残業・休日出勤

残業・休日出勤の扱いは?賃金の割増率、振替休日などの確認
仕事が大好き、生きがいだということは、素晴らしいことです。ただ、良いパフォーマンスを維持するためには、適度な休息も必要です。毎日長時間残業し、休日返上で働いたために、心身の疲労から健康を害してしまっては、元も子もありません。残業・休日出勤について、法律上はどのように定められているのでしょうか。
残業、休日出勤の命令には従うべき?労働時間は週40時間、1日8時間(休憩時間を除く)が原則です(労働基準法(以下労基法とします)32条)。また、使用者は、労働者に対して毎週1回以上の休日を与えなければならず(4週間以内に4回以上の休日を与えることでも可)、休日は特定の日(毎週日曜日など)に与えなければなりません(労基法35条)。この労働時間の原則及び休日の原則に反して労働者を働かせると、使用者は処罰されます。
しかし、使用者が労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者と書面による協定をし、これを所轄の労働基準監督署長に届け出た場合においては、時間外労働または休日出勤をさせることができます(労基法36条)。この協定は俗に「三六協定(サブロクキョウテイ)」と呼ばれています。
三六協定では、(1)時間外労働あるいは休日労働をさせる必要がある具体的な理由、(2)業務の種類、(3)労働者の数、(4)1日に延長することができる時間、1日を超える一定期間内に延長することができる総時間、または労働させることができる休日、(5)有効期間を定めなければなりません。なお、原則として1か月45時間、1年360時間を超える時間外労働は、たとえ三六協定を締結していてもさせることができません。
この協定がない場合は、使用者から残業・休日出勤を命令されても従う義務はないといえます。しかし、一旦三六協定が成立すれば、それに基づいて残業・休日出勤が行われることになります。
判例では、就業規則の中に三六協定があればそれに従って残業・休日出勤させることがある、という規定がある場合、その就業規則の内容が合理的である限り、就業規則に基づいて残業・休日出勤の義務があると判断したものがあります(最一小判平成3.11.28)。この場合、残業・休日出勤の命令には従わなければならないということになります。
残業の賃金割増率について割増賃金の支払義務
使用者は、労働者に時間外労働、休日労働、深夜勤務をさせた場合は、割増賃金を支払わなければなりません(労基法37条)。割増賃金の制度は、本来休める時間に労働をすることになる労働者に対する補償の意味と、使用者が必要以上に残業や休日出勤を強いて労働時間に対する法規制が無意味になることを防止する意味があります。
労基法上、賃金の割増率は次のように定められています。
- 1か月の合計が60時間までの時間外労働および深夜労働については通常の労働時間の賃金の2割5分以上
- 1か月の合計が60時間を超えた時間外労働が行われた場合には60時間を超える労働について通常の労働時間の賃金5割以上
- 休日労働に対しては通常の労働日の賃金の3割5分以上
使用者は、労基法の範囲内でなされた時間外労働・休日労働に対しては、労基法上は割増賃金を払う必要はありませんが、就業規則に労基法の基準を上回る割増賃金の規定がある場合は、それに従って支払いをしなければなりません。
割増事由が重複した場合
休日に出勤して深夜まで働いたなど、複数の割増事由に該当する場合があります。その場合の割増率は、次のようになります。
- 時間外労働が深夜に及んだ場合には割増率5割以上
- 休日労働が深夜に及んだ場合には割増率6割以上
- 時間外労働と休日労働が重複した場合は割増率3割5分以上
割増賃金の計算方法
割増賃金は、「通常の労働時間の賃金」または「通常の労働日の賃金」に、割増率および時間外労働時間数または休日労働時間数等を掛けて算出します。時間給制が採用されている場合以外は、所定の方法により、時間給を計算しなければなりません。例えば、月給制の場合は、その金額を1か月の所定労働時間数(月により異なる場合は平均時間)で割って時間給を計算します。
また、通常賃金として支給されるものには、家族手当・住宅手当・通勤手当などが含まれていますが、割増賃金の計算の基礎となる「賃金」には、労働の量や質とは直接関係のない手当は含まれません。「賃金」から除外されるものは、労基法37条5項、労働基準法施行規則21条などに定められています。これら以外の賃金については、原則として割増賃金の計算の基礎に算入されることになります。
休日出勤しても手当が出ないパターン労基法35条1項は、「使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない」と定めています。現在は、1週40時間という法定労働時間との関係から、土・日休みの週休二日制の会社が多くなっていますが、労基法上は必ずしも週休二日制でなければならないということはないのです。
労基法35条1項の休日を「法定休日」といいます。なお、「法定休日」以外の休日を、「法定外休日」といいます。週休二日制で土・日が休みだとすると、一日は法定休日、もう一日は法定外休日ということになります。
同じ休日であっても、法定休日と法定外休日とでは、休日出勤した場合の賃金の割増率が異なります。 労基法上、休日労働の賃金割増率は3割5分ですが、これは「法定休日」に働いた場合に限ります。法定外休日に出勤し、1週間の労働時間が40時間を超えた場合は、時間外労働となり、賃金割増率は2割5分です。
たとえば、日曜日が法定休日と特定されている会社で、平日に8時間ずつ勤務したうえで、土曜日と日曜日にそれぞれ8時間勤務した場合、土曜日は時間外労働の賃金割増率である2割5分が適用され、日曜日は休日労働の賃金割増率である3割5分が適用されます。
会社の休日に出勤すれば、必ず休日労働の手当が出るとは限りませんので、注意が必要です。
振替休日と代休、どちらをとるべきか振替休日と代休は、どちらも休日に勤務した場合にもらえる休みですが、取得方法と賃金の支払いに違いがあります。
振替休日とは、あらかじめ休日と定められていた日を労働日とし、そのかわりに他の労働日を休日とすることをいいます。振替休日を取得する場合、申請は事前に行います。また、所定時間内で同一週内に休日を振り返る場合であれば割増賃金は発生しません。
一方、代休とは、休日労働が行われた場合に、その代償として以後の特定の労働日を休みとすることをいいます。代休を取得する場合は、申請は事後に行います。また、割増賃金が発生します。振替休日は休日を移動して取得するので休日手当は発生しませんが、代休は休日に出勤させたということに違いはないので、休日手当が発生するのです。
割増賃金がもらえるという点では、振替休日より代休を取るほうが労働者にとってメリットがあるといえます。しかし、同一週内できちんと休息をとることができるという点では、代休より振替休日のほうにメリットがあるといえます。
以上の説明は、労働時間について1週40時間、1日8時間、休日について1週間に1日以上という一般的なケースを前提にしたものです。フレックスタイム制や変形労働時間制を採用している場合はこれとは異なりますので、ご注意ください。また、労働時間や休日に関する労働基準法の規定は、法改正が多い分野でもあります。常に最新の情報をチェックしておきましょう。
残業・休日出勤を得意としている弁護士
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休日の棚卸し、代休無しの代わりに日当1万円、これって違法ですか?