お店のミスで表示価格が間違っていても、差額を払わなければならない?

Legalus編集部さん 2015年04月24日

 先日ペットショップにて猫を見に行き、買う手続をしました。

 その猫は前日にペットショップにやってきたばかりで環境に慣れておらず、体調面でもう少し様子を見たいとのことで何日かペットショップで過ごしてから引き渡しになるとのでした。

 その場では生体価格、保険、ローンなどの金銭面の説明を受け、頭金の支払い、連絡先を書くなどしましたが、ローンを組むのは後日猫を引き渡す時でいいとのことでその日はそれで帰りました。

 ところがその後、ペットショップから電話があり、お店側のミスで生体価格の表示が違っており、頭金の額も変わってくるので差額を払ってほしいと言われました。

 生体価格の差額は約6万、保険などの値段も変わるので全て合わせると8万近い差額がありました。

 私は当初の価格で契約したつもりだったので、店のミスの差額は払いたくないのですが、お店側も値下げ等はできないので払ってほしいと話は平行線です。この場合、私は差額を払わなければいけないのでしょうか?

 頭金は支払済ですがローンはまだ組んではいません。領収書、およその見積書も貰いましたが何の領収書なのかと名前の記載なし、見積書も正式なものではないため、期限なども書いてありません。

 その猫が気に入っているため、買わないという選択肢は今の所ありません。

 ご回答よろしくお願いします。



(20代:女性)

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Legalus編集部

     まず、あなたとお店の間で、この猫についての売買契約が成立しているかどうかを検討してみましょう。というのも、契約が成立していれば、原則として、成立した内容に従って契約が履行されなければならないからです。



     あなたが帰宅するまでに、あなたとお店との間では、生体価格、保険、ローンなどの金銭面の説明を受けたこと、この説明を受けて頭金を支払ったこと、連絡先を教えたこと、領収書を受け取ったこと、およその見積書を受け取ったことがなされています。

     売買契約は、目的物を特定して売買代金を定め、それに売主と買主とが合意することによって成立します(民法555条)。ですから厳密にいえば、お店がその猫について生体価格を告げ、あなたがその猫をその価格で買うことを了承したことによって成立しています。ただ、これでは「売ります」「買います」だけで、契約が成立したかどうかについて後日争いとなることもあり得ます。この点、あなたの場合には、「頭金」が支払われており、その領主書もあります。「頭金」は、売買代金を分割で支払う場合に、その一部に充当するものです。頭金の支払は、分割金の一部支払いですから、既に契約が成立していることが前提となります。



     あなたが受け取った領収書には、何の領収書なのか名前の記載がないとうことですが、その金額などから考えて、また見積書と併せて考えると、この猫の代金の頭金であることは比較的容易に分かるのではないかと思います。とすれば、当初の生体価格をもって、契約が成立していることも明らかになります。

     次に、生体価格の表示ミスについて、どのように考えるかが問題となります。お店側は、生体価格に思い違いがあった、つまり錯誤があったことを理由に、「この猫をこの(誤った)生体価格で売ります」という意思表示を無効として(民法95条)、正しい生体価格での新たな売買契約の締結を望んでいます。



     この錯誤の主張が認められるかどうかもポイントです。この主張が認められるためには、「法律行為の要素に錯誤があること」、お店側に「重大な過失がないこと」が必要です(民法95条)。

     売買代金(生体価格)は、売買契約の重要な要素ですから、この点に思い違いがあることは、「法律行為の要素に錯誤があること」に該当するでしょう。しかし、お店側に「重大な過失がない」とは言い難いと思われます。お店は物を売ることで成り立っているのですから、何をいくらで売るのかは、お店にとって重大な事柄です。また、顧客も代金を契約締結の重要な要素であると考えて行動しているでしょう。そこで、店側としては値付けについては注意を払う必要があり、それを誤るということは、少し注意をすれば間違うことのなかったことを、その注意をせずに間違ったことになり、「重大な過失」があるということになると考えられます。



     ただ、「重大な過失がないこと」を要求するのは、相手方(ここではあなたです)保護のためです。したがって、一般人から見て、値付けが誤っていることが明らかな場合には、相手方を保護する理由はなく、契約は無効となります。

     以上からすれば、契約が当初の生体価格で成立し、お店の錯誤主張も認められないとすれば、差額を精算する必要はなく、お店に対して、猫を引き渡すことを要求することができます。

2015年04月24日

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