会社の「海外研修制度」を利用したけれど・・

Legalus編集部さん 2015年06月19日

 会社の制度を利用して、二年間、海外の企業で研修を受けました。日本に帰ってきてから転職を考えていますが、留学する前に誓約書のようなものを書かされていて、研修終了後五年以内に会社をやめると、派遣費用の一部を返済させるとありました。もし退職をしたら、本当にお金を返さなくてはならないのでしょうか。


(20代:男性)

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Legalus編集部

     海外研修の実態が「業務性」を有するものであり、費用の返還合意が労働基準法16条に違反するような場合は、費用を返還する必要はありません。

     労働基準法は、その16条において、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、または、損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と定めています。

     この規定は、労働者の弱みにつけ込み、異常に高い損害賠償額が定められ、労働者の退職の自由が拘束されることで労働者の足止めとならないようにする趣旨です。



     ご相談の場合も、海外研修に行く前に誓約書を書かされたことで会社と結んだ合意が、この16条に反しないかが問題となります。同条に反すれば、誓約書は無効になるので、あなたは研修費用を支払う必要はありません。

     裁判例としては、海外研修の実態が「業務性」を有するかにより労働基準法16条違反の有無を判断した例があります(東京地判平成9年5月26日、長谷工コーポレーション事件)。

     具体的には、海外研修が労働者本人の自由意思によるものであったか、それとも業務命令によるものであったか否かや、労働者本人にとっての利益になるものであるか、また、帰国後の業務の関連性の程度なども重視して判断しています。結論としては、会社から社員に対する研修費用の請求が認められています。



     この裁判例に照らすと、ご相談の場合も、海外研修の実態に照らし、海外研修があなた本人の自由意思によるものであったか否かや、あなた本人にとっての利益になるものであるか、そして帰国後の業務の関連性の程度などにより、海外研修が「業務性」を有するものであるかにより判断されます。

     そして、実質的には海外研修が「業務性」を有するもので、その費用は本来会社が負担すべき性質のものであったといえる場合、海外研修後に退職することへの制裁として費用返還を課すことはできません。このような場合、あなたは研修費用を返還する必要はありません。

     たとえば、あなたの海外研修が、会社の関連企業で業務に従事することで、会社の業務遂行に役立つ語学力や、海外での業務遂行能力を向上させるというものであり、その実態は社員教育のひとつといえるような場合などは、派遣費用は業務遂行のための費用といえ、本来会社が負担すべきであり、労働者に負担する義務はないと判断されると考えられます。

2015年06月19日

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