不動産賃貸

誰もが一度は経験する?不動産賃貸について知っておこう
誰でも一生に1度くらいは賃貸住宅を借りることがあるものです。たとえば学生が下宿する場合にも賃貸アパートを借りますし、新婚の場合でもマイホームを買うまでは賃貸住宅を借ります。
不動産を所有している場合には、借りるだけではなく貸す機会もあります。しかし不動産賃貸をする場合には、トラブルもつきまとうものです。そこで、不動産賃貸について正しい知識を持っておくことが大切です。
今回は、誰もが1度は経験する不動産賃貸の基礎知識を解説します。
不動産賃貸借をする場合には、不動産賃貸借契約書を作ります。
また、不動産仲介業者から重要事項説明書という書類を渡されることが普通です。
この2つの書類は、不動産賃貸借をする場合にとても重要な書類なので、内容を理解しておく必要があります。
そこで、賃貸借契約書と重要事項説明書は、それぞれどのような書類で、どのような点をチェックすればよいのかを説明します。
重要事項説明書とは、不動産を借りる場合に不動産仲介業者から受け取る書類で、対象不動産についての重要事項の説明が記載してあるものです。
具体的には、対象物件の特定や法令上の制限の有無、道路の制限や耐震診断の有無、契約条件などが記載されています。
重要事項説明書をチェックする場合には、物件に抵当権などの権利設定がないかどうか、用地用と等について法令の制限がないかどうか、飲料水などのインフラの整備がきちんとされているかどうか、契約条件(解除出来る場合など)などについてしっかりチェックする必要があります。
賃貸借契約書には、賃貸人と賃借人との間の権利関係が記載されています。
これは、賃貸人と賃借人がトラブルになった場合などに解決の指針となる大変重要な書類なので、内容を理解しておく必要性が高いです。
賃貸借契約書をチェックする際には、まずは物件の特定がされているかをチェックします。きちんと正しく対象物件が記載されているかを確認しましょう。また、毎月の家賃や共益費などの契約条件、解除や解約ができる場合とその方法についてもしっかり抑えておく必要があります。さらに、契約期間や契約の更新方法などをチェックしましょう。
敷金や礼金、更新料がいつ、いくら発生するのかについてもしっかり確認しておく必要があります。このことを把握しておかないと、将来貸主から思わぬ金額を請求されてトラブルになるおそれもあるからです。
不動産の賃貸借契約をする場合には、月々貸主に対して家賃や共益費などを支払う必要があります。
ところが、不動産賃貸では家賃以外にもかかる費用があります。
それは、敷金や礼金、保証金や更新料などです。
敷金、礼金、保証金、更新料はそれぞれどのような費用で、どのような違いがあるのでしょうか?
まず、敷金とは不動産契約の当初に賃借人が賃貸人に対して支払うお金で、家賃の滞納などの場合に備えて担保にする目的を持つものです。
敷金の金額は、数十万円程度になることが多いです。
敷金は、賃貸契約終了時に返還されることが基本ですが、そのときに滞納家賃があったり、原状回復のために必要がある場合には、敷引きとして一定金額が差し引かれることがあります。
保証金も、敷金と同じ意味で用いられることが多いです。何かあった場合のための保証のお金なので保証金と言います。
礼金は、賃借人が賃貸人に対して、不動産を貸してもらうお礼として支払うお金です。これは敷金のように担保的な目的を持つものではありません。お礼として払いきったらそれで終わってしまいます。
よって、礼金は賃貸借契約の終了時にも返還されません。
更新料は、不動産賃貸借の期間を更新するために支払う費用です。よって、これも敷金のような担保的な性質を持つものではなく、基本的には返ってきません。
しかし、判例では高額な更新料の取り決めが消費者契約法違反出向こうと判断された事例などもあります。
更新料がかかる物件の場合、更新の度に費用がかかって負担が大きくなるので、高額過ぎる更新料が定められている物件などは、借りない方が良いでしょう。
不動産賃貸借契約をする場合には、連帯保証人をつけるケースがあります。連帯保証人を用意出来なくても、保証会社に保証してもらうこともあります。
このような賃貸借契約の保証とは具体的にどのようなものなのでしょうか?
保証人は、賃借人が契約上の義務を果たさない場合に、代わりにその義務を果たさないといけない人のことです。
保証人には単なる保証人と連帯保証人がありますが、不動産賃貸借の場合には、通常連帯保証人の形にします。連帯保証人は主債務者(賃借者)本人と同じだけの大きな責任を負います。
たとえば、賃借人が家賃を支払わない場合などには、連帯保証人が代わりに支払をしないといけません。
保証会社も基本的に同じことです。賃借人が支払をしない場合には、保証会社が代わりに支払をします。保証会社が家賃を支払った場合、支払った額について、その後賃借人に対して請求をしてきます。
よって、保証会社をつけた場合に家賃を滞納すると、後日保証会社から滞納家賃の支払をまとめて請求されることになるので、注意が必要です。
不動産賃貸借をする場合には、家主と直接やり取りすることもありますし、マンションなどの場合には、管理会社が間に入ることもあります。
家主や管理会社は不動産賃貸借において、どのようなことをしてくれるのでしょうか?
賃貸借契約においては、家主は賃貸物件の状態を整えて利用できる状態に保つ義務があります。
そこで、たとえば電気がつかなくなっていたり、水道が止まってしまったりして部屋が使えない状態になっていたら、その修補をしなければなりません。
屋根が傷んで雨漏りなどが起こっている場合も同じです。
このように、賃貸物件自体に問題があって利用できない状態になっている場合には、貸主に言って修復してもらうことができます。
マンションの場合には貸主との間に管理会社が入っているので、このような依頼を管理会社にすることになります。
逆に言うと、貸主や管理会社は、物件の維持管理以上のことはしてくれません。たとえばより快適に住むために家具や家電を整えたり、電球をLEDに替えてほしいなどと言っても聞いてくれるとは限らないのです。
賃借人がより快適に暮らすために必要なものは、賃借人自身が揃える必要があります。
不動産賃貸借でよくあるトラブルは、賃貸借契約の解約の場面です。
賃貸人と賃借人が話し合って合意で解約できる場合には問題は起こりませんが、賃貸人(貸主)から一方的に解除される場合には、賃借人が住む家を失うことになるので、トラブルになりがちです。
貸主による賃貸借契約解除が有効になるかどうかは、解除の理由によって異なります。
そこで、以下では家主の立ち退き請求への対処方法について、理由別に解説します。
貸主が立ち退きを求めてくる場合、貸主自体がその物件を利用したいという理由があります。
この場合、当然には解除は認められません。賃借人は借地借家法という法律によって保護されているので、賃貸借契約を解除するには、正当事由が必要になります。
正当事由と言う場合、貸主が一方的に物件を利用したいというだけでは認められません。これに足して、物件が古くてそのままでは利用継続が難しいなど立ち退きを必要とする事情が要求されます。
よって、貸主が「今後は自分で使いたいから」というだけの理由で立ち退き請求をしてきた場合には応じる必要がありません。
貸主が、「物件の建て替えをしたい」と言ってきた場合には注意が必要です。この場合、本当にその物件が古くて倒壊の恐れがあり、立替の必要性が高ければ正当事由が認められて解除が認められる可能性があります。
逆に、そこまでの必要性がなければ解除は認められません。そこで、本当に物件建て替えの必要性があるかどうかをしっかり確認する必要があります。
賃借人が家賃を長期滞納したので貸主が賃貸借契約を解除してくることもあります。この場合には、1~2ヶ月程度の滞納期間なら解除は難しいですが、滞納期間が半年にもなれば解除が認められてしまうので、注意しましょう。
不動産賃貸借契約を終了する場合にも知っておきたいポイントがあります。
賃貸借契約を終了する場合には、退去する必要がありますが、このときにはいろいろな問題が発生するからです。
敷金をきちんと返してもらえるか
まず、退去する場合には敷金が返ってきますが、きちんと返してもらえるかが問題になります。
不動産賃貸借契約をする場合には、通常敷金の設定をして契約当初にまとまった金額の敷金を入れているものです。よって、賃貸借契約の解約をして退去する際には、家賃などの滞納がない限り、敷金は基本的に戻ってきます。
このとき、敷引きという制度があります。敷引きとは、敷金から一定金額を差し引くという制度ですが、実際に敷金から差し引くことができるのは、不動産の原状回復に必要な限度に限られます。
つまり、賃貸物件退去の際に、賃借人が特に物件を傷めていたようなケースでは、それを原状に戻すための費用が敷金から差し引かれるのです。
ただし、もちろん年月が経つことによって経年劣化しますので、その分まで敷金から差し引かれることはありません。
敷引きの金額があまりに大きい場合や敷金を返還してもらえない場合には、敷金返還請求をすることができますし、裁判で争うことも可能です。
退去の立ち会いの際のチェックポイント
退去の際には、立ち会いの際のチェック手続きも重要です。
不動産賃貸借を終了する場合には、管理会社や貸主などが不動産の状態をチェックしに来ます。このとき、賃借人も立ち会いをすることが普通です。
このとき、管理会社にもよりますが、チェックシートを用意していて不動産の状態を順番に確認していくことが多いです。
チェックの際には、業者について、自分の目でも確かめるようにしましょう。
また、管理会社などは、チェックシートの記載をもとにして修繕費用を計算して、賃借人に提示してくることがあります。そうして、賃借人に対してサインを求めます。
これにサインすると、賃借人に返還する敷金からその金額が差し引かれることになります。
そこで、チェックシートの内容や修繕費用については、しっかり確認する必要があります。
納得できない記載があれば、きちんと説明を受けた上で、さらにおかしな点があれば訂正を求めましょう。
また、先にも説明したとおり、経年劣化についての修復は、賃借人に負担の義務がありません。そのような性質のものまで修繕費に入れている場合には、その点を指摘して訂正してもらいましょう。
たとえば、家具の重さによって床がへこんでいる場合や日照によって壁が色落ちしていたり、ドアが古くなって変色している場合、水廻りが汚れたりしている場合には、経年劣化として貸主の負担になります。このようなものまで修繕費用に入れられていたら、同意しないことです。
これに対して、たとえばタバコを室内で吸って壁が通常以上に傷んでいたり、子どもが暴れて壁が破れたりしているようなケースでは、その傷みの修繕については賃借人が負担することになることが普通です。
今回は、不動産賃貸借契約の基礎知識について解説しました。不動産賃貸借は、誰でも一生に1度は経験するものです。毎月の家賃支払い以外にも敷金や礼金、保証金や更新料などの名目でさまざまなお金がかかります。契約トラブルが起こらないためにも、賃貸借契約書や重要事項説明書の内容をきちんと把握しておきましょう。
退去の際にも、必要以上に原状回復費用を取られないようにチェックする必要性が高いです。
今回の記事を参考にして、賢く不動産賃貸借契約を利用しましょう。
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