退職後の競業避止について

User image 1 lu_e08c8043さん 2019年02月22日 03時28分

数年勤めた現職を退職し、類似した事業での独立を考えています。
後ほど会社から競業避止義務に関して連絡があった場合、
後述の前提条件を基にして下記2点についてお答えください。

質問1:差し止め請求を受けて、差し止めが認められる可能性の多寡
質問2:損害賠償請求を受けて、損害賠償支払いが認められる可能性の多寡

■前提状況

その1)競業避止関連

競業避止への同意は、入社時にサインした雇用契約書の遵守事項の条項中に
”競業避止”と明記のない形で記載があります。内容を見る限りでは、下記の特徴があります。
・期間は1年に限定
・競業禁止地域の定めがない
・職務範囲の定めはない
・競業避止への代償はない(退職金もなし、競業避止手当も当然なし、賃金自体も最低時給程度)

以下引用(頭に、以下のことを誓約するとあります)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

2 甲(勤務先)に関わる業務の中で知り得た営業等に関する情報や技術を
含む一切の情報合わせて甲が個人情報と考える情報に関して、不正利用をしない。
 退職後もそれらの情報の一切の保有、利用をしない

(中略)

5 甲の承諾なしに、辞職中及び退職後1年間、甲にて関わった業務に
 類似したノウハウを利用する事業を営むと甲が認める会社への転職
 もしくは類似ノウハウを利用する事業の立ち上げを一切行わない
-----------------------------------

その2)合意自体の有効性関連
・書面は他社への新卒入社を辞退し同社への入社を決めた後、社長と一対一でかわしている(=拒否が難しい状態)

その3)私と当該事業、ノウハウとの関係
・事業自体私の在籍前には会社に存在していない
・事業、及びノウハウはすべて私が開発した
・私は責任者として事業に携わっていた
・本事業ノウハウは0からの状態でも記憶にあるので簡単に再現できてしまう

その4)会社が競業を禁止する妥当性について
・現在社内で当該業務にあたっている人員は私のみで、退職後は担当不在になり明確に
 撤退の表明はしないものの休眠状態になる可能性が高い

■補足情報

おそらく本件への回答には関連しないと思われますが、もし関係する可能性が
あれば加味していただけますと幸いです。

・雇用契約にみなし残業のため残業代は支払わないとあるが、何時間を残業とみなすかの記載がどこにもない
・月100時間超の残業があった際も額面給与は20万円だった(どう計算しても最低賃金未満)
・就職時に口頭で約束された役員の地位や株の付与について、何の代償もなくなかった事にされた(勤務開始後複数回指摘済み)
・上記状況で勤務期間中にはうつ病を発症している

質問2から先に回答致します。貴殿が従前の職場で開発したノウハウを新しい事業でも用いるならば、残念ですが、損害賠償が認められる可能性はあるように思われます。もっとも、ここでいうノウハウの具体的内容(法的保護に値するノウハウか等)によって損害賠償が認められる可能性は変わってきますし、会社側がどのような証拠を持っているかによっても変わってきますので、確率として高いか低いかを正確に申し上げることは難しいのですが、法的には損害賠償が認められる可能性はあると思われます。最大の理由は、このノウハウには財産的な価値があると思われるところ、その権利は貴殿ではなく会社に帰属していると判断される可能性が高いからです。比喩的に言うならば、会社が所有していた自動車を、貴殿が独立後にそのまま使用したとすれば、当然違法ですし損害賠償請求の対象となるということはご理解頂けるかと思いますが、今回のケースもこれと似たような状況に陥ってしまう可能性があるように思われるからです。

一方、質問1についてですが、ノウハウの利用の差止めという請求であれば、損害賠償請求よりは立証のハードルが上がるものの、やはり認められる可能性はあると思われます。事業そのものの差止めというのは、おそらく認められる可能性は高くないように思われますが、ノウハウの利用が差し止められれば、事業の継続も困難であるとするならば、おそらく会社側はノウハウの利用の差止めという請求をしてくるのではないかと推測します。

以上のように、法的にはやや貴殿の立場は不利であるようにも思われますが、貴殿の経済的な利益も重要ですので、簡単に諦めることなく、より具体的かつ慎重な検討をなさることをお勧め致します。

その他の補足事項ですが、拒否が難しい状況での契約というだけでは、合意自体の有効性を争うことは非常に難しいと思われます。また、貴殿が辞めることで会社が同種の事業を継続できなくなるという点も、貴殿にとって有利な事情にはならないように思われます。補足事項として記載された点は、貴殿も正確にご理解なさっているとおり、本件とは直接の関連性はないと思われますが、損害賠償請求を起こされた場合に、貴殿からの反訴という形で会社に対する損害賠償請求をするということは考えられます。

以上宜しくご検討ください。

2019年02月22日 10時36分
補足質問
User image 1

lu_e08c8043 - 2019年02月22日 11時57分

ご丁寧な解説、誠にありがとうございます、追加でご質問させてください。

今回、特に"退職後"の競業避止義務の有効性が論点となるかと存じますが
私としてはこちら側に有利な点として下記を想定しています。
こちらを鑑みてもやはり、損害賠償請求や差し止め請求が
裁判所から認められる可能性が高そうでしょうか。

・競業避止義務へ同意した書面について下記二点から同意自体が無効なのでは?
  - 新卒入社時点で交わされており、同意拒否による解雇後の転職難易度を考えると同意せざるを得ない、対等な立場で結ばれた
   同意とは言えない?
  - 2ページ程度の雇用契約の中の、遵守事項という条項の1項に過ぎず、個別の説明もない。
   合わせて新卒入社時点で競業避止というルール自体を知らないであろう点から、内容を十全に認識した上での同意とは言えない?

・退職後の競業避止義務の争点として頻出する、競業避止への代償設定が一切ない
・退職後の競業避止義務の争点として頻出する、禁止する職務範囲が全く限定的でない
・退職後の競業避止義務の争点として頻出する、地域の定めが全くない
・社内でも私以外担当がおらず、最低限の対応以外、当該事業を積極的に稼働させる可能性は低い

お忙しい中恐縮ですが、ご返答いただけますと幸いです。
補足回答
Resized avatar mini magick20190221 20849 1cibuhs

中田 俊明 弁護士 - 2019年02月22日 12時33分

時間の関係上、少し簡潔な回答となってしまいますが、ご容赦下さい。

まず、「対等な立場で結ばれた合意とは言えない」という点ですが、仰る趣旨はよく分かりますが、対等な立場であれば到底このような不合理な条件は飲まなかったであろうというような一方的な内容が問題となっているような場合は別ですが、今回の競業避止義務は、一般論として言えば、必ずしも不合理な条項とは思われません。この意味では、対等な立場ではなかったという主張をしても、同意を無効とすることまでは難しいように思われます。

次に、「内容を十分に認識した上での合意とは言えない」という点ですが、これも上記と同様の理由で、残念ですが、それほどの説得力はないように感じられます。もしこのような主張が通ってしまえば、ほとんどの契約は後からひっくり返されるリスクがあるという帰結ともなり得るため、少しバランスを欠く主張であるようにも思われます。

次に、「競業避止への代償措置がない」という点について回答します。鋭い考察ですが、期限が1年と限定されていることを考えれば、日本法上は代償措置がなくても有効であると判断される可能性が高いと思われます(私が知る限り、海外では代償措置の提供が法律上義務づけられていることもあるようですが)。

次に、「範囲が限定的ではない」という点ですが、これは仰るとおりかも知れませんが、範囲が限定的でないから競業避止義務に関する条項が全体として無効であるという判断をされるのではなく、必要に応じて範囲を限定的に解釈をした上で、競業避止義務自体は有効という判断がなされる可能性が高いと思われます。ただ、貴殿がなされる事業の内容によっては、競業避止義務の範囲外という判断がなされる可能性は有り得ると思われます。

次に、「地域の定めがない」という点ですが、ほぼ上記と同じです。地域の定めを設けないことが不合理であるならば、合理的な範囲内の地域に限って競業避止義務が有効であると判断される可能性があると思われます。その結果、貴殿の事業が地域外だと判断される可能性は有り得ると思われます。

最後に、「貴殿が辞めた後は会社が当該事業を継続できない」という点ですが、一般論として言えば、会社が実際に競業する事業を営んでいるか否かは、競業避止義務の有無を左右することはないものと解されます。

以上宜しくご検討下さい。
お礼メッセージ

お忙しい中ご回答頂きまして誠にありがとうございます。
大変わかりやすく、勉強になりました。
幅広く見解を募った上で、事業の方向性等検討したいと思います。

投稿時の情報です。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。

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