帰化

帰化
帰化は、ある国家の国籍を有しない外国人が、国籍の取得を申請し、その国家がその外国人に対して新たに国籍を認めることを指します。日本では、帰化は国籍法及び他の関連法令で定められています。ここでは、日本における帰化制度の概要について解説します。
帰化の種類と申請手続国籍法では、帰化を許可する権限は法務大臣にあり、普通帰化(5条)、特別帰化(簡易帰化)(6~8条)、大帰化(9条)の3種類(この区分名はいずれも通称)が認められています。帰化を望む者は各地の法務局へ帰化の申請手続を行わなければなりません。
許可または不許可の結果が出るまでの期間は、個々の場合によりますが、おおむね半年から1年程度を要するといわれています。帰化申請の内容が認められた場合は、法務大臣による許可行為として官報に日本国内の現住所・帰化前の氏名・生年月日(元号表記)が告示掲載され、告示の日からその効力を生じることとなります。
告示における氏名表記に外国文字(アルファベット・ハングル等)は用いられず、すべて日本語(漢字・平仮名・片仮名)に置き換えて表記され、帰化前の氏名が合わせて記載されます。
なお、国籍法には、届出による国籍の取得の規定(3条:認知された子の国籍取得、17条:国籍留保届の未提出により国籍を喪失した者の再取得)があり、この場合、要件を満たしていれば法務大臣の許可によらず届出のみによって国籍を取得することができます。これは「(届出による)国籍取得」と呼ばれ、「帰化」とは異なります。
帰化申請手続きは弁護士、司法書士、行政書士が業として扱えるので、そうした専門家に依頼するのが通例です。もちろん、本人申請も可能です。
帰化申請書類提出するもの
- 帰化申請書、帰化動機書、宣誓書、履歴書
- 生計概要を説明する書類、親族概要を説明する書類
- 事業主の場合、事業概要を説明する書類・財務諸表・確定申告書
- 会社役員の場合、法人登記簿謄本(登記事項証明書)
- 社員の場合、在職を証明する書類・給与証明書
- 納税証明書
- 自宅・勤務先付近の略図
- 国籍証明書、もしくは国籍を有しないか帰化により現在の国籍を失うことを証明する書類
- 外国人登録原票記載事項証明書・自動車運転免許証
- その他、法務局から追加提出指示を受けた書類
呈示するもの
- 卒業証明書
- 技能証明・有資格証明書
- 事業主の場合、事業における許認可証明書
- 預貯金残高証明・有価証券証明・不動産登記簿謄本(登記事項証明書)
- その他、法務局から呈示指示を受けた書類
なお、これらの書類は例示です。実際には添付書類の少ない場合でも、副本を合わせて申請書類は相当の数量になるのが通常です。事業所得者の場合や一家族で複数の帰化申請が必要な場合、親族状況の確認・確定が容易でない場合などは、さらに大部のものとなります。
帰化申請における添付書類は、国籍・所得の内容・出生地・家族の状況・住居の状態などによってひとりひとり個別に違ってきます。また、国籍証明書などは帰化できることがある程度定まってから取らないと大変な事態となるので注意しなければなりません。
帰化の許可率:申請はどれくらい認められてきたのか1996年(平成8年)以降の年ごとの帰化の申請者数は、約1万7500人から約9900人の間で推移し、2007年(平成19年)からは平均年1200人の減少がみられましたが、2013年(平成25年)からは増加に転じました。申請者のうち、不許可者数は約90人から603人の間で推移しており、全体として人数も割合も上昇傾向にあると思われます。許可者の内訳としては、近年、過半数が韓国・朝鮮籍の者で占められており、さらに3割程度が中国籍の者で占められています。
年度 | 申請者数 | 許可者数 | 不許可者数 | 不許可率 | |||
合計 | 韓国・朝鮮 | 中国 | その他 | ||||
平成10年 | 17,486 | 14,779 | 9,561 | 4,637 | 581 | 108 | 0.62% |
平成15年 | 15,666 | 17,633 | 11,778 | 4,722 | 1,133 | 150 | 0.96% |
平成20年 | 15,440 | 13,218 | 7,412 | 4,322 | 1,484 | 269 | 1.74% |
平成21年 | 14,878 | 14,785 | 7,637 | 5,392 | 1,756 | 202 | 1.36% |
平成22年 | 13,391 | 13,072 | 6,668 | 4,816 | 1,588 | 234 | 1.75% |
平成23年 | 11,008 | 10,359 | 5,656 | 3,259 | 1,444 | 279 | 2.53% |
平成24年 | 9,940 | 10,622 | 5,581 | 3,598 | 1,443 | 457 | 4.60% |
平成25年 | 10,119 | 8,646 | 4,331 | 2,845 | 1,470 | 332 | 3.28% |
平成26年 | 11,377 | 9,277 | 4,744 | 3,069 | 1,473 | 509 | 4.47% |
平成27年 | 12,442 | 9,469 | 5,247 | 2,813 | 1,409 | 603 | 4.85% |
普通帰化とは、次の要件を満たす外国人に対して許可される帰化の通称で、国籍法5条において定められています。婚姻等による日本人とのつながりがない外国人の場合が該当します。
- 引き続き5年以上日本に住所を有すること。
- 20歳以上で、本国法(帰化前の母国の法令)によって行為能力を有すること。
- 素行が善良であること。
- 自己又は生計を一にする配偶者、その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること。
- 国籍を有さず、または日本の国籍取得によって元の国籍を失うべきこと。
- 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企てたり、主張したり又は主張することを企てたり、そのような主張をする政党などの団体を結成したり加入したりした経験がないこと。
なお、これらの要件とは別に、法務大臣は、外国人がその意思にかかわらずその国籍を失うことができない場合において、日本国民との親族関係又は境遇につき特別の事情があると認めるときは、上に掲げた要件を備えなくても、帰化を許可することができる、と規定されています(5条2項)。
特別帰化(簡易帰化)とは特別帰化(簡易帰化)とは、婚姻等により一定の要件(日本人とのつながり)を満たす外国人などに対して許可される帰化の通称で、国籍法6条、7条、8条に定められています。
6条の帰化
現に日本に住所を有する外国人で、以下に該当する者には、5条の要件を備えなくても、法務大臣は、帰化を許可することができます。
- 日本国民であった者の子(養子を除く)で引き続き3年以上日本に住所または居所を有する者。
- 日本で生まれ、引き続き3年以上日本に住所もしくは居所を有し、またはその父か母(養父母を除く)が日本で生まれた者。
- 引き続き10年以上日本に居所を有する者。
7条の帰化
日本国民の配偶者である外国人で引き続き3年以上日本に住所または居所を有し、かつ、現に日本に住所を有する者である場合は、その者が普通帰化(5条)における要件1.2.を備えていなくても、法務大臣は、帰化を許可することができます。また、日本国民の配偶者である外国人で婚姻の日から3年を経過し、かつ、引き続き1年以上日本に住所を有する者も、同様とされます。
8条の帰化
次のうちどれか一つに該当する外国人については、その者が普通帰化の場合の要件1.2.4.を備えないときでも、法務大臣は、帰化を許可することができます。
- 日本国民の子(養子を除く)で日本に住所を有する者。
- 日本国民の養子で、引き続き1年以上日本に住所を有し、かつ、養子縁組の時に本国法により未成年であった者。
- 日本の国籍を失った者(日本に帰化した後日本の国籍を失った者を除く)で日本に住所を有する者。
- 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き3年以上日本に住所を有する者。
大帰化とは、普通帰化や特別帰化の要件を満たさない(あるいは満たすが本人が積極的に帰化を申し出ない)が、日本に特別の功労のある外国人に対して国会の承認を得て行う帰化の通称です。他の帰化のように本人の意思による自発的な帰化でなく、日本が国家として一方的に許可するものであるため、本来の国籍を離脱する義務は課されません。いわば「法的効力を持つ名誉市民権」で、国籍法9条に規定されていますが、実際に認められた例は、2016年10月1日現在で一度もないとされます。
参考コンテンツ:
2重国籍、国籍はいつまでに選択するの?
二重国籍問題ってどんな問題?
帰化を得意としている弁護士
小原 望 弁護士 大阪府
小原・古川法律特許事務所岡 直幸 弁護士 福岡県
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日本国籍を変更することはできる?