給与明細をくれない会社

User image 1 Legalus編集部さん 2014年01月07日

 私の彼氏が勤務する会社では、報酬の一部を前借させてもらえる「前借制度」があります。ところが、その制度を利用して前借をしたとき、明細や計算書が一切出されなかったそうです。
 給与自体も、時給×労働時間+歩合制、税金等もあり、本人にも、前借り分を引いた給与の額が分からないそうです。受取額を正確に把握したいと思い、明細を請求しても、出されたことはなく、「そのうち出す」などと、のらりくらりとかわされるようです。
 こんなルーズな会社が、きっちり給与を支払ってくれているかも、正直なところ疑わしいです。給与明細を出すよう、請求することはできるのでしょうか?そして、現実の支給額と差があった場合、不足分を支給させることはできるのでしょうか?

(30代:女性)

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Legalus編集部

     給与とは、雇用者が労働者の労働に対し支払う報酬で、毎月1回以上一定の期日に、直接、通貨で全額を支払うことが、労働基準法で定められています(労働基準法24条)。
     給与には、基本給の他、各種手当が含まれます。各種手当とは、役職手当、家族手当、住宅手当などの「所定内手当」、および、時間外手当、休日手当、深夜手当などの「所定外手当」で、これらの合計金額が、その月の給与の総支給額です。
     従業員が現実に受け取る、いわゆる「手取り」額は、この「総支給額」から、各種税金(社会保険料、源泉所得税、住民税など)、会社からの借入れ天引き分などを差し引いたものとなります。
     会社は、賃金の額、氏名、労働日数、労働時間数、基本給、手当その他の金額等につき、賃金台帳を作成して記載し、その台帳は、少なくとも3年間は保存しなければなりません(労働基準法109条)。これがいわゆる「法定3帳簿」といわれるもののひとつですが、この法定3帳簿には、給与明細が含まれていません。したがって、給料明細を作成する義務も、従業員に発行する義務も、会社にはないことになります。

     しかし、 健康保険法167条3項には、

    「事業主(会社)は、前2項の規定(1項:給料、2項:賞与から保険料を控除できる)によって保険料を控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない。」

     厚生年金保険法84条3項には、

    「事業主(会社)は、前2項の規定(1項:お給料、2項:賞与からの保険料を控除できる)によって保険料を控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない。」

     労働保険の保険料の徴収等に関する法律(労働保険料徴収法)31条1項には、

    「事業主(会社)は、厚生労働省令で定めるところにより、...当該被保険者に支払う賃金から控除することができる。この場合において、事業主は、労働保険料控除に関する計算書を作成し、その控除額を当該被保険者に通知しなければならない。」

    という規定があります。つまり、健康保険法厚生年金保険法労働保険料徴収法は、各保険の保険料を給与から控除することができる旨定め、会社は給与から各種社会保険料を控除するわけですが、健康保険法・厚生年金保法・労働保険料徴収法(雇用保険)各法により、給与から保険料を控除したときは、計算書を発行する必要があるのです。
     条文によれば、厚生年金保険の保険料控除の計算書・健康保険料の保険料控除の計算書・労働保険(雇用保険)の保険料控除の計算書の、計3通の計算書を発行する必要があります。これらの計算書には、総支給額及び控除額が記載されるわけですが、同じ様な内容の計算書を3通も発行することは、会社としては非常な手間です。また、計算書を発行する必要のない所得税等の関係で、各計算書に記載された控除額を合計しても、支給額(手取額)にはなりません。
     そこで、 これらをまとめて給与明細に一括記載することが慣行となっているのです。もともと法定の書類ではない給与明細ですが、給与に関するトラブル防止のため、給与の計算の基礎となる部分も明示するようになりました。基本給や時間外手当等も記載されるようになったわけです。
     というわけで、会社に「保険料控除の計算書」を請求すれば、会社は拒否できません。通常の会社では、保険料控除の計算書を3通も発行するより、それに代えて給与明細を発行すると思われますが、いずれにしても、正確に給与を把握する資料が入手できることになります。

     現実の支給額と差があった場合には、給料明細の有無と関係なく、差額分を請求することができます。
     1ヵ月の労働時間等を、会社のタイムカードとは別に記録しておき、ご自分でお給料を計算してみましょう。会社に対し、明確に差額が指摘できなくても、自分で計算した額と会社の支給額との大体の差額がわかれば、それをもとに労働基準監督署に相談する資料とすることができます。
     後は、監督署が職権で会社を調査し、未払賃金があれば未払賃金の支払い命令が出されます。

2014年01月07日

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