読者からの意見に応えて

Legalus編集部さん 2015年07月22日

読者からのご意見


 「なっとく!法律相談 第273回」の、回答部分で、「・・・なお、PTSD(犯罪等による心的外傷後ストレス障害)を理由に訴えを起こすことは、症状や事件との因果関係の証明の点で、原告にとって非常に難しい訴訟であることを付け加えます。」の部分を追加したのは、極めて蛇足であったと考えられます。なぜなら、悪用される可能性があるからです。 原告(被害者)にとって難しい訴訟であるなら、仮に被害に遭っても、その救済が難しいということです。


 本当に法律に携わる人間なら、悪用の可能性まで推測することは、容易なことだと思います。推敲する時点で、削除する内容だったと思われますが、いかがでしょうか。



(Sさん)

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Legalus編集部

    ご意見への回答



     先日配信されたメールマガジンについて、読者からご意見をいただきました。同じような感想をお持ちの読者がおられると思いますので、相談フォームに寄せられた相談ではありませんが、取り上げたいと思います。



     まず、読者の法律相談に対し、私共は第一に、できる限り相談者の立場に立って、言うなれば依頼を受けた弁護士の立場で、お答えすることを心がけています。


     相談フォームに書いていただいた情報からは、事件の要点が把握できないこともあります。有効なアドバイスをするために必須の情報が欠けていることも珍しくありません。しかし、回答すべき相談、同じような悩みを持つ方が多いと推測される相談として取り上げた以上は、読者の方に具体的解決を提供できるレベルのものを提供したいと考えているのです。


     これに対し、「依頼者」サイドに立ったアドバイスではなく、あくまで「解説」的回答を希望される読者もいらっしゃると思います。そのような立場で回答している法律サイトも多いと思います。そのような立場を望む方からは、私共の意見は、時として偏っているように感じられるかもしれません。


     しかし、私共は、例えば、思わぬトラブルに巻き込まれ夜も寝られないほど不安になっておられる方や、法律がいつでも味方になってくれると思い込んでおられる方の、ある意味での「幻想」を取り去ることが第一だと考えているのです。


     トラブルに直面して必要以上に不安になることはありません。しかし、法律の助力を盲目的に期待するのも、賢明な態度ではありません。法律は、判例実務は、どこまでなら主張を認め、救済してくれるか。また、主張を通したい者は、そのために何を証明しなければならないのか。それをできるだけ平易な言葉で分かりやすく相談者に提供することが、一番効果的な、悩みの解決方法だと信じるからです。



    今回ご意見をいただくきっかけになった相談を例にとりましょう。


     PTSDを理由とする訴えが刑事上も民事上も認められにくいのは、実務の常識であり、厳しい現実です。誤解していただきたくないのですが、私共は、心的傷害に厳しい判例の態度が正しいと申し上げているのではありません。これほどまでに社会が複雑化すると、人が他者から受けるダメージの形は従来の枠に収まりません。裁判所はその現状を把握し、被害者の主張を判決に反映する努力をすべきといえます。


     しかし、現実の裁判例では、10歳の小学生が大人に頭髪を掴んで地面に引き倒され、顔を踏みつけられ、殴る蹴るの暴行を加えられた事件で、被害者が腹痛と頭痛に襲われ、放心状態となって3日間学校を休み、1ヶ月にわたって一人で外出ができず、眠れなくなり、食欲が減退したという症状をも、PTSDとは認めませんでした。被害者に与えられた暴行の程度は、いずれも生死の危険や重大な身体的障害にさらされるような激しいものではなく、そもそも加害者の「暴行がPTSDの原因となるような出来事に該当するかどうかの点において」すら疑問である旨、判示しています(福岡高判平成12年5月9日)。



     これに比べれば、今回の相談に登場している女性の慰謝料請求の主張が、刑事民事の別はあっても、いかに認められにくいものであるかお分かりでしょう。それでも女性が慰謝料請求したいと望むなら、彼女は(おそらく彼女の予想をはるかに超えた)証明の困難と、更なる不愉快に直面することになるでしょう。女性はプライドを傷つけられ、当然慰謝料が取れるはずだと考えたようです。こんな不愉快な思いをした私を、法律が救ってくれないわけはないと。しかし、彼女が法律を味方に慰謝料を取るつもりなら、現在の実務上は無理ですよ、ということなのです。



     実務も、理由なく被害者の主張を認めないのではありません。目に見えない「傷」を理由として被害者の主張を認めるということは、同じ理由で加害者の財産や自由を奪うことでもあります。「心が傷つけられた」というような、人により基準が異なる理由で安易に損害賠償請求が認められるとすると、いつ他人から訴えられるか予測がつかなくなってしまいます。実務が慎重な態度を取るにも理由があるのです。



     それでも彼女が自らの権利を主張しようと思うなら、裁判所の理論を越える強力な証拠を提出しなければならないのです。私共は、その困難を知ることが、彼女にとってまず重要であると考えます。それを知らなければ、やり方によっては彼女の方が、恐喝や強要罪で訴えられかねないのです。法律上実体のない自分の権利を盲目的に信じることは危険です。



     このような事実が知られると、それを悪用する者が出てくるのではないか、とのご心配があるようです。しかし、脱法行為に類するような性質の事実でないかぎり、当事者にとって、現実を知る利益の方が優先すると考えます。法運用の現実を知らなければ、当事者は次に取るべき行動を決することもできないからです。

2015年07月22日

民事裁判に強い弁護士

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