが可能です。

 そのため、親子や夫婦が共同事業を行っている場合には、事業の所得を親子や夫婦それぞれに帰属するものとして所得を分割できないかという形で、所得の帰属が問題となる場合があります。

 そこで、親子が相互に協力して一個の事業を営んでいる場合における所得の帰属者が誰であるかが問題となった、親子歯科医師事件(東京高裁平成3年6月6日判決)をご紹介したいと思います。

 

1.事案の概要

 歯科医であるXは、昭和35年から甲歯科医院を営んでいる事業者でした。Xの子であるAは歯科医師国家試験合格後、Xとともに同医院にて診療に従事しており、昭和57年3月にはA名義の個人事業の開業届出書が当時の所管税務署に提出されていました。

 Xは、Aとは共同の事業者であるとの前提で、昭和57年分及び58年分の所得税について、甲医院の総収入及び総費用をAと折半して、申告しました。

 しかし、税務署長Yは、Aが独立の事業者ではなくXの専従者であり、医院からの事業所得がすべてXに帰属するものとして上記各年分につき更正処分及び加算税賦課決定処分をしたところ、Xは上記処分の取消しを求めて訴えを提起しました。

 

2.争点

 所得税法12条は実質的所得課税の原則を定めるところ、親子が相互に協力して一個の事業を営んでいる場合、所得の帰属者が誰になるか。

 

3.判決の概要

 親子が相互に協力して 一個の事業を営んでいる場合における所得の帰属者が誰であるかは、その収入が何人の勤労によるものであるかではなく、何人の収入に帰したかで判断されるべき問題であって、ある事業による収入は、その経営主体であるものに帰したものと解すべきとし、従来父親が単独で経営していた事業に新たにその子が加わった場合においては、特段の事情のない限り、父親が経営主体で子は単なる従業員としてその支配のもとに入ったものと解するのが相当である。

 本件では、Aが開業にあたり必要とした医療器具などの費用は、X所有土地建物に根抵当権を設定した上で、X名義で借入れ、X名義の預金口座から返済されており、医療器具などの売買契約等における当事者もX名義でなされていた。医院の経理でも、AとXの収支が区分されていなかった。

 また、甲医院には、A固有の患者が来院するようにもなったが、Xの長年の医師としての経験に対する信用力のもとで経営されており、医院の経営に支配力を有しているのはXである。

 以上からすると、Xが甲医院の経営主体であり、その経営による収入はXに帰属するというべきである。

 

4.まとめ

 親子関係の事業の場合は、どうしても子が親の経営に後から参加することが多いため,親子が同等の事業主と認められることは少ないです。

 そのため、共同事業を経営する場合、本件のような個人事業の形態ではなく、税法上の取扱が比較的明確化されている民法上の組合を用いる手段や、法人化する手段も検討する必要があります。

 上述のとおり、所得の帰属の問題は、課税関係を左右するため、事業形態の選択に当たってはその検討も必須といえます。

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西口 竜司 弁護士

取扱分野
交通事故 不動産・建築 相続

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