弁護士コラム

改正相続法の基礎知識

[投稿日] 2020年10月05日 [最終更新日] 2020年10月05日
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北川 靖之 弁護士 キタガワ法律事務所

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(相続法の大改正)

 相続法は、民法の一部(第5編)ですが昭和55年以来、大きな改正はなされてきませんでした。

しかし、昭和から平成の時代を経て、日本人の平均寿命は延び、急速に高齢化、核家族化が進みました。こうした社会情勢の変化に対応するため、平成30年7月、相続法が改正されるに至ったのです。平成31年から32年にかけて、順次、施行されていきます。

以下では、自宅に関する配偶者の権利①②③、遺産分割前の財産の処分①②、遺留分減殺請求権の性質、相続による物権変動の対抗力、特別寄与制度の順に説明していきます。

(自宅に関する配偶者の権利①)

夫が、妻子を残して死亡した場合、遺産の分割は、妻と子供たちの協議によって決まります。自宅を妻が取得するという協議がまとまれば、何の問題もありません。

しかし、協議がまとまらない場合、不動産はノコギリで切って分けられませんので、最終的には売却して、代金を分けることになります。この場合、妻は自宅に住み続けることができません。

特に、自宅の所有権の価値が妻の相続分を超える場合などには、協議が難航します。そこで、今回の改正により、配偶者居住権という権利が新設されました。裁判所は、配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めた場合に、配偶者に居住権を付与することが可能となりました。

 配偶者居住権は、所有権そのものではないので、その価値が妻の相続分を超えてしまうことも比較的少なくなります。これにより、遺産分割協議がまとまりやすくなると期待されているのです。

(自宅に関する配偶者の権利②)

 配偶者居住権としては、上述の配偶者居住権のほか、遺産分割が確定するまで認められる「短期」配偶者居住権も新設されています。

(自宅に関する配偶者の権利③)

 夫が、自宅を妻に贈与した後に死亡した場合、自宅は妻の「特別受益」とされ、遺産の先渡しを受けたものとして取り扱われます。

その結果、自宅の価値が相続分を超える場合、妻は、その他の財産を相続することができません。立派な家に住めても、三食、卵かけご飯を食べる羽目になるかもしれないのです。

 こんな悲惨な事態を避けるため、夫は「特別受益」について特別の意思表示をしておくことができます。しかし、その立証は、実務上、極めて困難でした。

今回の改正では、意思表示の推定規定が設けられました。これにより、特段の立証がなくても、意思表示があったものと扱われることになりました。

(遺産分割前の財産の処分①)

 従前の制度では、預金は遺産分割の対象財産に含まれることを理由として、法定相続人による単独での払い戻しができませんでした。

 新制度では、一金融機関あたり150万円を限度として、法定相続分の三分の一まで、単独での払い戻しが可能となります。

(遺産分割前の財産処分②)

 父の死亡直後に、父と同居していた長男が、多額の預貯金を引き出してしまう場合があります。

意外かもしれませんが、引き出された預金は遺産分割の対象になりません。他の相続人は、法定相続分に応じて、長男に金銭を請求することになっていました。

長男が特別受益を得ていた場合でも、それは考慮されません。特別受益は、あくまで遺産分割において考慮されるものだからです。

 そこで、新制度では、長男以外の法定相続人全員の同意があれば、引き出された預金を遺産分割の対象とすることができるようになりました。

(遺留分減殺請求権の性質の変更)

 従前、遺留分減殺請求権が行使された場合、生前贈与や遺贈の効果自体が取り消され、贈与等の目的物は遺産分割の対象となっていました。

 例えば、事業用の不動産が生前贈与されていた場合、遺産分割がまとまらないと、最終的には、それを売却することになりかねません。十分な預貯金があるのに、事業用不動産が競売にかけられ、事業を継続できなくなるという事態もあり得るのです。

 今回の改正で、遺留分減殺請求権が行使されても、生前贈与や遺贈自体の効果は維持され、遺留分は金銭で精算されることが明記されました。

(相続による物権変動の対抗力)

 相続させる旨の遺言等により承継された財産についても、登記等の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができなくなりました。 

(特別寄与制度)

 長男が父と父名義の自宅に同居し、長男の妻が父の介護に尽力してきたとします。長男や長男の子が父の財産を相続すれば、問題は顕在化しません。

しかし、長男に子がなく、長男が父より先に亡くなってしまった場合は問題です。妻は義父の遺産を全く相続できないので、父名義の自宅から無一文で追い出され、いきなりホームレス化してしまうこともあり得るのです。

 相続法改正により、この妻のような人には、相続人(次男や三男)に対する金銭的請求が認められることになりました。

(自筆証書遺言方式の緩和)

 紙幅の都合で詳細は割愛しますが、自筆証書遺言の方式についての規定が緩和されています。

(最後に)

 改正相続法を理解するためには、前提となる法律知識が不可欠です。専門家への相談はお早めに。

北川 靖之 弁護士

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離婚・男女 借金・債務整理 消費者問題 相続 不動産・建築
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