労働時間・休憩・休日

労働時間・休憩・休日に関する基本的な考え方と変形労働時間制
世の中にはいろいろな仕事があり、出社時刻や退社時刻、休憩や休日の取り方も様々です。ただ、労働者保護の観点から、労働時間や休憩・休日に関しては、最低限守られるべきルールがあります。それが、労働基準法に定められた基準です。ご自身の勤務先のルールにおかしい点がないか、法律の定める基準と比べてチェックしてみましょう。
労働時間についての基本週40時間・1日8時間の原則
労働時間とは、労働者が使用者または監督者の下で労働に服しなければならない時間で、休憩時間を除く時間のことです。労働基準法は、労働者の健康維持の観点から、労働時間について枠を設けています。具体的には、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。(労基法32条1項)」、「使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。(同2項)」と定められています。これが、労働時間についての原則です。これに違反して労働者を働かせた場合、使用者は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます(労基法119条)。
しかし、全ての業種・あらゆる規模の事業所にこの原則を適用すると、業務に支障が生じる場合もあります。そこで、例外として、特定の業種(商業・興行・保健衛生・接客娯楽)で、常時10人未満の労働者を使用する事業場については、法定労働時間は週44時間とされています。ただし、この場合も、一日の法定労働時間は8時間までです。
労働時間とみなされるもの
工場での作業のように、本来の業務をしている時間が労働時間に含まれることは言うまでもありません。しかし、本来の業務とはいえないことをしている時間であっても、使用者の業務命令下にあるといえるならば、労働時間に含まれます。例えば、始業時刻前に仕事の準備をしている時間や、使用者の指揮下で指示を待っている待機時間、研修や訓練への参加、安全衛生のための会合への参加、更衣室で会社の制服に着替える時間、終業後の後片付けや掃除などは、労働時間に含まれます。
この業務命令には、明示の命令だけでなく、黙示の指示も含まれます。上司の言動や周囲の状況から、労働者が仕事をせざるを得ない状況にある場合は、黙示の指示があったとして、労働時間に含まれると考えられています。
休憩時間について守られるべきこと長時間働けば疲労を感じ、業務の効率は低下します。また、疲労により労働災害が起きやすくなるおそれもあります。これは、労働者にとっても使用者にとってもマイナスです。そこで、労基法34条は、休憩時間の取り方について次の三原則を定めています。
一つ目は、休憩時間についての原則です。使用者は、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を、労働時間の途中で与えなければなりません。休憩は、分割して与えることもできます。
二つ目は、一斉休憩の原則です。労働者がバラバラに休憩をとると、監督機関が休憩時間規制を発見しにくく、また、労働者側も休憩している気分にもなれないことから、休憩時間は事業場における全労働者に一斉に与えるのが原則とされています。ただし、全員が一斉に休憩に入ると、業務に支障をきたす場合もあります。そこで、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との労使協定を結べば、一斉休憩の原則に対する例外を定めることができます。なお、坑内労働や一定のサービス業には、一斉休憩の原則が適用されません。
三つ目は、休憩時間自由利用の原則です。心身の疲れを癒すためには、労働者が使用者の拘束から解放され、休憩時間を自由に利用できるようにすることが必要だからです。一般的には、職場から離れることも労働者の自由です。ただし、警察官や福祉施設の職員など、職務の公益性から休憩時間の自由利用を制限されている職種もあります。
休日についての正しい認識休日とは、労働契約上あらかじめ定められた、労働者が労働義務を負わない日をいい、休憩と同じく、労働者の疲労回復のためには欠かせないものです。
労基法35条は、使用者は、労働者に対して毎週少なくとも1回以上、または4週間で4日以上の休日を与えなければならないと定めています。現在は土日の週休2日制が主流ですが、法律上は週1日の休日で足り、あらかじめ決められた曜日であれば必ずしも土日である必要はないことになります。
1回の休日とは、単なる継続24時間では足りず、午前0時から午後12時までの暦日をいうのが原則です。ただし、交替制勤務者については、一定の場合に継続24時間を休日として与えればさしつかえないとされており、旅館業や自動車運転者など日付をまたいで仕事をせざるを得ない業種についても一定の特例が認められています。また、休日を与える単位となる「週」とは、日曜日から土曜日までの暦週に限られず、継続した7日間であればよいとされています。
なお、業務上の必要から、休日労働をしなければならない場合もあります。その場合、事前に休日を振り替えて、その日を休日でなくすという「休日の振替」が行われることがあります。休日の振替は、(1)就業規則で振替制度を定めておく、(2)あらかじめ振替先の日が決まっている、(3)4週4日の原則を維持する、という条件を満たせば、労働者の個別の同意がなくても実施することができます。
この休日の振替と似ているのが、休日であることを前提に勤務させて後日休みをとる「代休」です。代休はあくまで労働義務のない休日に業務を行うため、休日労働のための労使協定の締結・届出や割増賃金の支払いの必要がある点が振替休日とは異なります。
変形労働時間制とは時期によって業務の忙しさに波がある業種では、繁忙期は長時間労働をしなければ仕事が回らない一方で、閑散期には仕事がほとんどない、という状況になります。このような状況で画一的に週40時間・1日8時間の原則を貫くのは非合理的であり、労働時間に関する規制を弾力化する必要性があります。そこで、労基法は、労使協定等を条件に、変形労働時間制を認めています。
変形労働時間制とは、一定の単位期間について、週あたりの平均労働時間が週法定労働時間の枠内に収まっていれば、1週または1日の法定労働時間の規制を解除することを認める制度です。
変形労働時間制には、(1)1カ月単位の変形労働時間制(労基法32条の2)、(2)1年単位の変形労働時間制(同32条の4および4の2)、(3)1週間単位の変形労働時間制(同32条の5)の3種類があります。
(1)1カ月単位の変形労働時間制を採用する場合は、労使協定または就業規則に規定を設けて、労働基準監督署への届出を行う必要があります。
(2)1年単位の変形労働時間制の場合は、労使協定を締結し、労働基準監督署への届出を行う必要があります。1カ月単位の変形労働時間制と異なり、就業規則で導入することはできません。これは、対象となる期間が長い分、労働者保護の必要性が増すので、使用者が一方的に作成できる就業規則で導入を認めることは妥当ではないと考えられるからです。
(3)1週間単位の変形労働時間制は、労使協定を締結し、労働基準監督署への届出を行う必要があります。対象となる事業場は、労働者30人未満の小売業・旅館・飲食店など曜日や時間帯によって繁閑の差が大きい事業場に限定されています。
労働時間・休憩・休日に関する法律の規定は、労働者保護の観点から設けられている規定ですが、業務の実態に合わせて柔軟な運用を可能にしている点がポイントといえます。また、労働時間等に関する規定は、改正が頻繁に行われる分野ですので、常に最新の情報をチェックすることが重要です。
労働時間・休憩・休日を得意としている弁護士
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