弁護士コラム

GPS捜査

[投稿日] 2018年07月13日 [最終更新日] 2018年07月13日

千葉地裁で,令状有りのGPS捜査の裁判が行われており,話題になっています。

 

 

GPSというのは,人工衛星を利用して位置を測定するシステムです。カーナビを初め,スマホアプリでもよく利用されています。

 

 

GPS捜査というのは,GPSを利用して,捜査対象者が使う車などに端末を取り付けて,その車の位置や移動経路などを測定する捜査です。

 

 

GPS捜査については,昨年3月15日に,最高裁が「令状なしのGPS捜査は違法」という初の判断を下しました。

今,話題になっている千葉地裁の裁判というのは,「令状ありのGPS捜査」が適法かどうかが問題となっています。

 

 

この話をするためには,「令状とは何か,なぜ令状が必要か」についてお話しする必要があります。

 

 

令状というのは,逮捕令状や捜索差押令状などのことです。

 

 

刑事ドラマでは,令状を持たずに人の家に入って,あとで上司に叱られる刑事がいますね。

警察のような国家権力でも令状なしに個人の私的領域(プライバシー)に侵入することは許されません。

 

 

なぜ,令状なしに個人の私的領域に侵入してはいけないのでしょうか。それは,憲法で規定されているからです。

憲法とは,国家権力を縛るためのものでしたね。

憲法は国家権力が個人の私的領域にむやみに侵入することを禁止しているのです(憲法35条)。

 

 

そして,具体的な令状の種類などは刑事訴訟法に規定されています。

 

 

最高裁の話に戻します。

最高裁で問題になったのは,GPS捜査は強制捜査か任意捜査かという点です。

任意捜査というのは,一例を挙げれば,尾行とか張り込みです。

 

 

実は,任意捜査には令状が要りません。

 

 

さきほど,憲法の話で,「国家権力がむやみに個人の私的領域に侵入してはいけない」という話をしましたが,尾行は,外を歩いたり外で車を運転したりする行動を付ける行為ですね。

 

 

外を歩いたり,車に乗って外出する場合,他人に顔を見られたり,車のナンバーを見られたりします。

それを承知の上で,人は外出しています。

 

 

ですから,外での行動は基本的に「私的領域ではない」と考えられていて,任意捜査であり令状は要らないということになっています。

 

 

では,GPS捜査は強制捜査なのか任意捜査なのか。

車での行動を追跡するものなので任意捜査ではないか,とも思われます。

実際,警察側は「尾行や張り込みと一緒で,任意捜査である。」という主張をしていました。

 

 

これに対して,最高裁は,GPS捜査は「公道だけでなく,個人の行動を継続的,網羅的に把握することができる」,「合理的に推認される個人の意思に反して私的領域に侵入する捜査手法である」と述べて,強制捜査であると判断しました。

 

 

したがって,強制捜査ですから令状が必要ということになります。

 

 

さらに,最高裁は,もう一歩踏み込んで,現在の刑事訴訟法で定められている種類の令状でGPS捜査を行うことには疑問がある,とまで述べています。

 

 

今ある種類の令状ではGPS捜査を行うことは困難であり,新たな立法が必要だとの考えを述べたのです。

 

 

今回の千葉地裁の裁判は,その最高裁判決後の後で,「令状がある」GPS捜査がどう判断されるか,という点で注目されているのです。

 

 

判決は,今年の8月30日の予定です。

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木野 達夫 弁護士

取扱分野
相続 交通事故 離婚・男女

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