遺族年金の男女格差条項、判断を最高裁へ
[投稿日] 2015年07月01日 [最終更新日] 2016年10月28日
年金を得意としている弁護士
氏家 悠 弁護士 神奈川県
弁護士法人エース横浜事務所戎 卓一 弁護士 兵庫県
戎みなとまち法律事務所遺族補償年金の受給要件として、妻には年齢を問わないのに、夫は55歳以上と制限した地方公務員災害補償法の規定が、法の下の平等を定めた憲法に違反するかが争われた訴訟で、原告の男性が、男女差の規定を合憲と判断した大阪高裁判決を不服として最高裁に上告しました。今回はこの問題についてとりあげたいと思います。
当時会社員だった男性が51歳の時に当時公務員だった妻が自殺し、その自殺は公務上の災害と認定されました。そこで男性は、地方公務員災害補償基金に地方公務員災害補償法(以下「地公災法」といいます。)31条に基づいて遺族補償年金を申請しました。
ところが、地公災法では、遺族補償年金を受けることができる遺族を職員の死亡当時にその収入によって生計を維持していた配偶者、子、父母、孫、祖父母、及び兄弟姉妹と定めていて(32条1項)、さらに、但し書きにおいて「夫、父母、祖父母」については60歳以上(当分の間55歳以上)であること、を要件としています。当時51歳だった男性は、要件を満たさないとして遺族補償年金は支給されませんでした。男性は、夫にのみ年齢要件を課すこの制度は不合理な差別にあたり、憲法14条に反するとして、不支給の取り消しを求めて訴えを提起しました。
大阪地裁は、地公災法の立法当時は、女性が男性と同様に就業することが難しく、一般的な家庭モデルが専業主婦世帯であったため、この区別は一定の合理的があったといえるけれども、共働き世代が一般的な家庭モデルとなっている最近では配偶者の性別によって受給できるかどうかを分けるような差別的扱いは合理的でないとして、憲法14条1項に違反するとしました(大阪地判平成25年11月25日)。
対して、大阪高裁は、地公災法の目的は、公務員の死亡によって一人で生計を維持することが難しい遺族の生活の保護が目的であるとした上で、非正規雇用の割合が男性の3倍近くであること、賃金額が男性の6割以下となっており、依然女性を取り巻く社会情勢については厳しい状況にあり、妻を亡くした夫よりも、夫を亡くした妻のほうが生活が苦しくなると認定しています。そして、そのような状況の下では、夫に年齢要件を設けることは合理的であるとして、憲法14条1項には違反しないとしています(大阪高判平成27年6月19日)。
全く異なる結論が出た地裁と高裁。女性を取り巻く社会情勢の解釈の違いも結論が違う一つの理由になっていますが、皆様はどちらの意見に賛成しますか?最高裁の結論が注目されるところです。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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