明記されていなくても罰金は払う必要はある?

Legalus編集部さん 2014年04月07日

 さくらんぼ狩りに出かけました。農園で採ったさくらんぼを、ついこっそり鞄へしのばせたとき、農園の人に見つかって大声で怒鳴られてしまいました。そして、「罰金をいただきます」というのです。
 確かに「お持ち帰りできません」という注意書きは掲示してありましたが、どこにも「罰金をいただきます」とは書いてありませんでした。
 スーパーでも商品を鞄にいれてもお店を出る前に返せば盗んだことにならないように思うのですが・・それと同じに考えれば、「食べて帰ってください」の注意程度でいいのでは、と思うのですが。
 誰でも「罰金」という言葉を使ってお金を請求できるものなのでしょうか。

(30代:女性)

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Legalus編集部

     さくらんぼ、梨などの果物を、料金を支払って収穫して楽しむサービスがあります。
     収穫した果物は、自由に持ち帰ってよいとされている場合と、農園内で食べることはできるが、持ち帰ることは禁じられている場合があります。
     参加する立場とすれば、これは単なる決まりであってどちらでもいいようにも思えます。しかし、この違いは料金に反映されているはずなので、これに違反すれば、民事上は契約違反民法415条)、不法行為民法709条)となりますし、刑事上は窃盗罪刑法235条)が成立することがあります。

     あなたが「スーパーでも、商品を鞄にいれてもお店を出る前に返せば盗んだことにならない」といわれるのは、正確ではありません。
     実は、これは、窃盗罪の既遂時期をいつと考えるか、という問題なのです。なぜこんなことが問題になるかというと、犯罪の実行に着手しても、既遂となるまでは犯罪は未だ完成せず、未遂にとどまるからなのです(しかし、未遂も犯罪なので注意してください)。
     窃盗罪の既遂時期は、被害者が財物の占有を失い、行為者が占有を取得した時点です。これは、「行為者がいつ財物の事実的支配を取得したか」を、目的物の性質、大きさ、犯行現場、犯行当時の状況などの事情により、事案にしたがって判断するしかありません。
     たとえば、宝石売り場でダイヤの指輪をポケットに入れたという場合なら、ポケットに入れた時点で、行為者はすでに事実的支配を取得したといえるでしょう。店の外に歩み去らなければ既遂とならない、というわけではありません。
     スーパーでも、商品の大きさや犯行当時の状況によっては、鞄に入れた時点で既遂となる可能性があります(ただし、店側として、客に失礼にならないよう、店を出るまで様子を見るということは考えられます)。そして、いったん既遂となれば、店を出る前に被害者に返したからといって、犯罪が成立しなかったことになるわけではありません

     では、農園でさくらんぼを鞄に入れた時点で、既遂が成立したといえるでしょうか。これはなかなか微妙です。しかし、犯行当時の状況によりますが、未遂犯は成立する可能性があるでしょう。そうだとすれば、農園の管理人に怒鳴られるような行為であったことは否めません。
     しかし、わが国では、私人が犯人を逮捕することはできても、処罰することはできません。それは国家の役割です。したがって、処罰の意味で、私人がお金を徴収することはできません。
     ただし、民事上、契約違反や不法行為が成立した場合には、被害者は損害賠償を請求することができます。その額は、違約金としてあらかじめ決めておくこともできるし、実際に発生した損害額(商品や賃料の相当額であることが多いでしょう)を請求することできます。たとえば、貸しガレージに掲示してある、「無断駐車は罰金を申し受けます」との注意書きなどがそうです。
     そこで、その意味の「罰金」ならば、農園の管理人には請求の理由があることになります。金額を掲示していなくても、商品の代金相当額を請求することができるのです。

2014年04月07日

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