社長逮捕で株価急落!責任を問うことはできる?

Legalus編集部さん 2015年07月25日

 私が株式を保有している会社の社長が逮捕されてしまいました。なけなしのお金で買った株式の株価は急落し、かなりの損失が出てしまいました。この損害について、社長の個人資産や会社の資産などで払っていただくことはできるのでしょうか?
 「株主代表訴訟」という言葉を聞いたことがあるのですが、どのような制度でしょうか?



(30代前半:女性)

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Legalus編集部

     株価は様々な要因で上下しますから、損失が出ることもあり得ますが、株価下落の原因が社長の違法行為による場合に、その社長や会社に責任を問うことはできるのでしょうか。この問題は、実は「会社とは何か」という問題と密接にかかわっており、かなり難しい問題ですが、できるだけわかりやすく説明しようと思います。


     まず、株式会社の仕組みを説明しましょう。株式会社とは、多くの人から出資を募り、事業を行う会社です。出資をした人はその会社の株主となり、事業を行って得られた利益の配分(配当)を受けることができます。そして、株主としての権利は自由に譲渡することができるのが原則です。証券市場で売買されている株式がその典型です。

     通常、あまり意識されることはありませんが、株主は出資額の範囲で会社債権者に責任を負っています。したがって、会社が倒産した場合には、まず会社財産の中から会社債権者に支払い、さらに余りがあったときに限って株主に分配されます。上でも述べたように株式は自由に譲渡できますから、自分が倒産のリスクを負いたくない場合には、他の人に株式を売ってしまえばよいわけです。


     このような前提からすれば、株価が下落したことで損害を受けたとしても、それは原則として自己責任ということになります。ただ、社長などの経営者(取締役)の違法な行為によって株価が下落した場合には、別に考える余地があるといえます。


     この点について、食中毒事件を起こして解散に追い込まれた食品会社の株主が、安全管理を怠った取締役に対して株価下落の責任を追及した事件の判決で、東京高裁は株主の請求を認めませんでした(東京高裁平成17年1月18日判決)。
     判決はその理由として、「株式が証券取引所に上場されるなどして公開され多数の株主が市場で株式を売買している公開会社においては、株主は、特段の事情のない限り、いつでも自由に市場において株式を処分することができるので、取締役の過失により株式会社の業績が悪化して株価が下落しても、適時に売却することにより損失を回避ないし限定することができるから、株主に個別に取締役に対する損害賠償請求を認める必要も少ない。」としています。


     このように、株価の下落に対して、個別に取締役に対する損害賠償を請求することは難しいといえますが、会社そのものに損害が生じた場合には、株主は会社に代わって取締役の責任を追及し、その損害を会社に賠償するように求めることができます。そのための制度が「株主代表訴訟」です。


     株主代表訴訟は、6か月前から継続して株式を保有している株主が提起することができます。請求できる額は、取締役が会社に与えた損害額ですが、定款によってその範囲が限定されている場合もあります(会社法423条~427条)。ただ、この場合でも、会社に対して損害が賠償されるので、株主代表訴訟を提起した株主本人やそれ以外の株主に対して直接損害が賠償されるわけではありません。株主は会社が損害を回復したことによって、間接的に株価の上昇の恩恵を受けるにすぎないわけです。


     以上は、会社法上の議論ですが、社長の逮捕容疑が有価証券報告書等虚偽記載の場合には、会社や当時の役員に対して損害賠償を請求できる可能性があります。金融商品取引法21条の2は、有価証券報告書等に虚偽の記載をした会社は、記載事実が虚偽であることを知らずに有価証券を取得した者に対して、虚偽記載等により生じた損害を賠償する責任を負うと規定しています(同条1項)。ただし、当該書類に虚偽記載等があることを知った時または相当な注意をもって知ることができる時から2年間、あるいは当該書類が提出された時から5年間で損害賠償請求ができなくなるとされているため(金融商品取引法21条の3)、仮に虚偽記載等が5年以上前になされていた場合には、請求できなくなります。なお、同法22条は、提出時の役員(取締役、監査役等)や監査法人等にも賠償責任を負わせています。

2015年07月25日

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