弁護士コラム

敷金について

[投稿日] 2019年03月15日 [最終更新日] 2019年03月15日
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吉川 法生 弁護士 弁護士法人大手前法律事務所

【税理士・司法書士・行政書士・社会保険労務士と連携】解決内容を納得していただけるようなご説明と打ち合わせを心がけています

私は、5年前から賃貸マンションに住んでいますが、この度、転勤で引っ越すことになりました。マンションの契約を解約するに当たり、改めて契約書を読んでみると、賃貸借契約をするときに家主に支払った敷金30万円は返還されない、と記載されています。私は、今まで賃料を滞納したこともないし、家をひどく汚したり壊したりもしていないのに、敷金を返してもらえないのは納得できません。どうにかなりませんか?
 また、家主は、敷金からハウスクリーニング代を差し引く、といいます。確かに、契約書には、借主は原状に戻して返還しなければならないと記載されていますが、ハウスクリーニング代を負担しなければならないのでしょうか?

 

1 家を借りる際に、家賃以外にも様々な性質のお金を納めることを要求されることがありますね。「敷金」「礼金」「権利金」など、聞いたことはあるのではないでしょうか?
 「敷金」とは、家賃に滞納分があったり、賃借人が建物の一部を壊すなどして、家主に弁償をしなければならないなどの場合に、家主が敷金として預った金銭でこれにあてるためのものです。さて、今回の相談者の方は、滞納もなく、弁償の必要もなさそうです。
 その場合、全額返してもらえるようにも思いますが、契約書に敷金は返さない、という条項が入っていたら、全く返してもらえないのでしょうか?
 この点、過去の裁判例では、このような契約書の敷金は返還しないという条項は、消費者契約法10条に違反して無効であるとし、滞納賃料など、解約の際に家主に対して支払う債務がなければ、家主は賃借人に全額返還しなければならない、と判断しています。したがって、相談者の方は、全額返還してもらうことができるでしょう。
 ちなみに「礼金」「権利金」は、借りることへのお礼としての金銭という意味で支払われることが一般的です。したがって、敷金とは性質が違い、いずれも賃貸借契約が解約されても賃借人には返還されないと思っておいた方がよいでしょう。
2 では、家主は、ハウスクリーニング代を差し引くと主張して、全額返還を拒んでいるようですが、これは、解約の際の原状回復義務の範囲の問題となります。
 確かに、賃借人は、借りていた部屋を原状に戻して返還しなければなりませんが、通常の使用方法に従って生じた汚損の場合は、荷物を運び出して部屋を返せばそれで返還義務は履行したといえるとされています。
 他方、常識の範囲を超えた著しい汚損があった場合などについては、そのまま返したとしても返還義務を履行したといえず、著しい汚損をクリーニングすることは、賃借人の原状回復義務の範囲内といえ、敷金から差し引かれるのはやむを得ないと考えられます。
 今回の相談者の方は、特にひどく汚したり壊したりしていない、というお話ですので、通常の使用方法にしたがって生じた汚損の範囲内だと考えられます。
したがって、ただ新たな賃借人に貸すために新築同様の状態にするための場合のハウスクリーニング代を差し引くという家主の主張は認められません。

吉川 法生 弁護士

注力分野
相続 離婚・男女 交通事故
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