営業中に会社の車で事故を起こしたら、修理費用はどうなる?

Legalus編集部さん 2016年03月19日

 不動産賃貸仲介の仕事中、営業車でお客様を案内しています。その仕事中に駐車する際、車のバンパーをこすってしまいました。会社からは更に、車のサイドミラーの外側の傷や、ドアの小さな傷まで修理して、6万円全額払えと言われました。

 今月退職するので、最後の給料から差引かれるのですが、全額負担しなくてはいけないのでしょうか? 営業車には自損事故の際の保険はかかっておりません。会社の規則は存在しません。


(30代:男性)

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Legalus編集部

     勤務中に事故に遭われ、その上全額補償を請求されてお困りだろうと思います。まず、事故に対する質問者様の過失割合を知ることが大事です。

     もし、会社側が質問者様の過失を過大に評価して請求している場合、その減額を求めて交渉してみるべきでしょう。



     事故の状況によっては、営業行為に伴うリスクの範囲内であることも想定されます。リスクを伴う営業中の事故であれば、その事故の損失は会社側が負担すべきと考えることも可能でしょう。



     労働者が、事故を起こすなどして使用者の所有物に損害を与えた場合は、その与えた損害について、使用者に対して賠償責任を負います(民法415条不法行為による損害賠償709条)。

     しかし、民法には「報償責任の法理」という考え方があります。これは、労働者の営業活動によって利益をあげている会社は、労働者の過失についても責任を負うべきという考えです。

     そのため、労働者が全てを損害賠償するのではなく、損害を与えた一部についての責任を負担するだけでいいというわけです。



     ここで、最高裁の判例を見てみましょう。「使用者の事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度、その他諸般の事情」。

     つまり、判決では使用者の責任も考慮したうえで判断されているのがわかるでしょう。(最判昭和51年7月8日



     また、保険の種類によっても賠償程度やその範囲は異なります。一般的には、社用車には損害保険がかけられている場合がほとんどです。社用車が入っている損害保険から補填された場合、その分は原則として賠償しなくてよいと考えていいでしょう。



     しかし、ご相談の場合は、会社が自損事故の保険に入っていないということで、その補填分も含め、会社側は質問者様に請求しているのでしょう。先述した民法の理念を考慮したうえで、誰がどの程度、事故の損失分、修理費用を賠償するべきかが問われることになります。



     もし、質問者様の会社で、従業員が頻繁に交通事故を起こしていて、社用車にたびたび損害を与えていたという事情があったとします。それだと、自損事故をカバーする車両保険に入るのが通常にも関わらず、その社会的な義務を怠って従業員の事故という事態を招いたといえるため、会社側もその責任は免れないといえるでしょう。



     その他にも、会社の労働環境が粗悪だったり、事故防止のための安全指導を怠ったりといった使用者側の管理責任が考えられれば、さらに質問者様の事故に対する損害賠償責任が軽減される可能性もあります。

     質問者様と同じような事例で、損害額の5%にとどまるとされた裁判例も実際には存在します。



     しかし、質問者様の側に何らかの落ち度があった場合、別の検討が必要になってきます。

     例えば、質問者様が前の晩から朝まで飲み歩いていたなどの場合、翌日の業務に備えて休養を取ることが必要とわかりながらそれを怠っていたということになりますので、事故に対する過失は大きくなるでしょう。



     ただ、注意して欲しいことがあります。それは、仮に質問者様に重過失が認められるとしても、質問者様の同意がない限り、会社が給料から賠償金を「天引き」することは認められていません。

     給料の支払いに関しては、会社は規定どおりにきちんと支払う義務が生じます。そのうえで、労働者に損害賠償を請求するという手続きを取らなければいけません(労働基準法24条1項「全額払いの原則」)。



     以上のことを踏まえ、もう一度あなたが事故を起こした原因とその状況、会社側の管理体制などを調べてみてください。そのうえで、もし必要以上の損害賠償額を請求されていたとしたら、減額請求には合理的な理由があり、再交渉の余地はあるはずです。

     それでも会社側が質問者様の要求を拒否して、賠償額の減額に応じなかったら、弁護士などの専門家に相談するといいでしょう。

2016年03月19日

就業規則・労働協約に強い弁護士

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