弁護士に依頼するための費用はどのように決まる?
[投稿日] 2020年10月15日 [最終更新日] 2020年10月15日
法律関連のトラブルに巻き込まれたり、契約書などを作成する必要が生じたりした場合、弁護士への依頼を検討することになります。 しかし、弁護士に初めて依頼をする場合、弁護士費用の面が心配になりがちでしょう。
たしかに以前であれば、弁護士は「殿様商売」「不明朗会計」などという悪いイメージで語られることも珍しくありませんでした。 しかし、最近は弁護士の間でもサービス業としての意識が高まっており、全体的に明朗会計を意識する弁護士事務所が増えています。 そのため、ある程度事前に弁護士費用の金額についての予測を立てることもできるようになり、費用面での依頼のハードルは下がっているといえるでしょう。
この記事では、弁護士費用がどのように決まるのかわからないという方向けに、弁護士費用の決め方のパターンなどについて解説します。
1. 弁護士費用の決め方のパターンを解説現在では、弁護士費用については、各弁護士が自由に設定するようになっています。
以前は、日本弁護士連合会の報酬基準が定められており、弁護士費用の設定については報酬基準に従うことが義務付けられていました。 しかし、現在では報酬基準は撤廃され、弁護士がそれぞれ個別に報酬基準を定めています。
弁護士費用の決定方法には、主に①固定報酬制、②着手金・成功報酬制、③タイムチャージ制の3種類があります。
それぞれの概要について見ていきましょう。
1-1. 固定報酬制固定報酬制は、依頼時点で報酬の総額を合意する方法です。
実費は別途となるケースもありますが、基本的には依頼時点で決まった報酬金額を支払えばそれでおしまいのため、もっとも明朗な会計方法といえるでしょう。
固定報酬制は、「定型的かつ完結型」の業務で採用されることが多くなっています。
たとえば、
・遺言書の作成
・相続放棄
・内容証明郵便の送付
などは、固定報酬制が採用されることが多いようです。
1-2. 着手金・成功報酬制着手金・成功報酬制は、依頼時に着手金を支払い、案件終了時に得られた経済的利益の金額に応じた成功報酬を支払うという、二段階方式の報酬決定方法です。
着手金・成功報酬制が採用されるのは、「依頼者が金銭を獲得できる案件」です。 これには非常にさまざまなパターンがありますが、一例を挙げると以下のとおりです。
・遺産分割、遺留分侵害額請求
・離婚協議、離婚調停、離婚訴訟
・残業代請求
・過払い金請求
タイムチャージ制は、「時給制」と理解すればOKです。
つまり、弁護士が実際にその案件の処理に費やした時間を集計して、弁護士ごとに設定されている時間単価にかけることで、報酬の総額を計算するということになります。
タイムチャージ制は、比較的どのような案件にも適用し得る報酬体系ですが、企業法務系の弁護士事務所で採用される傾向が強くなっています。 特に大手の法律事務所では、案件の種類にかかわらず、一律でタイムチャージ制を採用しているところも複数あります。
なお、タイムチャージ制の時間単価は、弁護士の能力や経験年数によってバラバラに設定されています。 事務所によってかなり幅があるものの、だいたい1時間当たり2万円から10万円程度の幅に収まっていることが多いようです。
2. 事前に弁護士費用を準備することが難しい場合はどうする?タイムチャージ制以外は、弁護士が案件に着手する以前に、弁護士費用の前払いが必要となるのが通常です。
しかし、依頼者が経済的に苦境に立たされている場合には、弁護士費用を事前に準備することが難しいケースもあるでしょう。
その場合でも、弁護士に適宜相談することにより、経済的に無理なく弁護士に依頼をすることができます。
弁護士費用は弁護士が自由に決めているものなので、依頼者の事情に応じて、比較的柔軟に変更してくれることも多くなっています。 もし弁護士費用の支払いが難しいと感じている場合は、弁護士に事情を説明して、無理なく支払える方法を提案してもらえるようお願いすると良いでしょう。
2-2. 依頼者の費用負担を軽減するために考えられる方法依頼者の費用負担を軽減する方法の具体例としては、以下のようなものが考えられます。
2-2-1. 分割払い
固定報酬や着手金を一括で準備できない場合、分割払いを認めてくれる場合があります。 あまり多くの回数での分割払いは認められにくいですが、2回・3回程度の分割払いであれば、比較的柔軟に認められやすいでしょう。
2-2-2. 着手金・成功報酬の配分調整
着手金・成功報酬制の場合、依頼時よりも案件終了時の方が、依頼者が経済的利益を得ている分、弁護士費用を支払う余裕があります。 そのことを利用して、着手金と成功報酬の配分を調整し、着手金を少なめ・成功報酬を多めに設定することにより、弁護士費用の支払いを容易にするという工夫が行われています。
ただし、依頼者が案件を通じて多額の経済的利益が得られた場合には、弁護士費用の総額もより高額になってしまうことに注意が必要です。
2-2-3. 費用上限(キャップ)の設定
依頼者側で最初から予算が決まっている場合、弁護士費用に上限(キャップ)を設けてしまうことも、交渉次第では可能です。
特にタイムチャージ制で弁護士に依頼する場合、キャップの交渉が行われることが多いようです。
2-2-4. 法テラスの利用
経済状況が非常に悪く、そもそも弁護士費用を支払う余裕が全くないという場合には、法テラスを利用するという選択肢もあります。 法テラスでは、相談者の経済状況を審査したうえで、条件を満たす場合には弁護士費用の立替払いをしてくれます。
立替金については、案件終了後に、法テラスに対して少しずつ返済していけばOKです。
弁護士費用の面での不安を取り除くためには、できるだけ明朗会計の弁護士事務所を選びたいところです。
明朗会計の弁護士事務所を選ぶためには、どのような点に注目すれば良いのかについて解説します。
3-1. 公式ホームぺージの弁護士費用に関する記載を確認する弁護士を選ぶ段階で一番参考になるのは、やはり公式ホームぺージです。
最近の弁護士事務所のホームページには、弁護士費用についてのテーブルが明記されていることも多くなっています。 弁護士費用について詳しく記載されている弁護士事務所の方が、一般的には明朗会計である可能性が高いといえるでしょう。
3-2. 相談時に口頭で細かく確認する公式ホームぺージに弁護士費用についての記載があったとしても、実際に依頼をしてみると、事前に知らされていない費用が掛かってしまうということが少なくありません。
このような事態を避けるためには、弁護士に相談する段階で、弁護士費用の詳細を詳しく聞いてみるしかありません。
最近では、初回の法律相談を無料で対応している場合も多いので、弁護士費用についての不安がある方は、初回無料相談の場で弁護士に質問してみましょう。
4. まとめ弁護士費用に「高い」「不明朗会計」というネガティブなイメージを抱いている方は未だに多いですが、しっかりと弁護士事務所を吟味すれば、明朗会計の場合もたくさんあります。
また、弁護士費用を支払うのが難しい場合でも、無理なく支払いを行うための工夫が設けられているケースが多くなっています。 弁護士費用の面で不安がある方は、お気軽に弁護士に相談してみてください。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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