就職・採用

就職活動、採用活動での異状。未然に防ぐための心得を学ぼう
新卒の方の就職活動は、数多くの企業などを回り、大変な気力や体力が必要なことと思います。しかし残念なことに、企業の問題ある対応によって新卒者が多大な迷惑を被ることがあります。面接でプライベートを詳しく質問された、内定を取り消されたというトラブルのほか、就職後に予想外の労働条件で働かされたという悩みもしばしば聞かれます。
採用をするには必ず守らなければならないルールがいくつもありますが、これを守らない企業などに関わると、採用時だけでなく就職後にも苦労をさせられかねません。そこで今回は、問題ある企業などを見極め、就職活動時のトラブルを未然に防ぐ心得について詳しく解説します。
まず重要なのは、就職を希望する企業などが労働条件をはっきり示し、内容が法律などに反しないか、求人広告の内容と違っていないか、という点を確認することです。ごく当たり前かもしれませんが、後のトラブルを防ぐためにもしっかりチェックしておきましょう。
労働条件のルールを守っているか
仕事の内容、賃金、勤務日数などの労働条件は、企業と結ぶ労働契約の内容によって決まります。ある企業に就職するということは、労働者と企業とが対等な立場で労働契約を交わすことに他なりません。
ただ、企業の側に自由な労働契約を認めれば、労働者が弱い立場に置かれて低賃金や長時間労働などを強いられかねません。こうした事態を防ぐため、労働法という、労働者を保護する様々な法律が作られ、企業に採用などのルールを守らせています。次のような法律が守られているか、労働契約をチェックしましょう。
労働契約法
労働者と使用者(企業側)との間で締結する労働契約の基本原則などを定めた法律です。労働者が使用者に使用されて労働をし、それに対し企業が賃金を払う内容の合意ができれば労働契約が成立するという原則などを定めています。また、企業が不合理な解雇をしたときは解雇権を濫用したものとして無効とされます(同法16条)。
労働基準法
労働契約は、労働基準法の定める最低基準の労働条件を守らなければなりません。主に次のような内容となっています。
- 労働時間
1日8時間以内、1週間40時間以内の法定労働時間を定める。
時間外労働は過半数の労働組合等との間で協定(いわゆる36協定)を結び、労働基準監督署に届け出る。原則週15時間、月45時間までで、割増賃金が必要。 - 休憩休日
1日6時間を超える労働のときは45分、8時間を超えるときは60分の休憩時間が必要(分割しても可)。毎週週1日または4週間を通じて4日以上の休日(法定休日)も必要。 - 年次有給休暇
所定の休日以外に有給休暇の付与が必要。半年以上継続して雇われ8割以上の日数を出勤すれば10日間、勤続年数が増えるごとに増加し最長20日間まで取得させる。 - 労働条件の明示など
労働条件を明示し、賃金、仕事の場所や内容、労働時間や休日・休暇、賃金、退職に関する決まりなどは必ず書面を交付すること。 - 就業規則
10人以上の労働者を雇用する会社は必ず就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る。始業・終業時間や休日・休暇、賃金、退職に関する事項は必ず記載する。
最低賃金法
使用者が支払うべき賃金の最低額を定めた法律です。違反した賃金の労働契約は無効とされ、最低賃金と同額の契約を結んだとみなされます。最低賃金には都道府県ごとに定める「地域別最低賃金」と特定の産業の労働者が対象の「特定(産業別)最低賃金」の2種類があり、両方に該当する労働者には高い方の賃金が最低賃金となります。
労働条件で示された賃金が、最低賃金より低額になっていないか確認しておきましょう。
その他の法律など
男女雇用均等法によって採用や昇進での男女差別が禁止され、労働組合法によって労働組合の組合員を差別することなどが禁止されています。労働条件に差別的な内容が含まれていないか、また、厚生年金・健康保険・雇用保険や労災保険など、社会保険の加入状況についても確認が必要です。
面接について就職活動が始まると、企業への応募、面接と選考の手続が進んでいきます。しかし面接の際にも、企業が守るべきルールがあります。
面接において守るべきルールとは
厚生労働省は企業に対し、応募者の基本的人権を尊重し、応募者の適正・能力のみを基準として公正な採用選考を行うよう、ガイドラインを定めています。
具体的には、次の様な事項を応募用紙に記載させたり、面接で尋ねないように配慮すべきとしています。
a.本人に責任のない事項の把握
本籍、出生地、家族(職業や続柄、健康、学歴、収入など)、住宅環境、生活や家庭環境などに関すること
b.思想信条など、本来自由であるべき事項の把握
宗教、支持政党、人生観や生活信条、尊敬する人物、思想、労働組合の加入状況、購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
c.採用選考の方法
身元調査や不必要な健康診断を実施すること
法律には抵触しないのか?
公共職業安定所や労働者を採用する企業が、応募者の採用選考に関わりのない、社会的差別につながる個人情報を収集することは、法律で禁止されています(職業安定法第5条の4、厚生労働省平成11年告示第141号)。
面接の場で以上のような質問を受けたり情報提供を求められたら、応じなくてもかまいません。
面接担当者に侮辱的な発言をされたときは、慰謝料を請求できる事案に発展する場合もあります。就職差別につながる対応をする企業には、公平な選考をしてもらえない可能性が高く、企業体質にも大いに問題があると考えて良いと思います。
面接に合格をして内定をもらったのに企業が後で取消してきた。逆に、内定を辞退したら企業に引き留められて困っている。そんな内定に関わる悩みをどう解決するか、知っておきましょう。
内定取消しについて
企業がどのような時に内定取消ができるのか、はっきり定めた法律はありません。
しかし最高裁は、企業が採用内定通知をした時点で、解約権を留保した労働契約が成立したとみなされ、一方的な内定取消は無効であること、内定取消には内定当時に予想できなかったような合理的な理由だと判断しています(最高裁昭和54年7月20日判決、大日本印刷事件)。
具体的には、学校を卒業できない、健康状態が悪化して仕事ができない、履歴書の虚偽申告、犯罪行為、企業の経営状態の悪化のような、内定時に予測できなかったような重大な理由がなければ、企業は内定取消ができません。
もしも理由もなく内定を取り消されたときは違法なので、交渉や裁判などによって撤回させたり、受けた損害の賠償を受けることも可能です。ただこうした不誠実な企業に就職することが自分の将来にプラスになるのかは熟慮すべきでしょう。
内定辞退について
では、内定辞退にも制限があるのでしょうか。
労働者には職業選択の自由が保障されています(憲法22条1項)。新卒者の意に染まない職場で労働を強制することは許されませんし、就職活動で複数企業から内定を受けることは一般的ですので、内定辞退を企業が拒否することはできません。
企業に内定辞退を伝えたところ、激しく非難されたり、採用にかかった費用を請求された、というトラブルに遭う方もいるようです。
しかしこうした企業の対応は明らかに間違っているので、内定辞退をためらう必要はないでしょう。
なお、企業の内定取消とは違い、内定者が入社を辞退する場合は特別な理由も必要ありません。労働契約を解約する意思表示をすれば、その日から2週間経過することによって、契約は終了するとされています(民法第627条1項)。
ただ、あまり礼を失するような断り方は企業に対して失礼ですし、日を置きすぎた後で辞退をすれば採用の準備を進めた企業に迷惑をかけます。内定辞退を決めたら、なるべく早めに電話で丁寧に伝え、後日辞退したことのお詫び状を送るなどしておいた方がよいでしょう。
試用期間について企業によっては、入社後は試用期間となり、数ヶ月後に正式採用するという所があります。
試用期間後に自分が正式採用されるのか不安に感じ、このまま勤めて良いか迷ってしまうかもしれません。この場合、正式採用がされないこともあるのでしょうか。
試用期間とは
試用期間とは、採用後に勤務態度や能力、技能等などを評価して正式採用するかどうかを企業が判断するための期間です。
ただ、試用期間中とはいっても、既に企業で働いていることに変わりはありません。企業は採用者を社会保険に加入させる義務があります。また、賃金が正社員よりも若干低いこともあるので、賃金が最低賃金を下回っていないかも、確認しておく必要もあります。
正式採用を拒否されるのはどんなとき?
試用期間中の法的な扱いについて定めた法律はありませんが、最高裁は採用者と企業の間には解約権を留保した労働契約が成立していると判断しています。企業が試用期間後に正式採用を拒否することは、労働契約の解約、つまり解雇と扱われ、当然に拒否が認められるわけではありません。(最高裁大法廷昭和48年12月12日判決、三菱樹脂事件)
企業が正式採用を拒否できるのは、無断欠勤が多い、経歴の詐称があるなど、社員としての適格性に欠けると評価されるような合理的な理由が認められ、社会的にも相当と認められる場合に限られています。ただ、正社員を解雇する場合よりは認められやすいとも言われます。
なお、企業が試用期間中に解雇を言い渡すこともあります。この場合も正当な理由が必要です。企業が試用期間開始から15日以降に解雇をするには、30日前に予告するか、30日分の解雇予告手当を支払う必要があります(労働基準法第20条1項)。
試用期間はいつまで許される?
試用期間の長さは法律で制限されていませんが、3ヶ月から6ヶ月程度が一般的のようです。しかし余りに長い試用期間を設定すると、採用者が不安定な立場に置かれて不利益を与えかねません。
6ヶ月から1年の長期の試用期間は合理的期間を超えているとして、公序良俗に反し無効と判断した裁判例もあります。
また、試用期間が経過したが、企業の側から延長されたというトラブルも聞かれます。
試用期間の延長は、企業の就業規則に定めがなければ認められません。たとえ定めがあったとしても、合理的な理由がない限り原則として延長は認められないとされています。
こうしたトラブルを起こす企業かどうかは、毎年新卒者を大量に募集している、社員の年齢層が若すぎるなど、社内事情を知ることである程度判断できるでしょう。
以上のようなさまざまな点をチェックしておくことで、トラブルを未然に防ぐことも可能です。ただ、強い立場に立つ企業からなされる仕打ちに対して、新卒者は劣勢な立場に立たされがちです。
たとえ世間で名の知れた大企業であっても、採用の時には若い新卒者を軽く見て理不尽な対応をしてくる恐れがあり、実際に多くの裁判でも争われてきました。
就職活動にまつわるトラブルは、いつどんな時も起こりかねないという自覚を持った上で、誠実な対応をしてくれる企業を見極めていただきたいと思います。
そして、実際にトラブルに遭う恐れを感じたり、実際に遭ってしまった時は、被害が大きくならないうちに早急に学校や行政、場合によっては弁護士などの専門家に相談しておきましょう。
採用をするには必ず守らなければならないルールがいくつもありますが、これを守らない企業などに関わると、採用時だけでなく就職後にも苦労をさせられかねません。そこで今回は、問題ある企業などを見極め、就職活動時のトラブルを未然に防ぐ心得について詳しく解説します。
労働条件などのルールについて
まず重要なのは、就職を希望する企業などが労働条件をはっきり示し、内容が法律などに反しないか、求人広告の内容と違っていないか、という点を確認することです。ごく当たり前かもしれませんが、後のトラブルを防ぐためにもしっかりチェックしておきましょう。
労働条件のルールを守っているか
仕事の内容、賃金、勤務日数などの労働条件は、企業と結ぶ労働契約の内容によって決まります。ある企業に就職するということは、労働者と企業とが対等な立場で労働契約を交わすことに他なりません。
ただ、企業の側に自由な労働契約を認めれば、労働者が弱い立場に置かれて低賃金や長時間労働などを強いられかねません。こうした事態を防ぐため、労働法という、労働者を保護する様々な法律が作られ、企業に採用などのルールを守らせています。次のような法律が守られているか、労働契約をチェックしましょう。
労働契約法
労働者と使用者(企業側)との間で締結する労働契約の基本原則などを定めた法律です。労働者が使用者に使用されて労働をし、それに対し企業が賃金を払う内容の合意ができれば労働契約が成立するという原則などを定めています。また、企業が不合理な解雇をしたときは解雇権を濫用したものとして無効とされます(同法16条)。
労働基準法
労働契約は、労働基準法の定める最低基準の労働条件を守らなければなりません。主に次のような内容となっています。
・労働時間
1日8時間以内、1週間40時間以内の法定労働時間を定める。
時間外労働は過半数の労働組合等との間で協定(いわゆる36協定)を結び、労働基準監督署に届け出る。原則週15時間、月45時間までで、割増賃金が必要。
・休憩休日
1日6時間を超える労働のときは45分、8時間を超えるときは60分の休憩時間が必要(分割しても可)。毎週週1日または4週間を通じて4日以上の休日(法定休日)も必要。
・年次有給休暇
所定の休日以外に有給休暇の付与が必要。半年以上継続して雇われ8割以上の日数を出勤すれば10日間、勤続年数が増えるごとに増加し最長20日間まで取得させる。
・労働条件の明示など
労働条件を明示し、賃金、仕事の場所や内容、労働時間や休日・休暇、賃金、退職に関する決まりなどは必ず書面を交付すること。
・就業規則
10人以上の労働者を雇用する会社は必ず就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る。始業・終業時間や休日・休暇、賃金、退職に関する事項は必ず記載する。
最低賃金法
使用者が支払うべき賃金の最低額を定めた法律です。違反した賃金の労働契約は無効とされ、最低賃金と同額の契約を結んだとみなされます。最低賃金には都道府県ごとに定める「地域別最低賃金」と特定の産業の労働者が対象の「特定(産業別)最低賃金」の2種類があり、両方に該当する労働者には高い方の賃金が最低賃金となります。
労働条件で示された賃金が、最低賃金より低額になっていないか確認しておきましょう。
その他の法律など
男女雇用均等法によって採用や昇進での男女差別が禁止され、労働組合法によって労働組合の組合員を差別することなどが禁止されています。労働条件に差別的な内容が含まれていないか、また、厚生年金・健康保険・雇用保険や労災保険など、社会保険の加入状況についても確認が必要です。
面接について就職活動が始まると、企業への応募、面接と選考の手続が進んでいきます。しかし面接の際にも、企業が守るべきルールがあります。
面接において守るべきルールとは
厚生労働省は企業に対し、応募者の基本的人権を尊重し、応募者の適正・能力のみを基準として公正な採用選考を行うよう、ガイドラインを定めています。
具体的には、次の様な事項を応募用紙に記載させたり、面接で尋ねないように配慮すべきとしています。
a.本人に責任のない事項の把握
本籍、出生地、家族(職業や続柄、健康、学歴、収入など)、住宅環境、生活や家庭環境などに関すること
b.思想信条など、本来自由であるべき事項の把握
宗教、支持政党、人生観や生活信条、尊敬する人物、思想、労働組合の加入状況、購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
c.採用選考の方法
身元調査や不必要な健康診断を実施すること
法律には抵触しないのか?
公共職業安定所や労働者を採用する企業が、応募者の採用選考に関わりのない、社会的差別につながる個人情報を収集することは、法律で禁止されています(職業安定法第5条の4、厚生労働省平成11年告示第141号)。
面接の場で以上のような質問を受けたり情報提供を求められたら、応じなくてもかまいません。
面接担当者に侮辱的な発言をされたときは、慰謝料を請求できる事案に発展する場合もあります。就職差別につながる対応をする企業には、公平な選考をしてもらえない可能性が高く、企業体質にも大いに問題があると考えて良いと思います。
面接に合格をして内定をもらったのに企業が後で取消してきた。逆に、内定を辞退したら企業に引き留められて困っている。そんな内定に関わる悩みをどう解決するか、知っておきましょう。
内定取消しについて
企業がどのような時に内定取消ができるのか、はっきり定めた法律はありません。
しかし最高裁は、企業が採用内定通知をした時点で、解約権を留保した労働契約が成立したとみなされ、一方的な内定取消は無効であること、内定取消には内定当時に予想できなかったような合理的な理由だと判断しています(最高裁昭和54年7月20日判決、大日本印刷事件)。
具体的には、学校を卒業できない、健康状態が悪化して仕事ができない、履歴書の虚偽申告、犯罪行為、企業の経営状態の悪化のような、内定時に予測できなかったような重大な理由がなければ、企業は内定取消ができません。
もしも理由もなく内定を取り消されたときは違法なので、交渉や裁判などによって撤回させたり、受けた損害の賠償を受けることも可能です。ただこうした不誠実な企業に就職することが自分の将来にプラスになるのかは熟慮すべきでしょう。
内定辞退について
では、内定辞退にも制限があるのでしょうか。
労働者には職業選択の自由が保障されています(憲法22条1項)。新卒者の意に染まない職場で労働を強制することは許されませんし、就職活動で複数企業から内定を受けることは一般的ですので、内定辞退を企業が拒否することはできません。
企業に内定辞退を伝えたところ、激しく非難されたり、採用にかかった費用を請求された、というトラブルに遭う方もいるようです。
しかしこうした企業の対応は明らかに間違っているので、内定辞退をためらう必要はないでしょう。
なお、企業の内定取消とは違い、内定者が入社を辞退する場合は特別な理由も必要ありません。労働契約を解約する意思表示をすれば、その日から2週間経過することによって、契約は終了するとされています(民法第627条1項)。
ただ、あまり礼を失するような断り方は企業に対して失礼ですし、日を置きすぎた後で辞退をすれば採用の準備を進めた企業に迷惑をかけます。内定辞退を決めたら、なるべく早めに電話で丁寧に伝え、後日辞退したことのお詫び状を送るなどしておいた方がよいでしょう。
試用期間について企業によっては、入社後は試用期間となり、数ヶ月後に正式採用するという所があります。
試用期間後に自分が正式採用されるのか不安に感じ、このまま勤めて良いか迷ってしまうかもしれません。この場合、正式採用がされないこともあるのでしょうか。
試用期間とは
試用期間とは、採用後に勤務態度や能力、技能等などを評価して正式採用するかどうかを企業が判断するための期間です。
ただ、試用期間中とはいっても、既に企業で働いていることに変わりはありません。企業は採用者を社会保険に加入させる義務があります。また、賃金が正社員よりも若干低いこともあるので、賃金が最低賃金を下回っていないかも、確認しておく必要もあります。
正式採用を拒否されるのはどんなとき?
試用期間中の法的な扱いについて定めた法律はありませんが、最高裁は採用者と企業の間には解約権を留保した労働契約が成立していると判断しています。企業が試用期間後に正式採用を拒否することは、労働契約の解約、つまり解雇と扱われ、当然に拒否が認められるわけではありません。(最高裁大法廷昭和48年12月12日判決、三菱樹脂事件)
企業が正式採用を拒否できるのは、無断欠勤が多い、経歴の詐称があるなど、社員としての適格性に欠けると評価されるような合理的な理由が認められ、社会的にも相当と認められる場合に限られています。ただ、正社員を解雇する場合よりは認められやすいとも言われます。
なお、企業が試用期間中に解雇を言い渡すこともあります。この場合も正当な理由が必要です。企業が試用期間開始から15日以降に解雇をするには、30日前に予告するか、30日分の解雇予告手当を支払う必要があります(労働基準法第20条1項)。
試用期間はいつまで許される?
試用期間の長さは法律で制限されていませんが、3ヶ月から6ヶ月程度が一般的のようです。しかし余りに長い試用期間を設定すると、採用者が不安定な立場に置かれて不利益を与えかねません。
6ヶ月から1年の長期の試用期間は合理的期間を超えているとして、公序良俗に反し無効と判断した裁判例もあります。
また、試用期間が経過したが、企業の側から延長されたというトラブルも聞かれます。
試用期間の延長は、企業の就業規則に定めがなければ認められません。たとえ定めがあったとしても、合理的な理由がない限り原則として延長は認められないとされています。
こうしたトラブルを起こす企業かどうかは、毎年新卒者を大量に募集している、社員の年齢層が若すぎるなど、社内事情を知ることである程度判断できるでしょう。
以上のようなさまざまな点をチェックしておくことで、トラブルを未然に防ぐことも可能です。ただ、強い立場に立つ企業からなされる仕打ちに対して、新卒者は劣勢な立場に立たされがちです。
たとえ世間で名の知れた大企業であっても、採用の時には若い新卒者を軽く見て理不尽な対応をしてくる恐れがあり、実際に多くの裁判でも争われてきました。
就職活動にまつわるトラブルは、いつどんな時も起こりかねないという自覚を持った上で、誠実な対応をしてくれる企業を見極めていただきたいと思います。
そして、実際にトラブルに遭う恐れを感じたり、実際に遭ってしまった時は、被害が大きくならないうちに早急に学校や行政、場合によっては弁護士などの専門家に相談しておきましょう。
就職・採用を得意としている弁護士
トップへ
執行役員退職後に同業他社の監査役になるのは問題ありますでしょうか?