弁護士コラム

労働災害の基礎知識

[投稿日] 2020年10月20日 [最終更新日] 2020年10月20日
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北川 靖之 弁護士 キタガワ法律事務所

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(労災とは?)

労災とは、労働災害のことで、具体的には通勤・業務中に発生したケガや病気のことをいいます。何度か耳にしたことがある方も多いでしょう。労働者は、労災にあった場合、労働災害保険(労災保険)から、一定の補償を受けることができます。

(労災保険とは?)

 労災保険とは、労災が起きた場合に、労働者への補償を行うための保険制度です。各事業所は、労働者を一人でも雇用していれば、労災保険に加入する義務があります。

(労働保険が給付されるためには?)

 労働保険が給付されるためには、業務が原因となってケガや病気が発生したといえることが必要です(業務起因性)。 プレス機を使用しているときに、プレス機に指を挟まれて切断に至ったような場合には、業務起因性が認められると思われます。 通勤中の交通事故なども、業務起因性が肯定されます。もっとも、寄り道した場合に「通勤中」といえるかどうかは、別途問題となります。

(労災保険の給付内容)

 労災として認定された場合、以下の給付が受けられます。

・治療費

・休業期間中の給与

・重症治療への年金

・介護費用

・後遺症に対する年金または一時金

・遺族年金または特別支給金

・葬儀費用

・重症者の子供の学費

 これらの給付は、治療費を除くと、上限額が定められています。例えば、休業期間中の給与は、ボーナス等の特別給与を除いた分の8割しか支給されません。 また、これらの給付には、精神的損害の補償が含まれていません。労災保険からの給付は、労災による被害の全てをカバーするわけではないのです。

(労災保険の特徴)

 労災保険でカバーされない損害については、事業者自身が支払う義務があります。もっとも、労働者から事業者への請求は、労災保険の申請と比べると、いくつかのハードルがあります。

 まず、事業者に損害賠償請求をするためには、事業者に過失があることが要件となります。一方、労災保険の給付は、事業者に過失がなくても請求できます(無過失責任)。 同様に、労働者側に過失があった場合、事業者は損害賠償義務の一部を免れます(過失相殺)。一方、労災保険の給付においては、労働者側に過失があっても、給付は減額されません。

 要するに、労災保険の給付においては、労働者、事業者、いずれの過失も問題とされないわけです。実は、自動車の自賠責保険においても、似たような制度設計がなされています。いずれも被害者保護のための強制保険であることによる特徴といえるでしょう。 

(雇用者への損害賠償請求)

 前述のとおり、労災保険からの給付は、労災による被害の全てをカバーするわけではありません。したがって、損害の全てについて弁償を受けるためには、事業者の過失を立証して、事業者自身に請求する必要があります。

 しかし、たとえば通勤中の交通事故などの場合に、雇用者の過失を認めることは極めて困難でしょう。では、プレス機の事故の場合はどうでしょうか。実は、使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとされています。このような使用者の義務を、安全配慮義務といいます。使用者が、プレス機のメンテナンスを怠っていたような場合には、安全配慮義務が認められると考えられます。

 また、使用者は、労働安全衛生法上、労働者に業務の危険性等を認識させるため、就業時や作業内容変更時に、安全衛生教育を実施する義務があります。こういった労働安全衛生法上の義務は、安全配慮義務と多くの場面で重なります。したがって、使用者が、安全衛生教育を実施する義務を履行していない場合には、たとえ従業員の操作ミスが原因であっても、会社に責任が認められる可能性があります。

従業員のミスの程度に応じて、過失相殺がなされることになると思われます。

(過労死・過労自殺の問題)

 過労死・過労自殺については、複雑な問題が絡んできます。 なぜなら、医学的には「過労」が死因とされることがないからです。自殺と過労との因果関係を立証するのは簡単ではありません。

 まず、使用者には、前述の安全配慮義務の一環として、雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務があるとされています(最高裁H12.3.24)。

 そして、一般的には、半年間の平均で月80時間以上の時間外労働や、一か月間で100時間以上の時間外労働がある場合には、健康障害と長時間労働の因果関係が肯定されやすくなります。 過労自殺の場合には、過労が原因となって、うつ病(精神的な健康障害)に罹患し、うつ病の結果、自殺に至ったという認定がなされる場合が多いといえます。

北川 靖之 弁護士

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