個人再生はお金を借りた人(債務者)が裁判所に申立て、借金を大幅に減額してもらう債務整理です。最大で借金の額を1/10まで減額が可能です。個人再生は、借金をかなり減額してもらえれば完済が可能な債務者に向いている、債務整理の方法といえるでしょう。
ただし、裁判所で複雑な手続きを必要としたり、申立ての際に予納金等が必要となったりと手間や費用がかかります。
自分だけでも個人再生を行うことができますが、やはり弁護士や司法書士など専門家に依頼するのが一般的です。
そこで個人再生にかかる費用や弁護士や司法書士に依頼した場合の費用相場について、私達がリサーチした内容をまとめた本記事で解説してゆきます。
個人再生について
個人再生は債務者が裁判所へ申立て、大幅に借金を減額してもらう債務整理です。
ただし、減額できた借金を原則として3年間で分割し、返済する再生計画を立てなければいけません。
個人再生には次の2種類があります。
- 小規模個人再生
- 給与所得者等再生
住宅ローンを除いた借金総額が5,000万円以下、将来にわたり継続的な収入の見込みがある人(個人商店主、小規模の事業者等)が対象。
住宅ローンを除いた借金総額が5,000万円以下、将来にわたり継続的な収入の見込みがあり、更に収入は給料等でその金額が安定している人(サラリーマン)が対象。
また、最低限返済が必要な金額も法定されています。下表をご覧ください。
借金総額 | 最低限返済が必要な金額 |
---|---|
100万円未満 | 借金の総額全部 |
100万円~500万円以下 | 100万円 |
500万円超~1,500万円以下 | 借金の総額の1/5 |
1,500万円超~3,000万円以下 | 300万円 |
3,000万円超~5,000万円以下 | の総額の1/10 |
給与所得者等再生の場合は、更に上記の最低限返済が必要な金額と比較し、自分の収入の合計額から税金・最低生活費等を差し引いた金額(可処分所得額)2年分の、いずれか多い方の金額を最低限度とする。
個人再生を自分で行う場合の費用
個人再生は専門家に依頼せず、自分で行うことが可能です。
その場合には、裁判所へ支払う費用(収入印紙や郵便切手、予納金)のみとなります。
結論から言いますと、個人再生を自分で行う場合の費用相場は、20万円~25万円となります。
それぞれの内訳を見ていきましょう。
(1)収入印紙・切手代
個人再生の申立てには収入印紙(申立手数料)は1万円分、その他に郵便切手を準備します。郵便切手は各裁判所の要求に従い、複数枚を用意する必要があります。
切手は次のような形で申立ての時に提出します。横浜地方裁判所の場合を例として取り上げましょう。
郵便切手 | 数 |
---|---|
1円切手 | 10組 |
10円切手 | 10組 |
82円切手 | 10組 |
20円切手 | 債権者数×2 |
120円切手 | 債権者数×2 |
参考:裁判所ホームページ 横浜地方裁判所個人再生事件の手続費用等一覧
(2)予納金
予納金も事前に裁判所に支払う費用です。個人再生の場合、代理人弁護士がいるか・いないかで金額が大きく変化します。
- 代理人弁護士がいる場合(弁護士申立):12,000円前後
- 代理人弁護士がいない場合(本人申立):200,000円前後
予納金額には官報掲載料や個人再生委員の報酬が含まれます。
弁護士が代理人となる場合、基本的に官報掲載料のみを納めるだけでよいので、予納金額は低くなっています。
ただし、代理人弁護士がいない場合は個人再生委員を選任しなければいけません。そのため、個人再生委員の報酬が必要となり、その分、予納金の負担は重くなります。
個人再生委員について
個人再生手続の際、申立人の財産・収入・借金の額を調査、再生計画案の作成等のアドバイスを担当する人を指します。
自分だけで個人再生はできる?
自分に代理人弁護士がいれば、予納金は低く抑えられる場合が多いです。
ただし、弁護士報酬は数十万円に上り、予納金額が重くなくても、結局は債務者本人だけで申し立てた方が費用は安くなります。
しかし、個人再生を行う申立人は主に個人事業主やサラリーマンであり、自分の仕事をしながら、手続きの準備も行わなければいけません。
また、申立人は再生計画案を作成する必要があります。裁判所や債権者が納得するような再生計画案でなければ、不認可となるおそれがあります。
そのため、個人再生手続には弁護士や司法書士からサポートを受けた方が、スムーズに手続きが進められ、説得力のある再生計画案の作成も期待できます。
その他、弁護士や司法書士に依頼すれば受任通知が債権者へ送付され、債務者本人・家族への執拗な督促等は一時的に停止されます。
債権者の交渉の窓口は弁護士や司法書士となったため、以後は弁護士や司法書士に対応を任せ、債務者本人は安心して仕事に専念できるはずです。
個人再生を弁護士・司法書士に依頼した場合の費用相場
弁護士や司法書士の専門家のサポートを受け、個人再生手続を進めた方が、裁判所からの認可を受ける可能性も高まります。
こちらでは、弁護士や司法書士の専門家に個人再生手続を依頼した場合、どのくらいの費用相場となるのかを説明します。
弁護士や司法書士へ依頼した場合の費用相場は、次の通りです。
- 弁護士:約30万円~50万円
- 司法書士:約20万円~30万円
詳しく見ていきましょう
弁護士や司法書士に依頼した場合の費用内訳
個人再生手続を依頼したい場合には、弁護士または司法書士と委任契約を締結します。費用の目安は下表をご覧ください。
個人再生に関する報酬等 | 金額(目安) |
---|---|
相談料 | 無料~5,000円(30分) |
住宅ローンがある場合 |
|
住宅ローンがない場合 |
|
その他(日当や交通費等) | 約3万円~5万円 |
司法書士に依頼すると、かかる費用は若干安くなる傾向があります。ただし、司法書士には次のような業務範囲の制限も存在します。
- 相談、提出書類作成・収集、再生計画案の作成は可能だが、裁判所への同行は基本的に不可能
- 申立人の代理人として個人再生手続・交渉を行えない
- 債権者1社あたりの主張する債権額140万円以内の案件に限定
申立人の手続き代行から代理人としての対応まで、全てのサポートが期待できるのは弁護士だけです。
個人再生について相談できる専門家
個人再生を検討している場合、債務者一人でいろいろ考えるのではなく、前もって専門家に相談した方が良いでしょう。
個人再生については、弁護士事務所や司法書士事務所で相談が可能です。相談料は事務所ごとに異なり、初回の相談料は無理にしてくれるところも多いです。有料の場合は30分で5,000円程度を負担します。
まずは個人再生にはどんなメリットがあり、デメリットがあるのか、担当者から指摘してもらい、自分で申立てを行うか、それとも依頼するかを良く検討しましょう。結論が出るまで何回か担当者と相談しても構いません。
個人再生の費用を軽減する方法
個人再生を検討する債務者の中には、所得が少なく弁護士や司法書士に依頼するべきか悩んでいる人も多いはずです。
ここでは、個人再生の費用を軽減する方法について紹介します。
(1)法テラスで民事法律扶助制度を利用する
正式な名称は「日本司法支援センター」で、その通称が法テラスです。法的トラブル解決の総合案内所として47都道府県すべてに設置されています。
個人再生をはじめとした債務整理、離婚問題、消費者被害等のいろいろなトラブルの相談を、電話・面談・メールで無料で受け付けています。また、弁護士や司法書士のような専門家の紹介も可能です。
まずは法テラスのサイトから最寄りの法テラス地方事務所を検索してみましょう。各地方事務所の電話番号や所在地、営業時間等が明記されています。
①民事法律扶助制度を利用した場合の費用
法テラスでは、相談者が一定の所得条件に合致すれば「民事法律扶助」を利用でき、弁護士・司法書士の費用等の立替サービスを受けられます。その返済費用は原則として月額約5,000円〜10,000円です。
個人再生(民事再生)を依頼する際の弁護士費用・司法書士費用の目安は下表の通りです
債権者数 | 実費 | 着手金 |
---|---|---|
1社~10社 | 35,000円 | 165,000円 |
11社~20社 | 35,000円 | 187,000円 |
21社以上 | 35,000円 | 220,000円 |
過払い金があった場合は別途、報酬金がかかります。
なお、裁判所へ申し立てる際に必要な収入印紙や、予納金等は民事法律扶助制度の対象外です。申立費用に関しては、何とか自分で工面する必要があります。
(2)分割払いや費用の支払方法を担当者とよく話し合う
弁護士や司法書士にサポートを依頼した場合は費用が約30万円~50万円に上り、依頼者(債務者)にとって重い負担となります。
更に個人再生が認められ、大幅に借金が減額されたとしても、その費用は必ず支払わなければいけません。
ただし、弁護士事務所や司法書士事務所の中には、分割支払いに応じてくれるところもあります。一括支払いが難しいときは担当者に個人再生を相談する際、費用の支払い方法もよく話し合っておきましょう。
まとめ
個人再生の費用について解説してきました。
個人再生を行う際に申立費用や弁護士・司法書士の費用も想定すると、高額な負担が予想されます。
まずは、専門家に個人再生手続をするかどうかについて、無料相談してみましょう。