クリエイターが活動をする中で、知っておくべき法律やお金の知識は?(第2回)
[投稿日] 2020年10月14日 [最終更新日] 2020年10月14日
法律全般を得意としている弁護士
戎 卓一 弁護士 兵庫県
戎みなとまち法律事務所小原 望 弁護士 大阪府
小原・古川法律特許事務所クリエイターは、常に新しい何かを創り出すことが仕事である。そこで、クリエイター自らが創り出した作品を守っていくために、最低限身につけておくべき「法律」や「お金」「税」の知識があります。
そこで、若手クリエイターの宮島さんとワールド法律会計事務所の渡邉祐介弁護士と山口義重税理士とで、リモート対談を行っていただきました。今回は、前回に続きその後半を掲載します。

当事務所は弁護士をはじめ、税理士・社会保険労務士・司法書士といった士業で、相談者様の悩みをワンストップで解決いたします。少数精鋭のとてもアットホームな雰囲気の事務所です。法律・税務の問題はご相談ください。
渡邉 祐介 弁護士 弁護士になる前は、IT企業のサラリーマンという異色の経歴の持ち主。相談者の主張や立場を深く理解し、親身になって寄り添う姿勢が、法律の狭間で苦しむ方から高い評価を得ている。
山口 義重 税理士 国内大手生命保険会社勤務を経て、税理士業界に転身。税理士という立場で、お金についての問題はもちろん、それだけでなく、あらゆる相談にも幅広くお客様をサポートしています。

図と無機質が好き。イラストレーションを軸に、グラフィックデザインや現代アートなど多様に表現して生きている。現在は四角形が密集している集合体の作品で活動をしている。(公式ウェブサイト https://minamimiyajima.com/)
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MINAMI MIYAJIMA
クリエイターとして様々な作品を作ってますが、世間に発表したものしなかったものなど、創作ものには著作権は持てますか?クリエイターになる前に創作したものにも著作権はありますか?

渡邉 弁護士
はい。著作権というのは、作品を創作した人に属する権利です。作品を作った人であれば誰でももてるといえるでしょう。会社や団体などの法人であっても、著作権者となることはできます。
ただし、どんな作品でも著作権が発生するわけではなく、作品が「著作物」といえなければなりません。
著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とされています。 単なるデータ、独創性のないありふれたもの、頭の中にあって表現されていないアイデアなどは著作物とは言えません。
具体的には、音楽の著作物、舞踊又は無言劇の著作物、美術の著作物、建築の著作物、地図又は図形の著作物、映画の著作物、プログラムの著作物などとされています。
著作権は、出願して登録しなければ認められない特許や商標と違い、著作物を創作した時点で発生する権利です。 著作物の創作者であれば、誰でももてるものといえるでしょう。

MINAMI MIYAJIMA
前の質問に関連してなんですが、著作権の保護期間というのはあるのでしょうか?ある場合はいつまでですか?

渡邉 弁護士
保護期間は、原則として著作者の死後70年までとされています。 たとえば、手塚治虫さんの漫画であれば、1989年に亡くなられた手塚さんの著作権が保護されるのは、2059年12月末日までになります。
作品の作成時からではなく、死亡の翌年(正確には死亡の年の翌年1月1日)から起算されるというのがポイントです。
著作者名の表示がなかったり、又はペンネームや略称など、実名以外の名前や団体名が表示された著作物の場合や、映画の著作物の場合は、作品が公表された年の翌年から起算されます。

MINAMI MIYAJIMA
不慮の事故など、万が一クリエイターがなくなってしまった場合、著作権は誰に相続されるのでしょうか?

渡邉 弁護士
著作者が亡くなった場合には、原則として著作権は法定相続人が相続することになります。 相続人が複数いる場合、通常の財産権と同様に、著作権を誰が取得するかを遺産分割協議で決めるのがトラブル防止の観点からオススメです。
ちなみに、著作権には「著作人格権」という権利が含まれているのですが、これは作品を制作した著作者のみに帰属するものになります。
このような、他人に移らない権利を一身専属権というのですが、たとえば、著作物を公表するかどうかを決める権利、公表するときに著作者名を表示するかどうかを決める権利、著作物の内容やタイトルを著作者の意思に反して変更されない権利などを著作人格権といい、制作者だけに認められるものとされています。
ですので、これは作家が亡くなった場合には相続されずに消滅することになります。

MINAMI MIYAJIMA
依頼され創作した作品の著作権に関してはどのような形で契約を結ぶのが良いでしょうか?作品やクリエイターの知名度に関係なく、契約はした方が良いでしょうか?

渡邉 弁護士
クリエイターの方でよくあるご相談では、クライアントのために作品を制作するときに、その著作権がクリエイターとクライアントのどちらにあるのか?で揉めてしまうというものです。
このあたりに特に触れずに発注を受けて制作、納品まで終えて、その後で、双方が著作権は自分にある、と主張して争いに発展することが多いのです。特に多いのが、その作品が爆発的に人気が出たり売れたりした場合です。
億単位のビジネスだという場合など、はじめから契約のインパクトが大きいということが分かりきっている場合はしっかりと契約書を交わしておこうという気にもなるのですが、双方が「そこまで人気が出るとは思っていない」というような場合、契約にもそこまで時間的・費用的コストをかけようという気にもなりにくいのです。
著作権の場合に限らずですが、揉めないためには事前にしっかりと契約で著作権の帰属、利用範囲などを決めておくことが必須です。
「この作品は人気が出る!」と確信して作品を世に放ち、人気が出て売れた場合にも揉めないように、契約では著作権の帰属、クリエータとクライアントがそれぞれ作品を利用できる範囲について、決めておくことがとても大切だと思います。

MINAMI MIYAJIMA
過去に作った作品を含め、クリエイターが創作した作品を無断で使用されていたら出来ることはあるのでしょうか?

渡邉 弁護士
著作権制度がなぜあるのかというと、著作者が努力して、たくさんの苦労をかけて制作した著作物が正しく利用されるように促し、著作権を保護することで著作者に報いるのと同時に、日本の文化全体が発展できるようにするためにあります。
ですので、無断使用のような著作権の侵害があった場合、著作権者は侵害者に対して、使用を止めさせたり、お金を請求したり、名誉回復のための措置を求めたりすることができます。
また、日本の文化全体の発展という制度趣旨から、著作権侵害は犯罪として刑罰も課されます。
ただし、著作権侵害は、一部を除いて、著作権者が無断使用をした人に処罰を与えてほしいという意思を示さなければ刑罰は課されない仕組み(これを親告罪といいます)になっています。
著作権者が目をつぶっている場合にまで刑罰を課す必要性はない、という考え方によるものです。

MINAMI MIYAJIMA
また、無断利用ではなく、創作した作品が盗作されている可能性が高い場合、法律では盗作の基準って決められているのでしょうか?

渡邉 弁護士
盗作・パクリかどうか、というのは、見極めが非常に難しい問題です。
それは、法律で決められているものの、その基準が抽象的なのと、真似たのかどうかというのは、真実は作った本人しか分からないためです。
盗作を法的な用語でいうと、もともとある著作物に「①依拠して」「②類似している著作物を作成する行為」とされていて、これだけで、いろんなケースを判断するわけです。
単に似ていたとしても、結果としてたまたま既存の作品に類似していたものが出来上がってしまった、という場合には、①依拠性は認められず、盗作にはなりません。
ただ、「たまたま」なのか、「故意に真似た」のかは、本人だけが知っていることで、本人は「真似てない!」と言い張ると判断するかが難しくなるのです。
この場合、作品に独自性がどの程度あるのかや、盗作したとされる本人が元の作品にアクセス可能だったかどうか、などから判断されることになります。
②類似性については、「既存の著作物の表現形式上の本質的特徴部分を、新しい著作物からも直接感得できる程度に類似しているかどうか」で判断するとされています。
・・・当然、これだけではラインは引けませんね。個々のケースごとに、過去の裁判例で類似性が認められたケースなどを参考にしながら、この基準にあたるかを判断することになります。
創作作業というのは、過去に受けたインスピレーションや、過去に何かしらの創作物を知覚した積み重ねを経て、その中から新しい創作物が誕生するのが普通ですから、すくなからず、過去の作品との共通性は出てしまうものです。
②類似性を認めるにしても、どの程度から盗作とするのかというのも難しい問題なのです。

MINAMI MIYAJIMA
逆に、自分が創作した作品が、根拠や証拠もなく、理不尽に盗作だと言われてしまった場合は、どのような対応したらいいでしょうか?また、法律で解決できるのでしょうか?

渡邉 弁護士

MINAMI MIYAJIMA
クリエイターとして、税理士の方へ活用しようと思った場合、どの程度自分が売れっ子になったら、自分でやるよりメリットがあるのでしょうか?
また、自分がまだ売れっ子ではない場合には、税理士を利用すると費用がかかる分、損になってしまいますか?

山口 税理士
売上がここから、というラインは一概には言えませんが、毎月の会計処理や確定申告の作業に費やしている時間がそれなりにかかっているとすれば、その時間を本業に費やしたほうが税理士費用分以上に売上につながる、というところが分水嶺となるイメージだと思います。
また、税理士は事務的作業の代行だけでなく、「このタイミングでは、このように行動しておくことで●●●万円得になる」というような経済的メリットの出るアドバイスもさせていただいています。
「本業に集中したい」という感覚が湧いた瞬間が、税理士を雇うタイミングかもしれませんね。

MINAMI MIYAJIMA
税理士の方にお願いをする場合の費用は高そうなイメージなんですが、実際のところの費用ってどのくらいかかるのでしょうか?

山口 税理士
費用はサービスのレベルや、お客様の会計事務の量によって変わってきますので、ものすごく取引の数が多ければ費用も増えますが、逆に少なければ費用も低く抑えられます。
毎月数万円からというのが一般的ですが、最近では数千円からという事務所もあるようです。

MINAMI MIYAJIMA
もし、売れっ子クリエイターになって、人並み以上に稼ぐ事が出来た場合、万が一確定申告をしていなかったら、罰則とかあるのでしょうか?

山口 税理士
個人事業主として所得がある場合は、確定申告と納税はしなればなりません。 これは売れっ子になっていてもいなくても同じです。
納税は国民の義務ですので、納税が遅れれば重加算税というペナルティが課せられる場合もありますし、額が大きくなって悪質だと判断されれば、刑事事件になる場合もありますので注意が必要です。
クリエイターとして、「法律」「お金」「税」に関するトラブルにお悩みの方は、お一人で悩むのではなく、一度弁護士や税理士に相談してみてはいかがでしょうか。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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