弁護士と他の士業の違いは?司法書士・行政書士と比較してみた
[投稿日] 2020年10月23日 [最終更新日] 2020年10月23日
法律全般を得意としている弁護士
一般の方が法律に関するトラブルに巻き込まれた際には、専門家に対応を依頼するのが安心です。
法律の専門家というと、真っ先に弁護士が思い浮かぶ方が多いでしょう。
しかし、他にも司法書士や行政書士といった士業も存在するので、どの士業に頼んだらよいのかわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、司法書士・行政書士・弁護士の3者を比較しつつ、どの士業に法律トラブルを相談すれば良いかについて解説します。
1. 司法書士・行政書士・弁護士の業務内容は?司法書士・行政書士・弁護士は、いずれも法律に関する資格職ですが、取り扱っている業務内容はそれぞれ異なります。
まずは、3者の業務内容の概略を見ていきましょう。
1-1. 司法書士の業務内容司法書士は、法律に関する業務の中でも、登記と供託に関する事務に特化した士業です。
特に登記については、不動産登記や商業登記などのさまざまなジャンルを取り扱っています。
さらに司法書士は、法務大臣の認定を受けることにより、訴額140万円以下の法律事件に関する相談に応じたり、簡易裁判所における訴訟の代理人に就任したりすることが認められています(司法書士法3条2項)。
これらの業務を行うことについて、法務大臣の認定を受けた司法書士を、「認定司法書士」と呼んでいます。
行政書士は、官公庁に提出する書類や、その他権利義務または事実証明に関する書類の作成を専門に取り扱う士業です。
官公庁に提出する書類の例としては、各種助成金の申請書や、在留資格の申請書などが挙げられます。
また、一般的な契約書や覚書などの作成についても、行政書士の中心的な業務の一つとなっています。
弁護士は、法律に関する業務全般を取り扱う士業です。
弁護士と聞くと、裁判(訴訟)で法廷に立っている姿をイメージする方が多いかもしれません。
しかし実際には、それ以外にもさまざまな法律に関する業務を取り扱っています。
たとえば、
・契約書の作成、レビュー
・取引に関する契約交渉
・債権回収
・労働問題への対応
・離婚の話し合い
・相続(遺産分割協議、遺言書の作成など)
などへの対応が、弁護士業務の典型例として挙げられます。
2. 弁護士は法律の万能資格弁護士は、法律に関する業務であれば、一切制限なくすべて取り扱うことができます。
たとえば司法書士が取り扱う登記・供託に関する業務や、行政書士が取り扱う各種書類作成の業務についても、弁護士は職務上取り扱うことが認められています。
その一方で、「弁護士にしか取り扱うことのできない法律事務」が存在します。
それは簡単に言えば、「当事者同士で争いになってしまった法律事件」に関する業務です。
争いが生じていないケース、たとえば、
・これから取引をしようとする者同士の契約書の作成
・官公庁に対する申請書類の作成
などについては、行政書士でも取り扱うことができます。
これに対して、当事者同士で揉め事になってしまったケース、たとえば、
・債権が期限どおり支払われなかった場合
・遺産分割協議で揉めてしまった場合
・交通事故で被害者と加害者の関係にある場合
などにおいては、原則として法律事務を取り扱えるのは弁護士のみです。
唯一の例外として、法務大臣の認定を受けた「認定司法書士」には、当事者同士で争いになってしまった法律事件を取り扱うことが一定の範囲で認められています。
しかし、「訴額140万円以下の事件に限る」という制約があることから、請求額が140万円を上回ることが見込まれる事件を取り扱えるのは弁護士だけになります。
このように、弁護士は法律に関する万能資格であり、法律で困ったら弁護士に相談をすればまず間違いないといえるでしょう。
取り扱える業務 | 司法書士 | 行政書士 | 弁護士 |
---|---|---|---|
契約書や官公庁への提出書類などの作成 | 〇 | 〇 | 〇 |
登記・供託に関する事務 | 〇 | × | 〇 |
取引相手などとの契約交渉 | △※1 | × | 〇 |
不法行為の加害者との示談交渉 | △※1 | × | 〇 |
法律相談 | △※1 | × | 〇 |
簡易裁判所における訴訟の代理人(訴額140万円以下) | 〇※2 | × | 〇 |
地方裁判所以上の裁判所における訴訟の代理人 | × | × | 〇 |
※1金額が140万円以下かつ認定司法書士のみ
※2認定司法書士のみ
弁護士は、法律事件を取り扱うことのできる士業として、さまざまな面で認定司法書士とよく比較されます。
特に弁護士費用については、司法書士費用に比べて高額と言われることがありますが、実際のところはどうなのでしょうか。
3-1. 平均的には司法書士よりやや高額と思われるたしかに、弁護士の方が認定司法書士よりも業務範囲が広く、より難関の資格として認知されていることもあり、平均的に見れば弁護士費用のほうがやや高額に設定されている傾向にあると思われます。
ただし、それほど大きな乖離があるわけではなく、数万円程度の差に留まることが多いようです。
3-2. 実際の費用は弁護士によってケースバイケースそもそも、弁護士費用はそれぞれの弁護士が自由に設定しているので、同じ案件を依頼するにしても、実際の費用は弁護士によってかなり幅があるのが実態です。
そのため、一概に弁護士費用の方が司法書士費用よりも高額とは言い切れず、弁護士によっては、司法書士費用の水準よりも安い弁護士費用を設定しているケースもあります。
4. 弁護士と認定司法書士、どちらに依頼すべきか?法律に関するトラブルへの対応を専門家に依頼したい場合に、弁護士と認定司法書士のどちらに依頼をすべきかについて解説します。
4-1. 最初から弁護士に依頼すれば2度手間を防げる弁護士と認定司法書士の決定的な違いは、対応可能な事件に訴額の制限が設けられているか否かの点にあります。
法律に関するトラブルで、相手方に対して金銭を請求したり、逆に請求されたりする場合、請求額が途中で変更になることは日常茶飯事です。
これは、事件についてよく調べているうちに、次々と新たな事実が判明することがあるからです。
たとえば、
・交通事故に遭い、軽傷で済んだと思っていたら、後から重症化して後遺障害が残った
・遺産分割で、ほとんど財産はないと思っていたら、後から隠し財産が判明した
などのケースが考えられます。
当初は請求額140万円以下の案件だろうと考えて認定司法書士に依頼をしたとしても、後から請求額が140万円を超えることになった場合には、認定司法書士を解任して、改めて弁護士に依頼をしなければならなくなります。
当初から弁護士に依頼をしておけば、こうした2度手間を避けることができるので、基本的には当初から弁護士に依頼をしておくのがおすすめです。
4-2. 少額の事件であれば司法書士でも可請求額が140万円を超える見込みがまずないと考えられる事件であれば、費用の安さを重視して司法書士に依頼するということも選択肢に入るでしょう。
認定司法書士に依頼しても良いかどうかを判断する際には、請求額自体が少ないということに加えて、シンプルな案件であるということもポイントになります。
複雑な案件だと、当初はわからなかった事情が後から判明して、請求額が140万円を超えてしまう可能性が高いからです。
たとえば、金額が決まっている債権の回収などであれば、後から請求額が膨れ上がる可能性は低いので、認定司法書士に依頼をしても良いでしょう。
一方、相続や交通事故などの複雑な案件については、当初から弁護士に依頼することをおすすめいたします。
5. まとめ弁護士は法律に関する万能職であり、司法書士や行政書士の業務もすべて取り扱うことができるほか、弁護士にしかできない業務も存在します。
法律に関する悩みがある場合には、基本的には当初から弁護士に依頼するのが安心ですので、お気軽にお近くの弁護士までご相談ください。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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