弁護士コラム

事業承継としての贈与

[投稿日] 2018年07月04日 [最終更新日] 2018年07月04日

Q.事業継承の方法について、相続を待たずに実行できることはありませんか。

 

A.オーナー経営者が、円滑な事業承継の観点から、生前に、自社株式や所有する事業用資産を後継者に贈与することができます。
  しかし、オーナー死亡後に、この生前贈与が他の相続人の遺留分を侵害しているとして遺留分減殺請求がなされることがあります。すなわち、オーナー経営者が、後継者に事業承継のために資産を贈与することは、特別受益に該当し(民法903条1項)、遺留分減殺の対象となるというものです。

  また、事業承継の観点から特に問題となるのは、遺留分算定の基準となる財産の価額が、相続開始時の貨幣価値に換算した価額で評価されることです。
  そうしますと、オーナー経営者が後継者に自社株式を生前贈与した場合で、その後の後継者の努力により経営が改善されて株式の価値が大幅に上がったとします。この場合、遺留分算定にあたっては、当該株式の価値が相続開始時の価値で算定されることとなりますので、後継者が経営努力をしたがゆえに、かえって、遺留分減殺請求を受けるリスクが高くなってしまい、円滑な事業承継の支障になると指摘されていました。

  そこで、オーナー経営者が、事業承継のために自社株式を後継者に贈与する場合に、こうした遺留分減殺請求によるリスクを軽減するため、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が制定され、平成21年3月1日から施行されました。

  この法律は、中小企業の円滑な事業承継のために、①株式贈与に関し、遺留分を制限する民法特例、②事業承継税制、③金融支援の3つの制度を規定しています。

  このうちの①ですが、具体的には、先代経営者の遺留分を持つ推定相続人全員による「除外合意」と「固定合意」とがあります。
  「除外合意」とは、贈与等を受けた自社株の全部または一部について、遺留分算定の基礎財産から除外すること、「固定合意」はその評価額を固定することを合意するものです。「除外合意」によれば自社株贈与等に対する遺留分減殺請求そのものを封じ込めることができ、また、「固定除外」によれば後継者の経営努力による自社株の値上がりによる遺留分減殺請求リスクを回避できることになります。

  もっとも、経営承継円滑化法の民法特例の適用を受けるには、経済産業大臣による確認、家庭裁判所の許可、固定合意の場合の価額の専門家による証明といった手続が必要であるほか、推定相続人全員の合意や事業承継要件・株式保有要件等の要件を満たす必要はあります。
  しかし、これら要件が満たされれば、安心、かつ安定した事業継承が可能となります。

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