繰り返す台風と責任判断のハードル

User image 1 goikennsamazamaさん 2018年10月06日 07時56分

台風被害の法的責任については、いくつもの質問と丁寧な回答がなされてるところです。個別の法律問題ですから、状況によって責任の有無は異なるものであるし、責任があるとは言ってもその程度も様々であることはよく理解できるところです。
一方で、こうして直撃台風が続いており、21号は大阪などを中心に大きな被害が生じたところです。そのときに個別事情をもとに責任の有無を判断するハードルの高さがあるとして、すぐに続いて襲来した24号のときの判断ハードルは同じでいいのか、今度の25号ではどうか、ということが気になるところです。
つまり、21号であのように看板が飛んだり自転車置場が設備ごと飛んでいるニュース映像を見る機会があったのに、24号の際にも漫然と21号以前の準備であったとか念入りな点検をしなかったというようなことで、21号では「まあしょうがない」と言われたケースでも、24号では「あなた少し迂闊じゃない?」と言えることがあるのではないかとも思えるのです。ましてや、25号ではもっとハードルが上がるのではと。
もし、上記のようにハードルが上がることがあるとして、それは人の記憶が薄れることによってまた低いハードルに戻っていくのか高いままなのか、戻ることがあるとしてそれは個人の庭木が飛んだのと事業者の営業看板が飛んだのとでは、戻り方に程度の違いがあるのか。もちろん、こうしたこともその時の個別事情によるということなのかもしれませんが、ご意見をお願いしたいと思います。

ハードルの判断はなかなか難しいところです。
一般論として、一度大規模台風が襲来した後は具体的被害の予見可能性や回避可能性がやや高まる事は否定できません。
ただ、非常に強大な自然災害である以上回避が容易でないこと、短期間で現実的にどこまで対策ができるのか、の点を考慮する必要があります。
仮に、責任を肯定・加重する方向で考えるのであれば、全国民に、「風速40~50メートル以上の台風に耐えられる工作物を設置する義務」ないし「非常に強い台風接近時に工作物を撤去する義務」を課すに等しい結果になる可能性がありますが、そこまでの法的義務ないし責任を肯定できるのか、という問題があります(下記福岡高判では、屋根瓦を釘や留め金で固定べきであったという趣旨の言及がなされていますが)。

過去の裁判例に関し、福岡高判S55.7.31では、最大風速約30メートル程、事故現場の風速17~18メートルで屋根瓦が飛んだ事案で、建物所有者の責任を3分の1としています。
これに対し、風速40~50メートルの台風の場合に事実上対策困難として責任を否定・軽減する方向でとらえるか、それとも現代においては台風の進路や予測も40年前とは大きく進化している点を重視して責任を加重する方向でとらえるか、なかなか難しいところです。
地震のケースですが、首都圏では震度6強の地震も予見可能であるから、震度6強に耐えうる建物設備が必要として、100%責任を認めた裁判例もあるため(東京地判H25.2.12。ただし、実際は震度5強の地域の事案です)、現代において裁判所の判断が40年前と変わる可能性も否定できません。
そこは、個々の弁護士が個人的見解によって判断できるものではないため、どなたかが訴訟提起して裁判所の判決を出して頂かないとはっきりとは分からない側面があります。

庭木と営業看板に関しては、あくまで私見ですが、前者は植物ですので倒壊防止のために台風接近時の伐採義務まで肯定できるのかという問題があるのに対し(恐縮ですが、伐採以外の対応策がすぐには思い浮かびません)、営業看板については事業者自身が設置したものでありある程度管理可能である点に違いがあるのではないかと思います(実際に訴訟になった場合に、裁判所が同様の判断をとるかは、明確には分かりません)。

現行法の解釈だけでは限界があり、大規模自然災害により生じた損害補償のための立法政策や、保険制度の充実等の方法も考えられますが、増税や保険料上昇等、コスト増大の可能性がある点に留意する必要があります。

2018年10月06日 09時43分
お礼メッセージ

小川先生
ご回答ありがとうございます。
同じ台風での被害であっても、個別事情によっても、また加害・被害両当事者の個性や立場などによっても、判断は個別になることとは思いますが、予見可能性・結果回避可能性という点では、極端にいえば「昨日の台風では隣のマンションの自転車置場が飛んだ。今日も同じ規模の台風が襲来する、我がマンションでも同じメーカーの同じ機種の自転車置場を同じ業者が同じ日に設置したけれど、まあうちだけはそんなことはない」と考えていたとすれば、やはり安易と言われそうに思います。
ところで、損害保険会社は賠償責任保険で24号でも不可抗力的主張をしているようです。もう少し丁寧な対応が必要ではなかろうかという気もしています。
いずれにしろ、大変勉強になりました。ありがとうございました。

投稿時の情報です。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。

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