弁護士コラム

事業承継と遺言

[投稿日] 2019年02月28日 [最終更新日] 2019年02月28日
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吉川 法生 弁護士 弁護士法人大手前法律事務所

【税理士・司法書士・行政書士・社会保険労務士と連携】解決内容を納得していただけるようなご説明と打ち合わせを心がけています

Q.私は、工場で自動車の部品を製造している会社のオーナーです。
  現在、私は75歳で、次男が会社を手伝ってくれており、この次男に会社を引き継いでほしいと思います。相続人は次男を含め、子ども3人です。
  会社の事業承継の事前対策として遺言が有効であると聞きました。
どのような場合でしょうか。
 

A.事業承継とは、会社の経営権と事業用財産を後継者に移転することです。
これを円滑に行うための法的対策として、①遺言の活用、②贈与・売買、③種類株式等の活用、④株式の分散防止、⑤組織再編、⑥個人保証の問題、等があります。

  今回は、遺言の活用について説明します。
  例えば、会社の発行済株式総数が20,000株(資本金1億円)で、オーナー経営者がこの20,000株を保有しているとします。1株当たりの相続税評価額が15,000円とすると、オーナー経営者の有する株式は、3億円となります。
  この他に、オーナー経営者個人の所有となる工場の土地・建物、預貯金、有価証券が合計で1億2千万円あったとします。

  遺言がない場合、お子さん3人の法定相続分は3分の1ずつとなります。
  次男さんが株式のみを相続したとしても、そのうちの1億4千万円(4.2億円×1/3)しか相続できず、経営権、すなわち、会社の株式の過半数を確保することはできません。さらに、仮に株式のみを相続しても、工場は所有できませんから、信用が低下し、金融機関との取引に悪影響を及ぼしかねません。

  また、遺言がなければ、相続人間で遺産分割の協議をしなければなりません。先程、「次男さんが株式のみを相続したとしても」と記しましたが、そうなるとは限りません。
  協議がまとまらなければ、家庭裁判所に調停の申立を行い、そこで協議がなされます。
  しかし、調停期日は基本的には月に1回のペースでしか開かれませんし、1人でも反対する相続人がいれば調停は成立しません。その場合は審判手続に移行し、最終的に裁判所が分割内容を決定します。

  このような煩雑な遺産分割の手続を避け、すみやかに相続を実行するために遺言は有効です。
  例えば、株式と工場は次男に、預貯金と有価証券は残りの2人に相続させるといった内容の遺言を作成することです。
  遺言を作成する場合の注意点ですが、まず、公正証書遺言を作成することをお勧めします。自筆による遺言の場合ですと、形式的な要件が厳格に定められていますし、保管や紛失の問題があります。また、後日、本人の筆跡でないという争いが生じる可能性もあります。さらに、家庭裁判所で「検認」という手続を経なければいけません。
次に、遺言書には全ての相続財産を網羅しておく必要があります。一部でも抜けている財産があれば、これらの財産について遺産分割の手続をしなければいけません。
また、できれば遺言書の中に遺言の中味を実現してくれる遺言執行者を指定しておいた方がいいでしょう。

  事業承継の対策として遺言を活用する場合のメリットを述べてきましたが、遺言にも限界があります。
  1つは、遺言はいつでも撤回できるということです。後日、事業承継の観点からは好ましくない遺言が作られることもあれば、遺言者の真意に基づかない遺言が何者かによって偽造されるということも想定されます。
  もう1つは、遺留分の問題です。
  遺言を作成しても、その内容が相続人の遺留分を侵害しているときは、その限度で遺言の効力が否定される場合もあります。もっとも、仮に遺言の内容が遺留分を侵害していても、侵害された相続人が1年以内に「遺留分減殺請求権」を行使しなければ、問題ありません。

  相続には人の心が絡んできます。
  遺留分を侵害する内容の遺言を作成した場合も、オーナーがそのような遺言を残した理由を遺言とは別に手紙に書いておくであるとか、オーナーが相続人を集めて遺言書の趣旨を説明しておくという方法をとることもあるようです。
  こうしたことは法律には何も書かれていませんが、事業承継を少しでも円滑に行うためになされているものです。

吉川 法生 弁護士

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相続 離婚・男女 交通事故
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