夫婦財産契約
[投稿日] 2014年01月07日 [最終更新日] 2016年10月28日
結婚したら、結婚前に夫婦それぞれが所有していた財産はどうなるのでしょうか?「結婚する前から持っていたのだから、結婚しても自由に使ったり、処分したりできるんじゃない?」と考えるのが自然でしょう。民法762条1項も、「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。」と定め、結婚前から所有していた財産については自由に使用・処分することができるとしています。
では、結婚後に取得した財産はどうなるのでしょうか?民法762条1項は、結婚後に取得した財産でも、「自己の名で得た財産」は特有財産となると定めていますので、夫婦がそれぞれ勤務先等から受け取る給与は、特有財産となります。
これに対し、結婚後に取得した財産のうち、どちらに属するか明らかでないものについては、夫婦の共有に属すると推定されます(民法762条2項)。
つまり、夫婦が受け取った給与はまず、それぞれの特有財産となり、そこから生活費用の預金口座や財布に移された時点で共有財産となると考えられます。そして、生活費で購入した家具や家電はどちらに属するか明らかではありませんから、共有となるわけです。
これに対し、上記とは別の取り決めを夫婦間ですることもできます。これを夫婦財産契約といいます。この契約を締結することにより、婚姻前の財産を夫婦共有にしたり、婚姻後の夫婦が受け取る給与を最初から共有にすることもできます。
ただ、夫婦財産契約は婚姻の届出前に締結しなければならないとされており(民法755条)、また、第三者に対してその効力を主張するためには登記をしなければならない(民法756条、外国法人の登記及び夫婦財産契約の登記に関する法律5条以下)とされているため、実際にはほとんど利用されていません。
平成23年に行われた夫婦財産契約の登記は10件で、婚姻数(66万1899組)に対する比率は、実に0.0015%です。平成14年から平成23年までの10年間でも63件にとどまります。
夫婦財産契約登記を行うには、まず、夫婦財産契約をしなければなりません(契約書等が登記時の添付書類として必要となります。夫婦財産契約登記規則8条)。定型の書式はありませんが、個々の財産について所有関係を定めるのであれば、特定に必要な情報が必要となります(不動産であれば登記情報等、動産であれば型番等)。
なお、夫婦間で「光熱費は夫の負担、通信費は妻の負担」と決めることは、夫婦内部での取り決めにすぎませんから、婚姻後でもすることができます。ただ、そのような取り決めの効果を第三者に主張することはできません。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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