借金から完全に開放される自己破産のメリットは絶大です。ですが、同時にデメリットも存在します。この記事ではデメリットについてもしっかり触れていますので、自己破産を検討されている方は参考にしてみてください。
自己破産をすると、どの程度のリスクを受けいれる必要があるのか、私達がリサーチした内容をまとめた本記事を読んで頂ければ、およそのイメージはつかめるはずです。
自己破産とは?
自己破産は裁判所にお願いして借金をゼロにする手続きです。自己破産に成功すると借金の返済が一切不要になりますので、生活を立て直す意味では、自己破産に勝るものはありません。
もちろん申請したら自己破産となるわけではなく、借金の返済を免除してもらうからには、たくさんある必要書類を準備して、支払い不能である事実を証明しないといけませんし、価値のある財産は手放す覚悟がいります。
そうでないと、あなたにお金を貸した債権者が納得しないからです。
自己破産のメリット
まずは、自己破産のメリットについて見ていきましょう。
自己破産の主なメリットは以下の通りです。
- 取り立てがなくなる
- 借金がゼロになる
- 生活に必要な財産は残せる余地あり
(1)取り立てがなくなる
自己破産をすると取り立てがなくなります。自己破産を依頼した時点で、弁護士や司法書士は受任通知を各債権者に通知しますが、受任通知には特別な法的効力があり、通知を受け取った側は、債務者に取り立てができなくなるからです。ルール違反にはペナルティが課されます(貸金業法第21条)ので、ほとんどの貸金業者がおとなしく従います。
取り立てがなくなるだけでも、ずいぶんと心が落ち着きますので、それだけで悩みが半減します。なお取り立てがなくなるのは自己破産に限らず、すべての債務整理に共通するメリットです。任意整理や個人再生など、そのほかの方法を選んでも借金の催促は止まります。
自己破産までは考えていないけれども、取り立てから解放されたい人は、任意整理や個人再生がおすすめです。
(2)借金がゼロになる
自己破産をすると借金がゼロ(免責)になります。借金から完全に解放されますので、人生の再スタートが切りやすくなります。このメリットが最も自己破産で大きいメリットです。
例えば、任意整理では利息はなくなるものの借金の元本はまるまる残りますし、個人再生は元本が5分の1まで圧縮されますが、いくばくかは返済しないといけません。自己破産は利息や元本の返済も100%免除されますので、借金の減額効果という点では、間違いなくナンバーワンです。自己破産だけは避けたい一心で、任意整理や個人再生にこだわる相談者もいます。しかし独身ならともかく、子供を育てなければならないサラリーマンやシングルマザーの方々が、借金の返済をしながら家族を扶養するのは並大抵ではないはずです。
いったん借金をゼロにしてしまって、借金の返済ではなく、両親の医療費や子供の教育に金をまわすほうが、現実に叶う場合もあるでしょう。
(3)生活に必要な財産は残せる
自己破産をすると手持ちの資産は手放すのがルールです。しかし例外もあり、下記に該当する財産は手元に残せます。
- 20万円未満の財産
- 99万円以下の現金
- 家具などの生活必需品
自己破産と聞くと借金はチャラになるけど財産は全て処分しないといけないのでは?と考える方もいます。ですが、テレビや家具などの必需品は残りますし、査定を取って20万円未満であれば自家用車も手放さずに済みます。したがって、身ぐるみはがされるわけではなく、自己破産をしても、それまでと変わらず日常生活を継続できるケースが大半です。
自己破産のデメリット
自己破産は、生活に影響がなかった!メリットしかなかった!と自己破産を絶賛する人もいますが、もちろんデメリットもあります。
主な自己破産のデメリットは以下の通りです。
- お金の借り入れできなくなる
- 車(など)のローン組めなくなる
- 分割払いでのスマホの購入ができなくなる
- クレジットカードの利用・発行ができなくなる
- 誰かの保証人になることができなくなる
これらはブラックリストが影響して生じる制限です。
制限は時間の経過とともに解除(自己破産後5-10年程度)されるので、いずれはお金を借りたりローンを組んだりできるようになります。
また、お金に関連する以外にも自己破産の手続き期間中は、以下の行為も制約されます。
- 特定の債権者への返済
- 引っ越し
- 一定の職業に就くこと
- 官報に掲載される
特定の債権者への返済は偏波(へんぱ)弁済といって、ほかの債権者の不公平に繋がるためルール違反です。裁判所の許可を得れば、引っ越しはできます。一定の職業の代表例は、保険外交員や警備員です。
なお、これらは手続き期間中にのみ問題となる制限なので、自己破産の免責がおりれば解除されます。
また、官報とは国が発行する新聞のようなものです。自己破産をすると官報に破産者の氏名と住所が掲載されます。しかし官報を見る一般人などほとんどいないので、官報が理由で自己破産の事実がバレる可能性はほぼ無いと思って構いません。
自己破産の費用
自己破産の費用について解説します。自己破産の費用は同時廃止事件になるか管財事件になるかで流れが大きく異なり、かかる費用にも大きな差が生まれます。
一般的に、自己破産の費用の相場は30万円~100万円程度とされています。金額の開きが大きいように感じるかもしれませんが、自己破産は、同時廃止事件になるか管財事件になるかで、かかる費用に大きな差が生まれるため相場の特定がしづらいのです。
同時廃止はより簡単な手続き、管財事件は重めの手続きというイメージを持っておけば充分です。同時廃止の場合だと管財費用がかからないので、弁護士に支払う費用と裁判所に支払う手数料を合わせて、40万円~50万円くらいが相場となります。
自己破産の費用は高い?
自己破産の費用は、任意整理の費用などに比べると高額です。
しかし自己破産に成功すると借金がゼロになりますので、数十万のお金を払う価値は充分にあります。もっとも管財事件になると、裁判所に納めないといけない手数料が跳ね上がりますので、費用が高いと感じる人も多いでしょう。
自己破産でよくある質問
自己破産でよくある質問を紹介しています。
(1)全てのクレジットカードが使えなくなる?
信用情報機関に事故情報が登録される影響(いわゆるブラックリスト)で、自己破産をすると持っているクレジットカードは全て使えなくなります。あるいは利用停止になっていないとしても、少なくとも自己破産手続き期間中は、クレジットカードを使ってはいけません。
クレジットカードの利用は、たとえ一回払いであってもお金の借り入れに当たるからです。所持しているクレジットカードはすべて弁護士や司法書士に預けましょう。
(2)ブラックリストって何?
ブラックリストとは信用情報機関が管理する信用情報を指します。
自己破産をすると信用情報に「事故情報あり」として登録され、事故登録が抹消されるまでは、返済能力に問題がある人としてみなされます。結果として、お金の借り入れやクレジットカードの発行に際して断られる確率が高くなるのです。
(3)ブラックリストの影響は何年残る?
信用情報機関ごとの事故登録される期間
信用情報機関 | CIC | JICC | JBA(KSC) |
---|---|---|---|
略称 | シー・アイ・シー | 日本信用情報機構 | 全国銀行個人信用情報センター |
事故登録が記録される期間 | 5年 | 5年 | 5年~10年 (自己破産と個人再生は10年) |
信用情報は全部で3つあり、信用情報機関によって事故登録される期間は違います。少なくとも5年はブラックリストの影響を受けると思ってください。
(4)家族に内緒のまま自己破産できますか?
別居の家族には内緒にできる場合がほとんどですが、同居の家族だと提出書類の関係上、内緒のまま進めるのは難しいです。
(5)自己破産をすると車を失うって本当?
自己破産で車を失う場合もありますし、手元に残る場合もあります。例えばまだローンが残っているのであれば車は基本的に失いますし、ローンを払い終えているのであれば車の価値次第です。査定を取って20万円以下なら、自己破産後も乗り続けられる可能性が高いでしょう。
(6)自己破産をすると家族にも迷惑がかかる?
自己破産をしても直接的には家族に影響はありません。ブラックリストに掲載されるのはあくまで本人のみですし、家族の財産が没収されるわけでもないです。(保証人になっている場合を除けば)家族が借金を肩代わりする必要もありません。ただし同居家族に至っては間接的に影響が出る可能性はあります。
マイホームを失った結果、家族で引っ越ししなければならず、それを迷惑と感じる家族もいるでしょう。いずれにしても自己破産をするのであれば、原則としてその事実を同居家族に打ち明けなければならず、黙ったままで手続きしようとすれば、それこそ迷惑がかかる恐れがあります。
(7)勤務先にバレますか?
自己破産をしても勤務先にはバレません。もっとも勤務先に借り入れがあるのであれば話は別です。その場合、勤務先も債権者に含める必要があり、裁判所から勤務先に通知が送付されるからです。
(8)正社員で働いていても自己破産はできる?
できます。勤務形態に関係なく、現在の収入では支払いが難しいと裁判所が判断すれば、自己破産の免責は得られます。
(9)自己破産が失敗に終わることはある?
滅多にないですが、自己破産手続き中にもかかわらずお金を借りる、ギャンブルにお金を注ぎ込むなどの行為をすると、反省する気がないとみなされ、免責がおりない恐れもあります。
(10)自己破産は自分でできますか?
自分で自己破産を申し立てることもできますがレアケースです。裁判所とのやり取りを素人がこなすのは想像以上に大変ですし、書類集めに手間取ってモタモタしていると、業者から訴えられてしまいます。
(11)自己破産はどれくらいの期間がかかりますか?
同時廃止事件か管財事件かにもよりますが、おおむね6か月~1年くらいです。
(12)借り入れ先から嫌がらせにあいますか?
消費者金融やクレジットカード会社からすれば、自己破産はよくあることなので、わざわざ嫌がらせなんてしません。むしろ友人や同僚など、個人の債権者のほうが揉める確率が高いです。
(13)2回目の自己破産もできますか?
2回目の自己破産もできます。ただし1回目の免責許可決定の確定日から7年を経過していないとできません。
まとめ
自己破産のメリットとデメリットについて解説しました。自己破産は借金がゼロになりますので、借金でつまずいてしまった人生をやり直すには、これほどいい制度はありません。
もっとも、多かれ少なかれデメリットを受けいれる必要はあります。リスクの程度がどれほどなのかは、個々の状況によって異なりますので、気になる人は弁護士や司法書士に相談してみましょう。