パート・アルバイト

パート・アルバイトと正社員の違いは?社保、有給、待遇など
パート・アルバイトの特徴といえば、時給制、短時間勤務…などを思い浮かべることができますが、正社員との違いについて、きちんとした説明をしようと思うと中々難しいのではないでしょうか。パート・アルバイト労働者は法律上どのように扱われているのか、チェックしておきましょう。
パートタイム労働者、アルバイトの定義一般的には、パートタイム労働者とは、正社員よりは労働時間が少ないが、長期間にわたって働く人であるのに対し、アルバイトとは、土日だけ、夜だけなど限定された労働時間で、働く期間も短期間だというイメージがあります。つまり、それほど厳密ではなくても、パートとアルバイトは何となく違うものとして捉えられています。
しかし、法律上は、パートタイム労働者とアルバイトは、区別されていません。パートタイム労働法(正式名称は「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)によると、同法が適用される「短時間労働者(パートタイム労働者)」は、1週間の所定労働時間が当該事業所の通常の労働者に比べて短い労働者と定義されています(同法2条)。この定義からすると、パート、アルバイト、準社員、契約社員など、呼び方に関わらず、通常の労働者すなわち正社員より短い労働時間で働く人は、「短時間労働者」に該当します。
短時間労働者かどうかは、「通常の労働者」との比較で判断されます。通常の労働者とは、当該事業所において、社会通念に従い通常と判断される労働者をいいます。具体的には、当該業務に従事する正社員がいる場合は、正社員を通常の労働者と捉え、正社員がいない場合は、当該業務に恒常的に従事する1週間の所定労働時間が最長の労働者を通常の労働者と捉えます。
パート、アルバイトの残業、有給、社会保険などの扱いパート・アルバイトに適用される法令
パート・アルバイトも労働者である以上、正社員と同じように労働者保護のための法令の適用があります。労働基準法、最低賃金法、男女雇用機会均等法、労災保険法などは、所定労働時間等の条件に関わらず適用されます。また、雇用保険法、厚生年金保険法、健康保険法は、所定労働時間等の条件によっては、パート・アルバイトにも適用されます。以下、個別の事項について説明します。
残業・休日出勤
法定労働時間を超えて労働させる場合および法定休日に労働させる場合は、時間外および休日の労働に関する労使協定(36協定)の締結・届出に加え、就業規則や労働契約に時間外労働や休日労働をさせることができる旨の定めが必要であり、かつ、その時間の労働について割増賃金の支払いが必要です。
パート・アルバイトについても、労働条件通知書(雇入通知書)、就業規則に定めがあれば、時間外および休日労働をさせることができます。ただ、パート・アルバイトの場合、残業をしても1日の実労働時間が法定労働時間の8時間に満たない場合もあります。このような場合は、労使協定の締結や届出がなくても労働基準法違反にはなりません。
有休
パート・アルバイトに対しても、雇入れの日から6カ月間継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤すれば、労働日数に応じて有休が付与されます。
産休・育休
産前6週間について女性が請求した場合および産後8週間については、パート・アルバイトであっても就業させてはなりません。
また、(1)同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であり、(2)子が1歳に達する日を超えて引き続き雇用が継続することが見込まれる場合(ただし、子が1歳に達する日から1年を経過する日までに労働契約期間が満了し、かつ、契約の更新がないことが明らかである場合を除く)には、パート・アルバイトであっても育児休業が認められます。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)
パート・アルバイトが、労働時間、労働日数、就労形態、職務内容等から見て常用的使用関係にあると認められる場合は、パート・アルバイトも社会保険の被保険者となります。具体的には、1日または1週間の労働時間および1カ月の労働日数が、その事業所で同種の業務に従事する一般社員の所定労働日数のおおむね4分の3以上であれば、常用的使用関係にあると認められます。また、4分の3以下であっても、就労形態や職務内容など個々の具体的事例に即して、常用的使用関係にあると認められれば、社会保険の被保険者となることができます。
なお、平成28年10月からパートタイム労働者に対する適用要件が拡大され、(1)1週間の所定労働時間が20時間以上(2)当該事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれること(3)報酬の月額が8万8000円以上(年収106万円以上)であること(4)生徒、学生でないこと(5)従業員501人以上の企業に雇用されていること、という条件すべてに該当する場合は、社会保険が適用されることになりました。
雇用保険
(1)31日以上引き続き雇用されることが見込まれ、(2)1週間の所定労働時間が20時間以上であれば、パート・アルバイトについても雇用保険の加入手続きが必要です。ただし、65歳に達した日以降に雇用された場合は、適用除外となります。
労災保険
労働者であれば、雇用形態は関係なく、業務災害または通勤災害が発生したときは、労災保険給付の対象となります。なお、雇用保険とは異なり、一定期間以上継続して使用されたかどうかは問われません。
パートタイム労働法とはパートタイム労働法は、パートタイム労働者の適正な労働条件の確保、雇用管理の改善、通常の労働者への転換の推進などの措置等を講ずることによって、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図り、それを通じてパートタイム労働者の福祉の増進を図ることを目的にしています。
事業主は、パートタイマーの雇用管理の改善等のために、次の措置を義務付けられています。
A) 労働条件の文書交付(6条)
パートタイム労働者を雇い入れたときは、事業主は、昇給の有無、退職手当の有無等の労働条件に関する事項を、文書により交付しなければなりません。パートタイム労働者は、労働時間や職務内容等の労働条件が多様であるため、トラブル防止のために労働条件を明示して、労働者の納得性を高める趣旨の措置です。
B) 就業規則作成の際の意見聴取(7条)
事業主は、パートタイム労働者の就業規則の作成・変更に際し、当該事業所で雇用するパートタイム労働者の過半数代表者の意見聴取に努めるよう義務付けられています。
C) 短時間労働者の待遇の原則(8条)
雇用するパートタイム労働者と通常の労働者の待遇を相違させる場合には、その相違は、業務の内容およびその業務に伴う責任の程度、人材活用の仕組み・運用等、その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはなりません。待遇の相違が不合理な場合、その待遇は無効となり、事業主は不合理な待遇をしたことについて、労働者に対して不法行為責任に基づく損害賠償義務(民法709条)を負う場合があります。
D) 通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者に対する差別的取扱いの禁止(9条)
通常の労働者と、それと同視すべきパートタイム労働者との間では、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇についての差別的取扱いが禁止されます。
E) 賃金(10条)・教育訓練(11条)・福利厚生施設(12条)に関する均衡待遇
通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者については、9条で差別的取扱いが禁止されていますが、それ以外のパートタイム労働者についても、その働き・貢献に見合うように、通常の労働者との均衡のとれた待遇をすべき義務が事業主に課せられています。
F) 通常の労働者への転換の推進(13条)
人材の有効活用のため、事業主は、パートタイム労働者に対して、通常の労働者を外部から募集する場合に募集事項を周知すること等の措置を講じる義務を負います。
G) 事業主による説明義務(14条)
事業主は、パートタイム労働者を雇入れた際に、文書の交付による労働条件の明示の他に、自社内で実施することとする雇用管理の改善に関する措置についての説明義務を負います。
H) 相談窓口の設置(16条)
事業主は、パートタイム労働者の苦情を含めた相談に応じる窓口等を設置する義務を負います。
パート・アルバイトをはじめとする非正規労働者の待遇改善については、社会的に大きな問題となっています。働く側、雇う側それぞれの立場で、労働者保護について考え、法令の改正等に関心を寄せることが重要です。
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