新築・リフォーム

発注する前に読んでおきたい新築・リフォームの法律問題
長い一生の間には、家を新築したりリフォーム・増築などをする機会があります。
このような場合には、建築業者との間で請負契約を締結することになりますが、契約締結の際にはどのようなことに注意すべきなのでしょうか?また途中で工事をキャンセルしたくなった場合、自由にキャンセルができるのかも問題になります。
さらに、施工ミスがあったり欠陥住宅だった場合にはどのような対処をとることができるのかも知っておく必要があります。
そこで今回は、家を新築、リフォームする際の法律問題について解説します。
家を新築・増改築したり、リフォームする場合、建築業者との間で工事の契約をします。この場合、建築業者に住宅に関する工事をしてもらい、できあがった家の引き渡しを受けるという内容の契約になりますので、法律的には請負契約と言う取り扱いになります。
業者との請負契約締結時には、いくつか注意すべき点があります。
まずは、工事の仕様がきちんと特定できているかが問題になります。
工事内容にあいまいな部分があると、後になって「追加工事が必要になった」などと言われてどんどん費用を請求されることがあります。
このようなことを防止するためには、当初から工事の内容をしっかり特定しておく必要があります。
また、工事代金の支払条件についてもチェックが必要です。
請負代金の支払い方法については、契約時にいくら、完成した住宅の引き渡し時に残金を支払うという形にすることが普通です。
このとき、当初にお金を支払いすぎていると、後からのキャンセルが難しくなることがあります。業者が途中で工事を放棄したり逃げてしまった場合などにも、当初に支払ったお金が回収できなくなるリスクがあります。
そこで、請負代金の支払い条件は、なるべく当初支払い額を少なくして段階的に支払うように設定しましょう。たとえば、契約時に10%、着工時に20%、上棟時に30%、引渡時に40%などの設定にしておくと良いでしょう。
間違っても、当初契約時に代金を一括払いしてはいけません。そのようなことを要求してくる業者は悪徳業者である可能性が高いので、注意しましょう。
家の新築やリフォーム工事を依頼しても、その後気が変わって工事をキャンセルしたい場合があります。このような場合、キャンセルは自由にできるのでしょうか?
請負契約を解除できる場合については、民法という法律によって定められています。
注文者からの解除が認められる場合は、以下の2パターンです。
まずは、契約の目的物に瑕疵(傷や問題)があって、契約の目的を達成することができない場合です。工事を進めてもらったけれども住むに堪えない住宅である場合などには、契約の目的を達成できないので解除できると考えて良いでしょう。
また、注文者は、工事の完成までの間には、損害賠償さえすればいつでも解除できます。
契約後、工事に着手する前であっても解除は可能です。
ただし、この場合、請負業者に発生する損害賠償をしなければならないので注意が必要です。
たとえば、工事のために業者が材料などを購入して、すでに費用を支出している場合などには、その分を損害として賠償しなければなりません。
家の新築やリフォーム、増改築工事などを業者に頼んで工事が完成してみても、完成した家に施工ミスがあったり欠陥住宅であるケースがあります。
このような場合には、どう対処すれば良いのかを、以下で説明します。
まず、完成した物件に施工ミスがあったり欠陥住宅であった場合、注文者は請負業者に対して、瑕疵の修補を請求することができます(民法634条)。つまり、施工ミスがあった部分や欠陥部分を修復してもらうことを要求できるのです。この権利のことを、瑕疵修補請求権と言います。
ただし、どのようなケースでも修補を要求できるわけではありません。施工ミスなどが軽微であって、その修補のために多額の費用がかかってしまうようなケースでは、瑕疵修補請求権は認められなくなります。
また、発注者が施工業者に対して瑕疵修補請求をする場合、もしまだ支払っていない代金があれば、修補が終わるまで残代金の支払を拒絶することができます。瑕疵修補請求権と請負代金の請求権は、同時履行の関係にあるからです。
つまり、注文者による瑕疵修補請求と請負業者による代金支払い請求は、引き替え給付の関係になるということです。費用の支払いを拒絶することによって、業者に対して修補を促すプレッシャーをかけることができます。
この意味でも、工事代金の支払い条件について、段階的に支払う内容にしておくことが重要になります。契約当初に全額支払っていたら、代金支払いを拒絶することができなくなるからです。
さらに、この場合、修補期間中に他の場所に住むなどの必要が発生して家賃支払の必要がある場合などには、損害賠償請求として請負業者に支払を求めることができます。
このように、施工ミスや欠陥住宅の場合、まずはその施工業者に対して問題のある部分の修復を求めることができます。
施工ミスや欠陥住宅であったケースでは、もう1つ対処方法があります。それは、瑕疵修補の代わりに請負業者に対して損害賠償請求をする方法です。
たとえば、瑕疵部分の修復自体は他の業者に依頼することとして、その工事のためにかかった費用をもともとの請負業者に対して損害賠償請求するなどの方法があります。
修復に代えて損害賠償請求をする場合には、瑕疵が軽微であるかどうかは問題になりません。小さな施工ミスがある場合にも、そのミスを修復するためにかかる費用を請負業者に支払ってもらうことができます。
このように、施工ミスや欠陥住宅であった場合には修補や損害賠償請求ができますが、これらの権利を行使出来る期間は限られています。
具体的な年数は、その建物の構造によって年数が異なります。木造住宅の場合には、完成した家の引き渡し後5年となりますし、鉄筋コンクリート造の住宅の場合には、引き渡し後10年間となっています。
しかも、実際にはこの権利主張できる期間は、請負契約内の特約により、短縮されている場合がよくあります。
そこで、施工ミスや欠陥住宅の問題があった場合には、早期に対処する必要があります。
なお、住宅の構造の中でも、基本構造部分(柱や梁など)や屋根部分などについては、権利主張期間を短縮する内容の特約があっても影響を受けず、10年の主張期間が認められます。
さらに、欠陥が施工業者ではなく、設計士の責任であるケースがあります。
この場合には、請負業者ではなく設計士の方に修補請求や損害賠償請求などの請求をしていくことになるので、注意しましょう。
今回は、新築や増改築、リフォームなどの工事の契約をする際の注意点について解説しました。
新築やリフォームをする際には請負契約を締結します。その際工事の内容にあいまいな点がないかどうかチェックしましょう。また、工事を途中でキャンセルすると、損害賠償の必要が発生することがあります。もし施工ミスがあった場合などには、請負業者に対して瑕疵の修補を要求したり、損害賠償請求をすることができます。
今回の記事を参考にして、新築やリフォームの際に不利益を被らないよう賢く立ち回りましょう。
参考コンテンツ:
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