弁護士コラム

自動車事故にかかわる保険制度

[投稿日] 2018年05月08日 [最終更新日] 2018年05月08日

Q.交通事故を起こした時、逆に交通事故に遭った時、自賠責保険や任意保険といった保険を利用することになりますが、明確な区別がつきません。それぞれどのような保険なのでしょうか。

 

A,自賠責保険とは、自動車損害賠償保障法に基づく保険制度で、強制加入です。このため、強制保険ともよばれています。この自賠責保険は、人身事故の被害救済を目的とするものですので、物損事故の被害は補償の対象になりません。

保険料は政府が決める一方、自動車1台ごとに加入することが義務づけられ、自賠責保険に加入していない自動車は公道を走行してはならず(違反した場合は刑罰が科せられます)、車検を受けることもできません。新車購入時や車検時に支払う金額の中に、自賠責保険の費用が入っているのもこのためです。

 

自賠責保険が支給されるには、まず、保険会社に対して保険金または損害賠償額の支払の請求をする必要があります。

この請求がなされることで事故の内容についての調査がなされ、損害の内容・損害額の算定が行われ、その結果に基づいて保険会社が、保険金などを支給するかどうかを決めることになります。調査の結果、支給されることになれば、その決定に従って保険会社から所定の保険金などが支給されます。

 

自賠責保険は、保険会社と被保険者との間の契約ですから、被保険者(保有者及び加害者)が請求することになるいわゆる「加害者請求」が原則です。しかし、加害者側からしか請求できないとすると、被害者と加害者の示談が成立しなかったり、加害者が誠意を持って話し合いに応じない場合などは、被害者は加害者から賠償金を受け取れないばかりか自賠責保険金さえ受け取れないことになり、被害者の救済に欠けることになります。

そこで、被害者を迅速に救済するために、自賠法で、被害者が直接保険会社に損害賠償金の支払を請求できると規定されています(16条)。これを「被害者請求」といいます。

その他、自賠責保険に未加入で自賠責保険の適用がない事故の場合(加入自動車による事故であっても、加害者の故意による事故・盗難の場合や、ひき逃げ事故で加害者が不明な場合の事故など)でも、加害者に代わって政府が損害を填補する制度(自動車損害賠償保障事業)も設けられています。

 

被害者が加害者に対し、交通事故による損害賠償を民法に基づき請求する場合、加害者に故意、過失があったことを被害者が主張、立証しなければなりません。

しかし、自賠法は、運行供用者(事故のために自動車を運行の用に供する者)は、自動車の運行によって他人を死傷させた場合、

(イ)自己側に過失がなかったこと

(ロ)被害者または第三者の故意、過失によって事故が発生したこと

(ハ)自動車の構造上の欠陥又は機能に障害がなかったこと

を主張、立証した場合に限り、損害賠償を逃れることができますが、いずれか1つでも立証できなければ責任を負わなければならないことになっています。

 

自賠責保険は最低限の損害を補償するということが目的ですから、保険金の限度額が決められています。現在は、死亡保険金の限度額は3000万円、後遺障害は75万円から3000万円(1級常時要介護の場合は4000万円まで)、傷害は120万円です。

 

以上の自賠責保険に対し、任意保険は、自動車を所有、使用する人が、任意に保険会社などの損害の賠償に備えるもので、強制加入ではありません。

先程述べましたとおり、自賠責保険により填補される金額に上限があること、自賠責保険は物損や自損事故には適用がないことなどから、自賠責保険の上乗せや自賠責保険では補償されない損害を填補するために加入するものです。このため、上乗せ保険ともよばれています。

任意保険は、法律で決められている自賠責保険とは異なり、民間の保険会社などが設定するものですので、対人賠償、対物賠償、搭乗者障害、自損事故賠償、人身傷害賠償、車両損害など、保証される内容の組み合わせによる種々の保険があります。

任意保険の補償を受けるには、保険約款に記載されている免責事由(保険会社が保険金支給を免れる事由)がないことが必要です。

また、被害者の便宜のため、被害者が損害保険会社などに対して自賠責保険と任意保険の請求を併せて請求することもできます。これを「一括請求」といいます。

 

自賠責保険で支払われる賠償金には上限がありますから、お車を運転されるのであれば、是非任意保険にも入られることをお勧めします。

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