境界線

境界紛争はなぜ起こる?解決方法と予防策を専門家が解説
土地を所有している場合、境界紛争に巻き込まれることがあります。境界紛争とは、隣地との境界線がどこかと言うことに関するトラブルのことですが、そもそも境界紛争はどうして起こるのでしょうか?境界紛争が起こると、隣人との関係が悪くなるだけではなく、相続の場面などでも問題が大きくなるので、なるべく発生しないようにしなければなりません。もし紛争が起こってしまったら、早期に解決する必要があります。
そこで今回は、土地の境界紛争とその解決方法、未然に防ぐ方法について解説します。
境界紛争とは土地と土地の境界線に関する紛争のことですが、そもそも境界とは何を意味するのでしょうか?境界紛争と言われても、土地の境界は初めから決まっているのではないかと考える人も多いでしょう。そこで、以下ではまず土地の境界とは何かについてご説明します。
土地の境界には2種類の意味があります。1つは、土地の登記がなされた際に決定された公的な土地の境界線のことです。この公的な境界のことを筆界とも言います。筆界は所有者同士が勝手に決めることはできません。また、土地を売却する場合などには、筆界が基準になります。土地の境界紛争が起こる場合には、この公的な境界線である筆界が問題になっていることが普通です。
境界と言うとき、もう1つの意味を持つケースがあります。それは、隣地の所有者同士が自主的に所有権の範囲を定めた境界線です。この境界のことを所有権界と言います。
所有権界については、隣地の所有者同士が話し合って自由に定めることができます。ただし所有権界を土地の購入者などの第三者に対して主張することはできません。
土地の境界(筆界)についての紛争である境界紛争は、どうして起こるのでしょうか?
登記された時点で当初から決まっているものであれば、争いになるはずがないとも思えます。
確かに、土地の境界自身は当初から決まっているものであり、隣地の所有者などが勝手に決めることができない線です。
しかし、実際の土地上において、どこがその境界線なのかということは、一見して明らかにならないことがあります。
たとえば、土地の境界上に何もおかれていない場合には、どこが境界線になっているのかわからないことがあります。
また、ブロック塀などが置いてある場合でも、本当にそのブロック塀の場所が土地の境界であるとは限りません。
隣地の所有者同士がブロック塀による境界線に納得している場合には問題になりませんが、所有者のどちらかが異なる主張をし始めると、隣地の所有者との間で境界紛争が起こってしまうのです。
たとえば、隣地との間にブロック塀が置いてあっても、一方の所有者が実際の境界線はもっと隣地寄りであると言い出したら、あるいはブロック塀の中心線ではなく、ブロックの端が境界線だと主張しだしたら、隣地の所有者が納得せず、両者の間で境界紛争が起こってしまいます。
いったん境界紛争が起こってしまったら、どのようにして解決することができるのでしょうか?
土地の境界紛争が起こった場合、まずは隣地の所有者との間で話し合いをして解決する方法があります。
ただ、この場合には、素人判断で勝手に土地の境界を決めてしまうわけにはいきません。
土地家屋調査士や測量士に依頼して、土地の測量などをしてもらい、どこが正式な境界(筆界)なのかを確定する必要があります。
そうして土地の境界が確認できたら、隣地の所有者同士が土地境界確認書を作成します。
隣地の所有者との話し合いの手続きを弁護士などに依頼することも可能です。
しかし、争いが激しい場合などには、話し合いでは境界紛争を解決できないケースもあります。
このようなケースでは、筆界特定制度を利用することができます。筆界特定制度とは、土地の境界に争いがある場合に、土地所有者の申請によって、筆界特定登記官が筆界の位置を特定してくれる制度です。法務局に申請をすれば手続きができます。
筆界特定制度を利用すると、筆界特定登記官は、土地家屋調査士などに土地の測量依頼をします。そして、その土地についての測量図や公図などの関連する資料を集めて境界がどこであるかを検討します。このとき、筆界特定登記官は、土地について詳しい専門の筆界調査委員の意見も聞きます。そして、隣地の所有者らの意見も聞いて、最終的に土地の筆界についての判断をします。ここで、境界紛争を起こしている当事者双方が納得すれば境界紛争は解決します。
筆界特定制度による決定内容には、不服申立ができます。そうすると、この手続きによって筆界は特定されません。筆界特定制度を利用しても境界紛争が解決できない場合には、境界確定訴訟を行う必要があります。
境界確定訴訟とは、裁判所で行う訴訟手続きの1種で、当事者が裁判所に申立をして土地の境界を決定してもらいます。
境界確定訴訟では、土地の境界に関する資料を提出したり、自分の境界に関する主張と立証をします。ただ、裁判所は当事者の意見に拘束されないので、自由に境界を決定することができます。
裁判所で土地の境界についての判断(判決)があると、それは終局的な決定になりますので、土地の境界紛争は解決します。
土地の境界紛争がいったん生じてしまうと、それを解決するには大変な手間と時間、費用がかかります。
話し合いで上手に解決できれば良いですが、筆界特定制度を利用したり裁判所の訴訟手続きを利用することになると、非常に大きな労力をつぎこまなければなりません。
特に境界確定訴訟では、たくさんの資料集めが必要になる上、土地家屋調査士に現地測量をしてもらったり、現地の写真を撮ったり自分で図面を作ったりして、作業の量も膨大になります。また、境界確定訴訟には時間がかかることも多く、1年以上かかるケースも普通にあります。
このような境界紛争を未然に防ぐためには、紛争が起こる前に隣地との境界線を確定しておく方法が効果的です。
そのためには、土地の測量を行う必要があります。測量の際には、隣地の所有者が双方とも立ち会う必要があるので、隣地の所有者に連絡を入れて、土地境界確定のための測量をしたいと伝えます。
隣地の所有者の了承が得られたら、土地家屋調査士に依頼をして、土地の測量を行い、土地の境界を調査してもらいます。このとき境界が見つかったら、境界標をおいて境界線を明確にすることが多いです。
境界標とは、土地上におく標識のようなもので、境界の曲がり角の部分にポイント的に配置します。境界標をつなぐと、自動的に境界がわかるようになるものです。
そして、隣地の所有者同士が双方納得して土地の境界を明確にできたら、その境界線に関して土地境界確認書(筆界確認書)を作成します。
土地境界確認書とは、隣地の所有者同士が土地の境界線について、合意したことを証明する書面です。土地境界確認書には、そのとき測量した測量図をつけます。
また、土地境界確認書には、隣地の所有者双方が署名捺印する必要があります。
このとき、認印でも有効にはなりますが、後日のトラブルを防止するためには、双方が実印を押して印鑑登録証明書を添付しておく方が安心です。
このように、土地測量を行って土地境界確認証を作成する方法によって、その土地については隣地の所有者同士が測量図通りの内容で筆界について合意ができていることが明らかになり、後日境界紛争が起こることを予防することができます。
土地境界確認書があると、土地についての相続が起こった場合などにも相続トラブルが起こりにくく、安心です。
今回は、不動産トラブルの中でも境界紛争について解説しました。土地の境界紛争とは、隣地との公的な境界である筆界について、隣地の所有者同士で争いがあるケースのことです。境界紛争が起こると、隣地の所有者との関係が悪化しますし、土地の売却や相続の際などにも支障が発生します。
土地の境界紛争が起こったら、筆界特定制度や境界確定訴訟手続きを利用して解決することができます。
未然に防ぐためには、境界紛争が起こる前に土地境界確認書を作成しておくと良いでしょう。
今回の記事を参考にして、土地の境界紛争が起こらないように賢く対処しましょう。
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