裁判所

裁判所
裁判所は、司法権の行使を担う国家機関です。
日本国憲法76条1項は「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」と規定し、裁判所に司法権が帰属することを明確にしています。裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有します。
本稿では、日本の裁判所の骨格と役割について、概略を解説します。
裁判所の構成 最高裁判所と下級裁判所
裁判所の構成は裁判所法に定められています。それによれば、裁判所は、全国に一つの最高裁判所(最高裁)と下級裁判所からなり、最高裁判所は、最高裁判所長官(1名)と最高裁判所判事(14名)の計15名の裁判官により構成されます(5条)。また下級裁判所には、高等裁判所(高裁)、地方裁判所(地裁)、家庭裁判所(家裁)、簡易裁判所(簡裁)があります。下級裁判所の裁判官は、高等裁判所の長たる裁判官を高等裁判所長官とし、その他の裁判官を判事、判事補及び簡易裁判所判事とすると規定されています(同条)。
高等裁判所には支部を置くことができ(裁判所法22条)、地方裁判所・家庭裁判所には支部または出張所を置くことができます(同31条、31条の5)。2005年(平成17年)4月には、知的財産権に関する事件を専門的に取り扱う裁判所として知的財産高等裁判所(知財高裁)が、東京高等裁判所の「特別の支部」として設置されました。
特別裁判所と行政審判
日本国憲法では、特別の事件や人を裁判の対象とする特別裁判所は、設置することができないと定められています(76条2項)。この規定は、平等原則や司法の民主化、法の解釈の統一などを、その趣旨とするものです。なお、家庭裁判所のように、特定の種類の事件を扱う裁判所であっても、通常の裁判所の系列に属する下級裁判所として設置される裁判所は、特別裁判所にあたらないと解されています。
また、憲法は「行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。」とも定めています(同条同項)。この規定の趣旨も、特別裁判所の設置禁止と同様で、逆に終審としてではなく前審として行うのであれば、行政機関が裁判(正確には行政審判)を行うこともできると解釈されています。独占禁止法に基づく公正取引委員会の審決、国家公務員法に基づく人事院の裁定、行政不服審査法に基づく行政機関の裁決、特許審判、労働委員会命令など、裁判手続によらずに迅速に判断できる制度を置いています。
最高裁判所というところ
最高裁判所は、日本の司法機関における最高機関です。
最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について最高裁判所規則を制定する権限(憲法77条1項)、また、下級裁判所裁判官任命における指名権(憲法80条1項)、司法行政監督権を持っています(裁判所法80条1号)。
また、日本国内の裁判事件の、上告及び訴訟法が定めている抗告について、最終的な判断を下す権限を持ちます(最終審)。そのうえで、違憲審査制における法令審査権を持ち、法令審査に関する終審裁判所となります(憲法81条)。このため、最高裁判所は「憲法の番人」と称されることもあります。
最高裁判所の最も重要な機能は、上告事件について法令の解釈を統一すること、および、憲法違反の疑いのある法令などについて最終的な憲法判断を下す(違憲審査制)こと(憲法81条参照)にありますが、日本では憲法訴訟を可能とするための違憲裁判手続法は未だ確立しているとはいえず、憲法裁判所も存在しないのが現実で、通常の訴訟の中で違憲が争われた時に限って判断するにすぎません。そうしたあり方には賛否両論があります。
最高裁判所の判決の傍論の扱い
最高裁判所の判決文には、判決となった多数意見と別に、傍論として、裁判官それぞれの個別意見が表示されることがあります。意見には一般に、補足意見、意見、反対意見があります。
・補足意見とは、多数意見に賛成であるが、意見を補足するもの。
・意見とは、多数意見と結論は同じであるが、理由付けが異なるもの。
・反対意見とは、多数意見と異なる意見をいう。
・追加反対意見は反対意見にさらに補足するもの。
日本では、公式の判例集の編纂は、最高裁判所自身が判例委員会によって行っています。原則月1回出版されており、最高裁判所民事判例集、最高裁判所刑事判例集等があります。
裁判所ウェブサイトでは、最高裁判所判例集、高等裁判所判例集。下級裁判所判例集、行政事件裁判例集、労働事件裁判例集、知的裁判判例集を検索することができます。
下級裁判所
下級裁判所とは、日本の裁判所の中で最高裁判所を除く裁判所のことです。最高裁判所に対する関係で「下級」の裁判所であることを示す憲法上の用語・法令用語であることから、最高裁判所に次いで上級の裁判所となる高等裁判所も下級裁判所に属します。
下級裁判所については、法律の定めるところにより設置する(日本国憲法76条1項)とされ、裁判所法2条1項が高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所という種類を定め、同条2項及び下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律が各裁判所の設立、所在地及び管轄区域について定めています。
高等裁判所
高等裁判所は、最高裁判所の次に位置し、全国の8か所にあり、概ね控訴審を担当します。本庁のほか、必要に応じて各本庁管内に支部が置かれます(裁判所法22条)。
また、2005年(平成17年)4月より、知的財産に関する係争について専門的に取り扱うための知的財産高等裁判所が東京高等裁判所の「特別の支部」として設置されました。
高等裁判所の長たる裁判官は高等裁判所長官といい(裁判所法5条2項)、管内の司法行政上の事務を統括しています。
高等裁判所が裁判権を有する事項の主なものを掲げます。
・裁判所法16条各号で規定されるもの:民事・刑事の控訴事件、抗告事件、内乱、内乱予備、内乱陰謀、内乱等幇助の罪に係る訴訟の第一審
・裁判所法17条による、他の法律において特に定める権限:人身保護法4条の人身保護請求の第一審、公職選挙法第15章「争訟」で規定される行政訴訟の第一審
・独占禁止法85条に規定される、独占禁止にかかる訴訟の第一審(東京高裁)
・特許法178条などで規定される特許庁の審決及び再審の却下の決定に対する第一審(東京高裁の知財高裁)
・海難審判法44条で規定される、海難審判所の裁決に対する訴訟の第一審(東京高裁)
・電波法及びそれに基づく命令の規定による総務大臣の処分に対する訴えの第一審(東京高裁)
このほか、知的財産高等裁判所は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、回路配置利用権、著作者の権利、出版権、著作隣接権若しくは育成者権に関する訴えまたは不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴えについての地方裁判所の第一審判決に対する控訴で審理に専門的な知見を要するもの、また特許庁の審決及び再審の却下の決定に対する訴えを取り扱います。
地方裁判所
地方裁判所とは、特定の地域を所管する裁判所を意味し、一般に、通常司法事件の第一審裁判所としての役割を担っています。
日本の地方裁判所は、原則的に訴訟の第一審を行う裁判所であり、また、簡易裁判所の民事の判決に対する控訴事件の第二審、各種令状に関する手続きも行います。そのほか、訴訟以外の事件、会社更生、民事再生法、破産などに関する手続も行っています。
地方裁判所は、各都道府県庁所在地並びに函館市、旭川市及び釧路市の合計50市に本庁が設けられているほか、支部も設けられ、支部を含めて全国に253ヶ所設置されています。
家庭裁判所
家庭裁判所は、主に家事事件手続法と少年法を対象法規とし、また離婚などの人事訴訟関係や、戸籍名(氏名)の変更、性別の変更、養子などの審判も取り扱っています。裁判官以外とは別に家庭裁判所調査官が置かれ、人間科学に関する専門的知見を活用して、家事審判、家事調停及び少年審判に必要な調査や環境調整などの事務を行っています。
裁判は、通常公正を期すために公開されるのが原則ですが、家庭裁判所では離婚などの事件を除き、当事者のプライバシーに配慮し、原則として非公開とされています。
家庭裁判所は、各都道府県庁所在地並びに函館市、旭川市及び釧路市の合計50市に本庁が設けられているほか、支部及び出張所も設けられています。支部を含めほぼ地方裁判所と同様の配置だと理解すればわかりやすいでしょう。
簡易裁判所
先に述べたように、地方裁判所は、通常第一審事件を管轄していますが、これに対し、訴訟価額が140万円以下の請求(行政事件訴訟を除く)による民事事件と、罰金以下の刑(他には拘留、科料)にあたる刑事事件については、簡易裁判所が第一審の役割を果たしています。また裁判以外では、調停委員を交えた当事者間の話し合いにより紛争解決を図る民事調停も、簡易裁判所の業務です。
現在、全国の主要・中小都市を中心に400数十箇所に設置されています。
裁判所を得意としている弁護士
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弁護士法人エース横浜事務所戎 卓一 弁護士 兵庫県
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