弁護士コラム

外傷後遷延性意識障害(植物状態)とは何でしょうか。また,余命期間・症状固定時期・逸失利益をどのように考えるのでしょうか。

[投稿日] 2018年08月07日 [最終更新日] 2018年08月07日
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岡田 正樹 弁護士 むさしの森法律事務所

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1 遷延性意識障害(植物状態)とは何でしょうか。
遷延性意識障害(植物状態)とは,頭部外傷や脳出血で昏睡状態となり,死線をさまよったが開眼できるようにはなったものの,周囲との意思疎通を完全に喪失した患者の示す症候群を言います。 
大脳半球がびまん性に(=広範囲にまだらに)損傷しているものの,脳幹機能がほぼ正常に保たれていて心肺機能に大きな支障がなく,自発呼吸が可能であるため,栄養補給や褥瘡予防処置が適切に行われていれば,その後も生命維持は十分に可能であるとされています。

診断基準としては,以下の6項目を充たして,それが3ヶ月以上継続してほぼ固定している状態です。

①自力で移動ができない
②自力で食物を摂取することができない
③糞尿の失禁がある
④目で物を追えるが認識ができない
⑤簡単な命令に応じることもあるが,それ以上の意思疎通はできない
⑥声は出るものの意味のある発語ではない

なお,予後絶対不良と思われがちですが,その状態から脱却することも多くあり,絶対不良とは言い切れないばかりか,植物人間という表現は人権の点から見ても問題があると思います。


2 遷延性意識障害(植物状態)の余命期間は,どのように考えるのでしょうか。
遷延性意識障害(植物状態)の余命期間は,イコール介護期間となり,賠償額においては極めて重要な問題となります。
この点で,健常者と同じ余命期間を認めることができるのか,それとも生存期間が短縮されるのか,議論がありますが,裁判例の大勢は,平均余命,つまり健常者と同じ余命期間を認めるものが大部分です。

元々,問題点でありましたが,健常者と同じ余命期間を認めなかった判決(東京高裁平成6年5月30日)が大きな意味を持っています。
これは,33歳男子が後遺障害等級1級3号のいわゆる植物状態となった事案につき,統計資料等から口頭弁論終結時から約10年(事故から13年,症状固定から12年)の推定余命であるとされたものです。
この東京高裁判決は上告しましたが却下されて確定しています。

しかし,この余命期間については,現在では主張としては余りされず,むしろ将来の介護費用について定期金を認めるべきかどうかという議論に変わってきております。


3 遷延性意識障害(植物状態)の症状固定時期は,どうなりますか。
遷延性意識障害(植物状態)の症状固定時期については,脳神経外科的な診断基準に当てはめるだけではなく,在宅での治療・看護・介護が可能となるために必要な治療であるならば,その治療終了時とすべきであると考えます。

遷延性意識障害(植物状態)の症状固定時期が,どうして問題となるかと言えば,症状固定時期を境として治療費の負担が被害者側になるかどうかが変わってくるからです。
また,現実的な問題として後遺障害慰謝料の金額は定額として判断されますが,症状固定前の入院慰謝料が入院期間が長期間となれば相当な金額となります。

そのために,賠償側としてはどうしても症状固定時期を早めに主張する傾向にあります。
6ヶ月は極端としても,賠償側としては,1年以上6項目を充たしている状態にあれば症状固定であると主張する傾向になると思われます。

現実問題としても,一旦遷延性意識障害(植物状態)に陥ると,そのままの状態で変化しない例が多く見られるとも言えます。
しかし,1での診断基準6項目は脳神経外科的なものです。

これには少なくとも2つの問題点があると言えます。

第1は,一旦,6項目を充たしたとしても時間の経過で,そのいずれかが外れる,つまり脱却する可能性があり得ることです。
その可能性を被害者側が求めている場合に,症状固定として加害者側あるいは裁判所が否定してもよいかという問題です。

第2は,診断基準6項目に該当して遷延性意識障害(植物状態)とされても生命維持のためあるいは在宅での治療・看護・介護が可能となるために必要な治療であるならば症状固定とすべきではありません。
さらに,
在宅介護の希望がありその可能性がある場合には,そのための「準備」というべき必要な治療期間であればそれを含めて症状固定時期というものを考えるべきです。


4 逸失利益から死亡と同様に生活費控除をすべきとする主張については,どう考えるべきですか。

賠償(保険会社・共済)側から生活費控除をすべきだと主張をすることもあり,それに沿った判決もあります。 
死亡の場合の逸失利益については,死者ですから生活費がかからないために生活費控除がなされます。
植物状態となった場合は,通常の生活とは異なり,その実態がなく,死亡の状態に近いために生活費を控除して逸失利益を考えるべきではないかという主張です。

しかし,介護の点を考えると,介護費用だけではまかないきれない費用負担があることも事実であり,通常の生活と同等かあるいはそれ以上の費用がかかるとも言えます。

このような生活費控除をすべきとする主張は,妥当ではありません。

なお,最近では,賠償(保険会社・共済)側からの控除の主張は,余りされなくなりつつあるようです。


5 将来の自宅での介護費用についてはどうでしょうか。
自宅介護では,近親者介護ではなくて多くは職業介護人によるという,そもそもの必要性が認められるのかが問題となります。
つまり,身体や家族の状態によれば自宅ではなく施設での介護を選択すべきだと判断されることがあります。
それは被害者の年齢・家庭環境・介護内容等を考慮して判断されます。

職業付添人の将来介護費用を決めるものとしては,以下の点があると思います。
①介護を受ける被害者の年齢
②日常生活における介護ないし介助の状況及びそのための環境,施設介護か自宅介護か。
③近親者付添人の介護が可能か。可能であれば,いつ頃までどのような内容の介護か。
④実際に,介護保険を利用したり,あるいは私費で職業付添人がついているか。ついているとして,どのような介護を行っているか。
将来的に,その介護内容が変化するか。変化するとしてどのように変化するか。
⑤職業付添人がついている場合には,現実にそのようなサービスに対して,どのくらいの自己負担をしているか。

しかし,金額を決めるのは職業付添人が民間業者であることから,経済の市場原理が関係します。
いわゆるヘルパーという職種の担い手の増加あるいは高齢社会による需要拡大から,今後の金額がどのように推移するのか,不透明であると言えます。

岡田 正樹 弁護士

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