内容証明

内容証明
飲食店を経営するAさんは、次に来たときに払うと言うBさんを信じて、飲食代金をツケにしていたのですが、その後Bさんは現れません。そのまま1年弱くらい経ってしまいました。もうすぐ短期消滅時効で消滅時効が完成してしまいます。このような場合に内容証明郵便で、Bさんに返済を催促するのが有用です。
内容証明郵便とは、どういう内容の文書を誰から誰に対して出したのかという内容の存在を、日本郵便株式会社が証明する制度のことをいいます。
Aさんは、このような内容証明郵便を利用することによって、将来裁判になった場合に、Bさんに対して、平成○年○月○日付で、飲食代金を支払うように催促したこと(民法上は催告といいます)を立証することができます。
また、内容証明郵便に配達証明のオプションを付けることで、その郵便がBさんに平成○年×月×日に配達されたことを立証することができます。これによって、まもなく時効となることを暫定的に止めることができ、配達日から6か月以内に裁判(請求)をすれば時効を止めることができるのです。
有用性上で説明をしましたように、内容証明郵便が裁判での立証方法として有用です。ただ、内容証明郵便によって、郵便の内容の真実性までを日本郵便株式会社が証明するものでないことに注意をしてください。日本郵便株式会社にとっては、本当にAさんがBさんに対して飲食代金という売掛債権を有しているかは分からないからです。
内容証明郵便の有用性はそればかりではありません。Bさんに返済に向けた心理的圧力をかけることができるという有用性があります。特に、弁護士に依頼をして弁護士から内容証明郵便を出してもらうとなおさらです。依頼を受けた弁護士は、通常は、Aさんから委任を受けたこと、飲食代の売掛金が未払なのでこの書面が到達した日から1週間以内に弁済してもらいたいこと、その期間内に支払がない場合には訴訟提起とすることなどを内容証明郵便に記載します。そのような請求が口頭ではなく内容証明郵便で来たこと、しかも弁護士から来たことで、すんなりと支払ってくれるというケースもかなり多いのです。
内容証明郵便の作成内容証明郵便は、自分の控え、郵便局の保管用、相手方配達用の3部を作成する必要があります。大き目の文房具さんなどでは日本法令が出している用紙を扱っていますので、3枚複写式となっているその用紙を利用してもよいでしょう。
パソコンで作成する場合には、現在もっとも利用されている横書き(縦書きもあります)で説明をしますと、1ページは1行26字の20行で作成します(13字×40行もあります)。ただ、句読点も1字と数えることに注意をしてください。また、下部に余白ができるようにしてください。これは、下部余白に「この郵便物は平成○年○月○日第×××号書留内容証明郵便物として差し出したことを証明します。㊞」という証明文言が入るからです。作成したら3部をプリントアウトしましょう。
差出
郵便局には、作成した3部の内容証明郵便、差し出す人の住所と氏名、受取人(宛名)の住所と氏名を記載した封筒、念のため内容証明郵便に押印した印鑑を持参することになります。
内容証明郵便の料金は、書留郵便料金に430円を加えた金額で、内容証明郵便が2枚以上となる場合にはさらに1枚について260円がかかります。料金を計算して封筒に切手を貼ってしまう人もいますが、貼らずに持参してください。もちろん、切手を用意せずに、窓口で支払うことも可能です。
ところで、先のAさんの事例でいいますと、消滅時効を暫定的にでも止める必要がありますが、裁判になったような場合には、いつBさんがその内容証明郵便を受け取ったのかが最も重要なこととなります。そこで、いつBさんが受領したのかを日本郵便株式会社が証明してくれるのが配達証明です。ですから、必ず配達証明付内容証明郵便にしなければなりません。これは、Bさんが受け取ったとの事実も証明することになります。配達証明の加算料金は310円です。
前に説明をしましたように、内容証明を送る際、郵便局が差出日についての証明文言が入った1部を戻してくれます。紛失した場合には再発行も可能ですが、大事に保管してください。
配達証明前に配達証明について説明をしました。内容証明郵便を出す場合には、差出人の意思表示が確実に相手方に届いたこと、いつ届いたのかを証明してもらうことを最大の目的としています。その意味で、配達証明付にするのが必須です。
この配達証明は、内容証明郵便を差し出した日からしばらくして、郵便局からの葉書でなされます。そこには、平成○年○月○日にBさんに配達したことを証明しますという旨が記載されています。これも大事に保管しておかなければなりません。
では、Aさんが差し出した内容証明郵便がBさんに届かない場合にはどうなるのでしょうか。届かないというのは、二つのケースがあります。一つは、Bさんが日中は仕事で不在にしており、配達員が不在連絡届を郵便受けに入れておいたのですが、保管期間経過後もBさんが受け取りにこなかったというケースです。この場合、残念ながら、内容証明の効力、どのような内容の郵便をBさんが受け取ったのか、受け取ったのはいつなのかという効力は発生しないことになります(下級審では保管期間満了で送達としたものがありますが、特異な判例でしょう)。
もう一つは、Bさんが受け取りを拒否した場合です。Bさんが受け取りを拒否すると、「名宛人が受け取りを拒否しました」と書かれた付箋が付けられて、Aさんに戻ってきます。これは大事に保管しなければなりません。Bさんに対する到達の効果は、現実にBさんが内容証明郵便に記載された内容を認識した時ではなく、通知のあったことを知り得る状態になればよいのです。ですから、受取を拒絶したとしても、Bさんはその通知を知ることができる状態となっていて、法的にはBさんに到達したとされるからです。つまり、受領拒絶の付箋が付いた内容証明郵便は、配達証明と同じ効力があるのです。
受取人の対応内容証明郵便を受け取ったBさんはこれにいかに対応したらよいのでしょうか。内容証明郵便に記載された内容が真実であるかどうかを問わず、(1)無視する・(2)返事を出すという対応が考えられます。
内容が真実である場合には、どうでもいいと開き直って無視するという選択もないではないと思いますが、やはり頭金を支払って、支払猶予をお願いするとか、分割払いのお願いをするとかした方が、将来裁判になった際には裁判官に対する印象がよいのではないかと思われます。
内容が真実でない場合には返事を出すべきでしょう。きちんと自分の主張を書き、Aさんの認識している事実が正しくないことを指摘しましょう。もちろん、だからといって、裁判になった際に、それだけでBさんの主張が真実であると認定されるわけではありません。しかし、内容が真実でないAさんの主張に対して何も反論をしなかったのは、反論すべき内容がないからではないかと裁判官に思われてしまうこともなきにしもあらずですから、返事を出すべきだと思います。
内容証明郵便は、郵便局に持ち込んで発送してもらいますが、すべての郵便局が内容証明郵便を取り扱っているわけではありません。ですから、差し出そうとする郵便局に内容証明郵便を取り扱っているかの確認をしておいた方がよいでしょう。
参考コンテンツ:
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